これまでの放送

2017年1月11日(水)

冬点描 東日本大震災5年10か月 仮設住宅“別れの冬”

阿部
「今週、シリーズでお伝えしている『冬点描』。
けさは東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町の仮設住宅が舞台です。」

 

和久田
「津波で壊滅的な被害を受けた南三陸町。
あの日から今日(11日)で5年10か月。
新しい町並みがようやく姿を見せ始めています。
それに伴い、町内の仮設住宅からは、再建した自宅などへ移り住む人が増えています。

待ちに待った新生活。
一方で、5年以上支え合った隣人の中には別れを惜しむ人も。
この冬、転機を迎えた2つの家族のあゆみを見つめました。

支えあった2つの家族 仮設住宅“別れの冬”

リポート:小嶋陽輔(仙台局)

宮城県南三陸町の高校のグラウンドに作られた仮設住宅。
一時はおよそ50世帯が住んでいましたが、今はその半分にまで減りました。



 

後藤美咲(ごとう・みさき)ちゃん、5歳。
生まれて間もないころからずっとこの仮設住宅で暮らしています。



 

両親ときょうだい2人の5人家族。
父親の一美(かつみ)さんは、営んでいた飲食店と自宅を津波で失いました。
震災の2か月後に生まれた美咲ちゃんは、4畳半2部屋というプレハブでの暮らししか知りません。


 

後藤一美さん
「3歳くらいのころでしょうか、美咲が『ここが私のおうちだよ』と言ってですね、長くて大きいでしょ』って言ったのが忘れられないですね。
ちょっと胸にぐっときましたね。」


 

美咲ちゃんが、毎日のように遊びにいく場所があります。

後藤美咲ちゃん
「きたよー。」


 

向かいにある越後(えちご)ゆきさんと勝治(かつじ)さん夫婦の部屋です。
1人息子とその家族が離れて暮らすため、夫婦2人きり。
共働きで生活再建に奔走する美咲ちゃんの両親に代わって、進んで子どもたちの面倒を見てきました。 

越後ゆきさん
「やっぱりみみ(美咲ちゃん)くると楽しいね。
おりこうさんだもんね。」


 

越後さんたちは、津波で自宅や町が飲み込まれる様子を目の当たりにしました。
体調を崩し、部屋に引きこもりがちになった2人を支えてくれたのが、日々成長する美咲ちゃんの存在でした。



 

出会ったのは震災発生から半年後、まだ美咲ちゃんが赤ん坊だったころ。
歩く練習には、越後さんも付き添いました。



 

それぞれの誕生日にはお互いの家でお祝い。
美咲ちゃんを中心に、次第に1つの家族のようになったのです。



 

越後勝治さん
「家族以上じゃないか。」

越後ゆきさん
「自分たちの孫以上だね。
そばにいなかったから、自分たちの孫はね。」

越後勝治さん
「元気をもらうね。」

仮設住宅での厳しい暮らしが長引く中、支え合ってきた2つの家族。
この冬、大きな転機を迎えることになりました。
美咲ちゃん一家の引っ越しが決まったのです。

後藤一美さん
「美咲のおうちはどこだ。」



 

新しい家が完成し、この日は下見です。
新居がある高台は仮設住宅から車で10分。
新しい家が次々と建設されています。


 

真新しい2階建ての家。
美咲ちゃんは、初めて自分の部屋をもらいました。



 

「新しいおうち楽しみ?」

後藤美咲ちゃん
「まあね。」


 

後藤一美さん
「喜ばしい半面、寂しいですね。
(美咲は)まだわかっていないかな。」


 

越後さん夫婦も、来月(2月)には町内にできた災害公営住宅に引っ越すことが決まりました。
成長を見守ってきた美咲ちゃんたちと離ればなれになります。

越後ゆきさん
「しょうがないことなんだけど
そばで声が聞こえなかったり、明かりがついたり、ドンドン駆けてる音がしなくなったり。
寂しい。」

 

この日、越後さん夫婦は美咲ちゃん一家を招いてお別れ会を開きました。
精一杯のごちそうでもてなします。

後藤一美さん
「みみに会えないと寂しいんだってよ、じいちゃんとばあちゃん。」


 

後藤美咲ちゃん
「みみだって泣くもん。」

越後ゆきさん
「泣かないから、ばあちゃん我慢するから。」



いつも元気な美咲ちゃんですが、この夜は最後まではしゃぐことはありませんでした。




 

迎えた引っ越し当日。
越後さんは美咲ちゃんを笑顔で見送ろうと決めていました。



 

後藤一美さん
「越後じいちゃんとばあちゃんとお別れだよ。」



 

越後ゆきさん
「さよならじゃないね、また会うからね。」



 

別れを惜しむ様子もなく出発した美咲ちゃん。




 

実は、両親にも内緒で越後さんに手紙を渡していました。
覚えたてのひらがなで、1人で書き上げた感謝の手紙です。

“おばあちゃんとおじいちゃん、ありがとう!”

越後ゆきさん
「私たちも”ありがとう”だね。
みみと同じくらいの“ありがとう”かもわかんないよね。」


 

長く続いた仮設住宅での日々。
そこで生まれたつながりを支えに、それぞれが新たな一歩を踏み出そうとしています。

 

阿部
「つらいときを一緒に支え合って、家族以上のつながりがある人たちが離ればなれになるのは、やはりさみしいですよね。
美咲ちゃんが手紙に込めた、けなげな思いには胸を打たれますよね。」

和久田
「こうした、さまざまな痛みを乗り越えて新たな一歩を踏み出す人たちは、きっと大勢いらっしゃいますよね。
東日本大震災からまもなく6年。
被災地の仮設住宅で暮らす人は、今も4万人近くに上っています。」

 

<関連リンク>
■特集ダイジェスト
「冬点描 新成人がおもてなし “手作り”成人式」
「冬点描 願いは“安全運転で”」
「冬点描 ナマハゲ 怖いだけではありません」
「冬点描 氷点下の新聞配達」