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2017年2月16日(木)

海の異変の救世主? “白化しないサンゴ”

阿部
「沖縄で育てられた『ある生き物』が、世界の海の危機を救うかもしれません。」

世界最大のサンゴ礁、オーストラリアのグレートバリアリーフ。

 

去年(2016年)、サンゴの死滅につながる大規模な「白化現象」が起きました。






サンゴの白化は、インド洋のモルディブ、太平洋のフィジーやニューカレドニアでも。
海水温の上昇が原因とみられています。

異変は、日本の沖縄でも…。
先月(1月)、環境省が衝撃的な調査結果を発表しました。



 

国内最大のサンゴ礁「石西礁湖」。
サンゴの実に90%以上が白化。
その大部分が死滅したというのです。
その沖縄で、これまでの常識を覆すサンゴが誕生しました。

高い海水温でも「白化しないサンゴ」です。




 

サンゴの養殖業 金城浩二さん
「ミラクルが起きた。」



 

「まさに希望のサンゴ。」

阿部
「海の生き物にすみかや産卵場所を提供するサンゴ礁は、いわば“命のゆりかご”です。
サンゴが無くなると、海の生き物のうち、4分の1の種類が生きていけなくなるといわれています。
そのサンゴ礁について、WWF=世界自然保護基金は『温暖化の影響で2050年までにすべて消失するおそれがある』と警告しています。」

和久田
「こうした中、沖縄で誕生した『白化しないサンゴ』。
サンゴの保全につながるのではと大きな関心が寄せられています。」

“白化現象”から半年 サンゴ礁の海は今

リポート:横山真也カメラマン(沖縄局)

沖縄県・石垣島沖。
私たちは去年(2016年)大規模な白化が確認された国内最大のサンゴ礁、「石西礁湖」に向かいました。

水深はおよそ5メートル。
真っ白に白化していたサンゴ礁は、一見、色を取り戻したかのように見えます。

しかし、指で触ってみると、表面を覆っていたのは、「海藻」でした。
死滅したサンゴに付着していたのです。
周囲を見渡しても、生き物の姿はほとんど見当たりません。



かつての石西礁湖です。
色とりどりのサンゴに、沢山の魚たちが集う楽園でした。
今は命の輝きを失ったサンゴ礁。
どこまでも同じような光景が広がっていました。

原因と見られているのが、去年起きた世界的な海水温の上昇です。
夏の間、石垣島周辺の海では、30度を超える異常な高水温が、2か月近くに渡って続きました。
このとき、サンゴに何が起きたのか?

サンゴはイソギンチャクやクラゲの仲間。
生存に欠かせないのが、体内にいる植物プランクトン「褐虫藻(かっちゅうそう)」です。
サンゴは、この褐虫藻が光合成で作った栄養をもらって生きています。



しかし、海水温の上昇や強い太陽の光などのストレスを受けると、褐虫藻はサンゴの体内から抜け出てしまいます。
これが「白化現象」です。
この状態が続くと、サンゴは死に至ります。

人の手で育てられた“白化しないサンゴ”

多くが白化した沖縄の海で、不思議なサンゴがありました。
白く変色したサンゴの横で、元々の色をとどめています。
高い水温の中でも「白化しないサンゴ」です。
このサンゴ、実は沖縄の養殖場で育てられました。

サンゴ養殖の第一人者として知られる金城浩二さん。
20年近く前から海への移植事業に取り組んでいます。




白化しないサンゴ、もともとは沖縄の海に生息する「ウスエダミドリイシ」というごく普通の種類です。
金城さんは年月をかけて、厳しい環境に耐えられるよう育て上げました。




きっかけは、7年前の産卵観察会です。
子どもたちに、より近くで産卵を見てもらおうと、金城さんは水槽の深い場所にあったサンゴを浅い場所へ移動させました。




太陽光の影響で多くが白化して死んでしまいましたが、一部、回復したものがありました。





生き残った個体を選抜して増やし、さらに浅いところへ移動させることで、少しずつ環境に適応させていきました。
作業を繰り返すこと4年。
こうして、強い太陽光がそそぐ水面近くでも白化しないサンゴを育てることに成功したのです。


金城さんは試しに、このサンゴを海に移植。
すると、高い海水温にも耐えられることが分かりました。
世界でも類をみない、「白化しないサンゴ」の誕生でした。

サンゴの養殖業 金城浩二さん
「ミラクルが起きた。
サンゴの養殖を始めて18年になるけど、はじめて。
奇跡的な感じ。」

“白化しないサンゴ” メカニズムの解明は…

「白化しないサンゴのメカニズムを解明したい」。
去年12月、金城さんはサンゴの専門家が集まる学会で協力を呼びかけました。



 

サンゴの養殖業 金城浩二さん
「僕らは“ごりごりに強いやつ”って呼んでいるんだけど、この起きた事実を解明していただいて。」



 

研究者
「日本は真っ先にそれをやっていくことが、重要な意義があると思う。」

研究者からは、期待の声が上がりました。

日本サンゴ礁学会 鈴木款会長
「将来は間違いなく、サンゴの白化をある程度送らせたり防ぐことはできる。」



 

学会から2か月。
白化しないメカニズムに迫ろうという研究が進んでいます。

サンゴ礁の研究者、琉球大学の中野義勝さんです。
中野さんたち研究チームは、通常のサンゴと白化しないサンゴを、さまざまな角度から比較・分析してきました。




すると、サンゴ本体と体内にいる褐虫藻に違いはありませんでした。
そうした中、注目したのが、ある「バクテリア」の存在です。




「エンドゾイコモナス」というバクテリア。
「白化知らずのサンゴ」の体内にだけ、特に多いことがわかったのです。

琉球大学熱帯生物圏研究センター 中野義勝さん
「菌類(バクテリア)に何かが起こっている。
それが白化の強さ弱さに関係がありそうだと今回分かってきた。
小さいけど貴重な一歩だと考えている。」

 

沖縄で生まれた「白化しないサンゴ」。
金城さんは、今後このサンゴの数をさらに増やし、ふるさとのサンゴ礁を再生させたいと考えています。

サンゴの養殖業 金城浩二さん
「僕が子どものころ潜っていた沖縄の海は、今で言えばフルカラーハイビジョン。
最近潜ったらモノクロになっている。
生き物を観察しながらやったら、生き物は応えてくれると今回確信できた。
夢だけど、温暖化に勝ちたい。」

“白化しないサンゴ” 海の異変の救世主に?

阿部
「取材にあたった沖縄放送局の横山カメラマンです。
『白化しないサンゴ』には、専門家の期待も高まっているようですね。」

横山真也カメラマン(沖縄局)
「サンゴの白化を食い止める有効な手だてがない中で、今回の白化しないサンゴの誕生、そして、そこからさらに白化を左右するとみられるバクテリアが見つかったことは、これまでにない研究成果だと言えます。
サンゴは世界中におよそ800種類いるといわれています。
今後、この研究を進めることによって、さらに多くの種類に応用できるかもしれません。」

“白化しないサンゴ” 自然への影響は?

和久田
「でも、こうした強いサンゴばかりが増えていくと、元の自然への影響は心配されませんか?」

横山カメラマン
「サンゴ礁の専門家に話をうかがったところ、その場所にもともといない種類のサンゴを移植すると生態系を壊すことにつながりますが、強い個体が生き残るのは自然界でも当然のことなので、大きな問題はないそうです。
また、温暖化が急速に進む今、白化対策は時間との戦いで、高水温でも白化しないサンゴを増やしていくことは大きな意味があるとも話していました。」

サンゴの白化現象 求められる対策は?

阿部
「今後はどんな取り組みが必要となりそうですか?」

横山カメラマン
「もちろん、地球温暖化などの対策に私たち自身が取り組むことが前提ですが、白化を防ぐ研究、同時に、白化しないサンゴを増やすための体制作りも必要です。
国や自治体、それに研究機関などが連携することで、一刻も早くサンゴ礁の再生や保全につなげていってほしいと思います。」