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2017年1月12日(木)

冬点描 願いは“安全運転で”

阿部
「寒い冬。
街で見かけると、心が温まるかもしれません。」


 

年末年始の大阪。
ちょっと変わったトラックが走っています。
後ろには、子どもが描いた絵が。

“おとうさん、だいすき”

“おしごとがんばってね!”



 

子ども
「安全運転で頑張ってほしい。」



 

運転するお父さんの安全を願う子どもたちの思いが込められています。

阿部
「シリーズ『冬点描』。
今日(12日)は、大阪からです。」

和久田
「こちらは、子どもが描いた絵です。
かわいらしいですね。
実は、これらの絵が、トラック事故を減らすことに一役買っていると注目されているんです。」

阿部
「ドライバーの意識を変える効果があるとされる取り組みを取材しました。」

子どもが描いた絵のせて 願いは“安全運転で”

リポート:小林崇(大阪局)

長距離ドライバーの内山貴登(うちやま・たかと)さん。
4か月前から、自分の子どもが描いた絵をラッピングしたトラックに乗っています。



 

内山貴登さん
「おはようございます。」

「かわいいね。」

内山貴登さん
「ありがとうございます。」

内山さんのトラックに描かれた2枚の絵。

トラックを運転する内山さん。

そして、家族みんなの笑顔が描かれています。

内山さんには3人の子どもがいます。





家族の絵を描いた、長女の、りこちゃん。
お父さんに無事に帰ってきてほしいと、覚えたてのひらがなでメッセージも添えました。




トラックの絵を描いたのは、長男の慶太朗くん。
港まで配送することが多い内山さんを気遣ってのことでした。



 

慶太朗くん
「(お父さんのトラックが)海に落ちないように。」

内山貴登さん
「車に乗っててな、海に落ちたら大変やもんな。」

慶太朗くん
「おぼれちゃうから。
ぷくぷくってなっちゃうから。」

内山貴登さん
「これを描いてくれていることによって、絶対に事故したらいけないと(気を)引き締めて、子どもたちを乗せている感覚で運転している。」



 

この取り組みは、大阪にある運送会社がドライバーの安全意識を高めるために始めました。

きっかけは、4年前に自社のドライバーが起こした交通事故でした。
交差点でトラックが左折しようとしたところ、横を直進していたバイクと接触。
バイクを運転していた男性は亡くなりました。



社長の宮田博文(みやた・ひろふみ)さん。
事故の直後、亡くなった男性の父親から言われた言葉が忘れられないといいます。



 

宮田運輸 社長 宮田博文さん
「たった今、息子が命を落としたと。
息子には小学3年の女の子がいたと。
それだけは分かってくれな。」

 

遺族の重い言葉を受け止め、会社では、交通安全の講習など、事故を2度と起こさないよう取り組みを行ってきました。




 

そしてたどりついたのが、ドライバーの子どもに絵を描いてもらうことでした。
事故が起こると悲しむ家族がいる。
そのことをドライバーが常に意識すれば、安全運転につながると考えたのです。
取り組みを始めて3年。
絵をラッピングしたトラックは25台に増えました。
事故はこれまで1件も起きていません。

「ほっこりする。」

「自分も安全運転しようかな。」



 

この冬、新たにラッピングをするドライバーがいました。

小吉康彦(こよし・やすひこ)さんです。
絵のラッピングを希望していましたが、独身の小吉さんには描いてくれる子どもがいません。



 

小吉康彦さん
「子どもがいるかたは後ろにプリントしてもらっているみたいなので、いいなぁと遠くから眺めてた感じ。」



 

そんなとき、協力してくれる子どもが現れました。

同僚の子ども、福本哲也(ふくもと・てつや)くんです。





小吉康彦さん
「きょう絵を描いてくれんねやろ、楽しみやわ。
きれいにするわ。」

福本哲也くん
「あんまり絵は得意じゃない。」

小吉康彦さん
「うまい下手、気にしてしまうけどな、おっちゃんらはそんなんじゃないからな。
頑張って、一生懸命、喜んで描いてくれるのがうれしいんや。」

念入りに手入れする小吉さんの姿を見ていた哲也くん。
トラックの絵を描くことにしました。



 

細かい部分にまでこだわって描きます。

福本哲也くん
「トラックで事故多くなったら、トラックが減ったり、トラックで仕事する人がいなくなるかもしれないから。
交通ルール守って走ってほしい。」


 

年が変わり、小吉さんのトラックのお披露目の日です。
生まれ変わった小吉さんのトラックです。
哲也くんが描いた、トラックの絵とメッセージ。

“お仕事、安全運転でがんばってね!!”
 

ないしょで描いてくれた小吉さんの似顔絵もありました。

小吉康彦さん
「うまい。
似顔絵ないって言ってたけど、頑張って描いてくれたんだね。」


 

哲也くんの優しさがこもった絵をのせて、初めての配送です。
年始めの高速道路は混み合っていました。

小吉さん、何度もミラーを確認し、ゆとりのある運転を心がけます。




 

夕方、配送先に到着。




 

「かっこいいです。
いいですね、このトラックうまい。」

小吉康彦さん
「これから毎日、このトラックで来ます。」

 

小吉康彦さん
「周りに見られているという緊張感もあったし、そのプレッシャーが僕らのモチベーションを一段上げてくれる。
この車がぐちゃぐちゃになって路肩にとまってたら寂しいでしょ。」


 

悲しい事故をなくしたい。
安全運転を願う子どもたちの思いをのせて。
ぬくもりのトラックが走り続けます。

 

和久田
「周りの人たちが安全を願う心も一緒に走っていると思うと、その責任をより実感できますよね。」

阿部
「運送会社によりますと、最近は、トラックのドライバーが無理な割り込みをされたり、車間を詰められたりすることも減ったということです。
子どもたちの絵の効果は、周りのドライバーにも及んでいるようです。」

和久田
「この取り組みは、大阪以外の千葉や愛知など15社に広がっています。
こうした取り組みで、交通事故が1件でも減るといいですよね。」

 

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