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2017年1月20日(金)

“エリアリノベーション” まち再生のカギは

阿部
「空きビルや空き店舗から始まる、『まちの再生』です。」

全国で問題となっている「シャッター通り」。
今、ある変化が起きています。


 

かつて空き店舗に悩んでいた、北九州の商店街。
この5年で若者で賑わう町に生まれ変わりました。



 

きっかけは、空き物件が次々とクリエイターの工房や飲食店に変身したことです。

「すごく雰囲気がよくて、すてき。」




 

町の再生は、長野市の善光寺の門前でも…。




 

空き倉庫や空き家を改装し、80軒に上る新たな店が続々誕生しています。
復活のカギはどこにあるのでしょうか?

阿部
「まちを再生する上で、今、注目されていることばがあります。
こちら、『エリアリノベーション』です。

空きビルや空き家を改装し、新たな価値を加える『リノベーション』。
それが広がって、まちごと賑わいを取り戻す。
それが『エリアリノベーション』です。
行政や補助金に頼らず、民間の力でまちを再開発しようというものです。」

和久田
「専門家によりますと、エリアリノベーションによって生まれ変わった地区は、主なところだけでも10か所以上。
長野市や北九州市の他にも、岩手や香川など、全国各地に広がっています。
まち再生の現場を取材しました。」

空きビルから始まった 市民による“まちの再生”

リポート:吉岡礼美(広島局)

この10年で、問屋街から“若者のまち”へと変ぼうを遂げたエリアが岡山市にあります。
市の中心部から車で20分、問屋町です。

70を超える雑貨店や飲食店。
そのほとんどが、空きビルをリノベーションして生まれ変わりました。

畳屋だった建物は、人気の洋服店に。





家具の卸問屋の倉庫は、若者が集うカフェになりました。




 

「ザ・休日って感じ。」

「落ち着いていて、おしゃれ。」



 

かつて、多くの卸問屋が集まっていた問屋町。
倉庫や広い販売スペースを持つビルが軒を連ねていました。
しかし、バブル崩壊後、廃業が相次ぎ、空きビルが目立つようになりました。

10年前、その町並みに目をつけたのが、岡山市でグラフィックデザインの会社を営む明石卓巳さんです。
東京と地元を行き来する中で、「他にはない、ワクワクする“まち”を岡山に作りたい」と思うようになりました。


 

明石卓巳さん
「『岡山は何もない』というのがみんなの口癖だった。
そういう話をすると、『何かかっこいいところを作りたい』とか、『楽しいところを作りたい』という話はすごく膨らんでいく。」


 

そんなときに出会ったのが、問屋町です。
広い通り沿いに並ぶ、低層階のビル。
開放感があり、空きビルに新たな価値を加えれば、魅力的なエリアになると思ったのです。

明石さんは、ある通りに着目しました。
当時、ここには個性的なカフェと雑貨店が営業していました。
この通り沿いに魅力的な商業ビルが3つ加われば、人の流れが生まれると考えたのです。

明石さんはオーナーに掛け合い、空きビルを格安で借りて、リノベーションを実施。
テナントには、オリジナリティにこだわる店を選びました。




最初に声をかけたのは、岡山産のデニムを全国に発信するファッションデザイナーの田主智基さん。
独特のデザインは、海外でも注目されています。
明石さんは「岡山で、他にはないまちをつくろう」と訴えました。


 

田主智基さん
「新しいエリアを何か1つブランド化していきたいと。
まちとしての、これからの可能性が非常に見えた。」


 

「他にはないまちを」という呼びかけは共感を呼び、2つ目のビルには別の岡山生まれのファッション店が出店。

3つ目のビルには、ヨガ教室など、美容や健康を売りにする6つの店が入りました。
「ここにくれば、他では簡単に手に入らない商品と出会える」。
次第に人々が通りに足を運ぶようになります。

すると、周りの空きビルにも新たな店が次々と開店し始めました。
その1つ、岡山産のリンゴにこだわったアップルパイの専門店です。



 

店主
「とにかく単純にかっこよかった。
そこに僕も入れたらという思い。」


 

10年前、1つの通りから始まったリノベーション。

個性を売りにしたさまざまな店は、今、町全体に広がっています。
「他にはないまちをつくる」というコンセプトは、当初、急激なまちの変化にとまどっていたビルのオーナーたちの心も動かしました。

新たに店を開いた店主たちは、定期的にオーナーと交流会を開き、まちの将来を語り合っています。




 

ビルのオーナー
「わしらにないものを持っている。
だから、あんたを信頼した。
まちとはそういうもの。」

 

明石卓巳さん
「『まちをどうにかしよう』『自分が楽しく過ごしたい』、どんな思いでもいいけれど、同じ思いを持った人たちが数多く一緒になってやっているところは、すごく魅力的なまちになっている。」

“まちの再生” 市民に託す自治体も

自治体の中には、まちの再生を市民に託すところも現れています。
広島県北部にある三次市です。

市では、人口減少が進むまちに、にぎわいを取り戻そうと、建物を白壁で統一。
電柱を地下に埋めるなど、7億円以上かけて町並みを整備してきました。
しかし、にぎわいは戻ってきませんでした。


 

三次市 政策部 倉岡和正さん
「ハードを整備しても、そこで活躍する人や物がないと、まちは動き始めない。
目的とするものがないと人は来ない。」


 

行政主導のまちづくりに限界を感じた三次市。
空き家の活用法を市民に考えてもらうプロジェクトを始めました。
参加したのは、公募で集まった会社員や学生など30人。
アイディアが次々と出されました。

「日々外食で胃腸が疲れ果てて、お母さん食堂みたいなのがあったら、ゆっくりできるのでは。」




 

注目を集めたのは、地元の看護師のアイディア。
古民家を、バーがあるゲストハウスに作り替えるというものでした。

看護師
「私が看護師なので、人生を相談するリノベーションバー。」


 

看護師
「自分でも思っていなかった展開で、すごくワクワクする。」



 

三次市は今回のアイディアを実現するため、今後も市民との協議を続けていくことにしています。

三次市 政策部 倉岡和正さん
「熱い雰囲気で、まちが動いていくなとはっきり分かった。
行政としてどこが協力できるか、一緒に考える必要がある。」


 

専門家は、まちの再生で市民が果たす役割は、今後ますます大きくなると指摘します。

九州工業大学 建設社会工学科 徳田光弘准教授
「大きな再開発事業をしても、残念ながら大きな効果を生まなくなってしまった。
自分のまちは自分たちで作るという視点が(今後)特に大きく求められている。」



 

阿部
「単に空きビルをリノベーションすれば、まちが活性化するわけではないということですね。」

和久田
「成功には、岡山市の明石さんのように、『まちを変えたい』という熱い思いを持った人の存在、そして、どんなまちにしたいかという明確なコンセプトが欠かせないんですね。」

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