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2017年2月18日(土)

空から部品や氷が… 航空機の落下物

小郷
「出張や旅行で使う、身近な航空機に意外な事実です。」

長さ80センチの部品。


 

こぶし大の、いくつもの氷の塊。
実はこれ、成田空港の周辺で発見された、飛んでいる航空機からの落下物です。
空からの思わぬ“落とし物”。
その対策に迫ります。
 

小郷
「空港周辺での落下物。
成田では、昭和53年の開港以来、分かっているだけで、合わせて158件に上っています。
これまでのところ、人への被害はありませんが、実態や対策についてはあまり知られていません。」

近田
「成田や羽田空港で、発着枠を増やす動きが加速する中、安全対策はどうなっているのか、取材しました。」

空から部品や氷が… 航空機の落下物

リポート:髙橋広行(NHK成田支局)

成田空港から南に20キロ以上離れた、千葉県山武市の海岸です。
落下物を減らすために国と成田空港会社は、世界的にも例がない独自の調査を行っています。

「はい、出ました。」




 

見ているのは、着陸しようとする旅客機が、海の上で車輪を出しているかどうかです。

航空機は着陸前に、機体に格納されている車輪をおろします。
この際の衝撃で、機体に付いた氷などが落ちる可能性があることから、成田空港では、風向きによって、陸地を避け海上で車輪を出すことを義務づけています。
毎年夏と冬、合わせて6,000機をチェックします。
航空機にとっては、車輪を早く出すと空気抵抗が大きくなり、余計に燃料を使います。
このため航空関係者の間では、評判の悪いルールですが、調査の甲斐もあって、ほぼ全ての便が順守しています。
それでも年2件程度、落下物が確認されています。

成田市荒海地区に住む、農家の糸川幸一さんです。
6年前のことでした。



 

農家 糸川幸一さん
「こっちで、ブスって音がした。
“なにか落っこちたかな”と、向こうへ回った。
この辺にスプリングが落ちていて。
上を見たら穴が空いていて、“これは飛行機の落下物だな”。」
 

その時、落下した部品です。
車輪についている金属製のバネで、重さは500グラム。
金属疲労が原因だったとみられています。

農家 糸川幸一さん
「当たりどころによっては、命にも関わるような危険があると思う。」

自宅周辺では、その後も部品や氷の落下がありました。
騒音については、長年我慢してきた糸川さんですが、この件で初めて移転を考えるようになりました。
同じ地区の人たちと、国や空港会社に対応を求めています。

農家 糸川幸一さん
「落下物は100%ゼロにすることはできないと思う。
でも、落下物被害は下に住んでいる人をいなくすれば、ゼロにすることはできる。
移転を希望している。」

落下物を防ぐために、成田で行われている、もう1つの調査があります。
今回、初めてカメラが入りました。

「44番スポット、ANA806に向かってください。」




 

指示を受けた調査員が近づくのは、到着したばかりの航空機です。
毎年1月に行われるこの調査では、胴体に氷がついていないかを確認しています。
実は、氷が落下するケースは部品の2倍近くにも上っています。

 

機体の腹の部分には、余計な水を捨てる穴や給水口などがあります。
ここから、こぼれ出た水が上空で氷となることが、まれにあるのです。
発見した氷は、どんな小さなものでも記録し、採取します。
氷は、実際に落下しても航空会社の特定が難しいため、この調査を通じて、注意を促し、整備や点検に役立ててもらう狙いがあります。
 

今年(2017年)の調査では、1,700機のうち37機で氷が見つかりました。
大半は小さなものでしたが、中には大きな塊も発見されました。
最新の科学技術が詰まった航空機。
その裏で、安全を守るための地道な調査が続けられています。

 

近田
「取材にあたりました、成田支局の高橋記者とお伝えします。
成田空港の事例でしたが、成田以外では、実際にどうなんでしょうか?」

高橋広行記者(NHK成田支局)
「国土交通省によると、過去10年間では、国内では明確な事例というのは成田空港でしか確認されていません。
増え続ける便数に対して、頻度としては減っていまして、平均すると『10万便に1回』という割合なんです。
一方、海外では、統計のあるイギリスやカナダで、年間30件前後も起きていまして、中には、人に当たって、けがをしたというケースもあります。
こうした懸念は、広がる可能性が出ているんです。
というのも、3年後に、羽田空港のルートが変わるからなんです。

これは今の、南風の時の羽田空港の飛行ルートです。

到着機は、騒音の影響を避けるために、東京湾の上空を通って、降りているんですが、東京オリンピック・パラリンピックがある2020年には、このように都心上空を縦断するルートを飛ぶことが、すでに決まっています。」

小郷
「2020年に向けて、航空機の便数は、さらに増えることが見込まれていて、心配になりますけれども、他に対策というのはあるのでしょうか?」

高橋記者
「国土交通省も対応を進めています。
羽田では、成田に習う形で、新たに氷塊調査に乗り出しています。
今週15日まで2週間行われた調査では、400機のうち、3機で小さな氷が見つかったということです。
成田では、いわゆる成田闘争の歴史もあって、他の空港と比べますと、住民の関心が高く、情報が丁寧に蓄積されています。
航空会社やメーカーをまたぐ形で、こうした情報の共有をいっそう進めるなど、対策を重ねる必要があるといえます。」

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