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2017年2月1日(水)

自分を隠したい 広がる“マスク依存”

阿部
「こちらの“マスク”。
意外な使われ方が広がっています。」


 

冬、街で目立つマスク姿。
今、カゼ以外の理由でマスクをする人が増えています。



 

「すっぴん隠すために。」

「身だしなみとして、ひげを隠すために。」



 

「白いマスクは格好的に浮いちゃう。
ファッション的に選んだりしています。」



 

店頭では、見た目重視のマスクが人気を集めています。

「最近では多機能に加えて、小顔に見えるマスクが人気です。」




 

一方、心の不安からマスクをつける人もいます。

「顔が隠れている安心感で、いろんなことをシャットダウンできる。」




 

精神科医
「マスクに安易に依存してしまうことで、社会との壁を作ってしまい、ひきこもりに陥る危険性もある。」



 

阿部
「風邪や感染症の予防以外の用途で着用されるマスクは、おしゃれなどの理由でメガネをかける『伊達メガネ』になぞらえて、『伊達マスク』とも呼ばれています。」

和久田
「ファッション感覚でマスクをつける若者がいる一方で、マスクで自分の表情を隠して、他人との関わりを避けようとする人も増えていると、専門家は指摘しています。」

阿部
「マスクを外せなくなってしまった人たち、その現状を取材しました。」

自分を隠したい 広がる“マスク依存”

リポート:森下晶(映像取材部)

都内の大学院で中国の法律を研究している遥(はるか)さん、24歳です。
授業中も含め、家を出てから1日中マスクをして過ごしています。
知らない人の前に出ると、視線を感じ、緊張してしまうという遥さん。
マスクをつけて表情を隠せば、少し不安が消えるといいます。

 

遥さん
「(人に)見られてるという妄想じゃないんですけど、そういう視線を感じたりしたときに、顔真っ赤になっても”マスクしているから大丈夫だ”と自分に言ったりしています。」


 

遥さんがマスクをつけ始めたのは、中学生のとき。
周りの視線を避けようとしたのがきっかけでした。

それ以来、マスクを外せなくなり、高校の卒業式の写真にもマスク姿で写っていました。




 

遥さん
「人に見られてないという暗示がかかる感じがして。
マスクという逃げ方を覚えてしまって、そこから逆に抜け出せていない。」


 

今、遥さんのようにマスクを外せない人が、悩みを相談しに訪れる場所があります。

心理カウンセラーの菊本裕三(きくもと・ゆうぞう)さん。
11年前から、人間関係などの悩みを聞くカウンセリングを行っています。
ここ数年、訪れる人にマスク姿が目立つといいます。


 

30代女性(事務職)
「今の職場では取りたくないです。
不安ですね、(マスクを)外すとなると。
守られてる感があるので。」

 

40代女性(派遣社員)
「初対面とか、苦手な人がいるところだったり、人がいっぱいいるところとか。
顔が隠れている安心感で、いろんなことをシャットダウンできるような気がします。」

 

日本ライトカウンセリング協会 菊本裕三さん
「あまり人と交わりたくないという人がマスクを使うという現象がありまして、ここ何年で増えていることは確かです。」



 

マスクがないと不安を感じ、手放せなくなる、いわば“マスク依存”ともいえる状態。
精神科の医師は、深刻な事態を招くこともあると指摘します。



 

精神科医 渡辺登さん
「他人に自分の喜怒哀楽を読まれずに済みますから、自分がどのように相手に見られているか気にしないで済む。
マスク依存を続けていると、社会との壁を高く作ってしまう。
ひきこもりに陥ってしまう危険性もある。」

 

マスクが外せなくなっていた、大学院生の遥さんです。
将来の目標は、大学の講師など、人前に立つ仕事に就くこと。
できるだけ早く今の状態から抜け出さなくてはいけないと感じています。


 

遥さん
「やっぱり何か異常だと思っているので、こういう心理的に。
堂々と人としゃべれるように、自信がつくなり、変われればいいなと。」

“マスクを外したい” そのきっかけは…

自分を変えるきっかけをつかもうと、遥さんはこの冬、あるイベントに参加することにしました。

男女の出会いの場を作ろうと企画されたイベント。
参加者全員がマスクを付けることが条件です。

顔を隠したまま会話をすることで、相手の外見ではなく、内面を重視してもらおうというのです。

遥さん
「今回はマスクしていい場だったので、素の自分を出して、いろんな人と楽しくおしゃべりできたら。」

マスクを付けたままの会話はおよそ3時間。
20人ほどの相手と、思い思いに話すことができます。

男性
「音楽好きなんですか。」

遥さん
「音楽大好きですね。」

男性
「歌うのも好き?」

遥さん
「歌うのは下手なんですけど、好きです。」

男性
「旅行好きなんですね。」

遥さん
「旅行大好きですね。
でもお金頑張ってためて、1回行ってっていうくらいで、そんなにバンバン行ける感じではないです。」

この日、たくさんの人と、趣味や考え方などの話が弾んだ遥さん。
外見ばかりを気にしていた自分に改めて気付かされたと言います。



 

遥さん
「案外見られてないのかもしれないなと思って。
自分も内面を見たし、相手も内面を見てくれたなという感じはしました。」


 

イベントから1か月後。

街を歩く遥さん。
その顔にはもうマスクがありませんでした。 

遥さん
「きょうは(マスク)してないです。
1か月くらいしてないですね。



まだまだ“マスク外せないや”とか、“マスクしてくればよかった”と思うときも時々あるんですけど、自分の中で人と素顔で向き合うことに直面していこうと。」

“マスク依存” 抜け出すためには

“マスク依存”から抜け出すためにはどうすればよいのか。
カギは、やはり人とのコミュニケーションにあると精神科医は指摘します。

精神科医 渡辺登さん
「ゆっくりゆっくり時間をかけて、人との温かい交流を増やしていくのがポイントだと思っています。
そこで自信を高めていって、マスクを着けていかないで済む日を増やしていくんですね。
まず一歩踏み出してもらえればと願っています。」


 

阿部
「マスクを外した遥さん、とても生き生きして見えましたし、すてきでしたね。
でも、自分の内面を守るためにマスクが外せなくなるというのは、わかる気もしますね。」

和久田
「マスクをすることが決して悪いわけではありません。
マスクには感染防止といった本来の目的があります。
また、専門家によりますと、対人恐怖症などの人にとっては、マスクが社会との接点を保つ、いわば“松葉づえ”のような存在になることもあるということです。」