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2017年1月10日(火)

冬点描 新成人がおもてなし “手作り”成人式

阿部
「今日(10日)からシリーズでお伝えする『冬点描』。
全国各地の心温まる冬の表情をカメラマンが見つめました。
1回目はこちら、沖縄県石垣島です。

 

和久田
「昨日(9日)は『成人の日』でしたが、石垣市のある地区では、新成人たち自らが企画する『手作りの成人式』を行っています。
地域の人たちをもてなし、楽しんでもらおうと、およそ60年前に始まった、この伝統。
準備の様子から成人式本番に密着しました。」

新成人がおもてなし “手作り”成人式

リポート:田中尚典(NHK沖縄)

沖縄県石垣島。
白保地区は、畜産と農業が盛んな地域です。
今年(2017年)、白保地区で新たに大人の仲間入りをするのは28人。
ほとんどが、幼稚園から中学校まで1つのクラスで学んだ幼なじみです。
多くが就職や進学で島を離れていますが、成人式に参加するため、ふるさとに戻ってきました。

式の準備は、多くの新成人が帰省する12月末、本格化します。
この日は、招待状の宛名書き。
両親はもちろん、お世話になった地域の人たちも招くのが、ここ白保地区の伝統です。

 

新成人
「少年野球を教えてくれた監督へ。」

新成人
「友だちのおじいちゃんなんですけど、いつも孫のようにかわいがってくれて。」
 

招待状は、新成人自ら、一軒一軒の家を回って届けます。

「おまえ成人になった?
おめでとうございます。
ありがとう。
みんなで成人、お祝いするさね。」

来てくれる人たちに楽しんでもらおうと、新成人みんなで出し物も用意します。
地域に伝わる踊りや太鼓を使った演目など、その数は19種類にものぼります。

 

昔ながらの踊りは、かつて白保で同じように成人式を手作りした先輩たちに教わります。
大みそかや元日も、連日、深夜までの練習です。


 

新成人の1人、松原美月(まつばら・みづき)さんです。
今は専業主婦で、3月に2人目の出産を控えています。

松原美月さん
「小さいころから踊りをやってるので、成人式のときにお世話になった人に見せたいなっていうのがあります。」

4人兄弟の長女として育った松原さん。
弟や妹の面倒をよくみる、しっかりものだったといいます。
そんな松原さんの暮らしは、高校に入って一変します。
1年生の時に両親が離婚。
アルバイトをして家計を助けなければならなくなりました。
ところが高校2年生の時、付き合っている男性との子どもを妊娠。
アルバイトをやめ、高校も中退しました。

松原美月さん
「家のこともちゃんとして、少しでも楽にさせてあげたいって気持ちがあったので、お母さんにごめんなさいって気持ちが強かったですね。」

 

周囲の人たちが出産に強く反対する中、唯一味方になってくれたのが、一番苦労をかけたはずの母、貴代(たかよ)さんでした。

松原さんの母 貴代さん
「美月本人の気持ちを聞いたら、意思も強いし、自分は後悔しないと言ったので、じゃあ応援するよってかたちで応援したんですけどね。」

 

母の後押しを受け、松原さんは男性と結婚。
無事、男の子を出産しました。
子どもの世話をお願いして、成人式の準備に向かうたび、松原さんは改めて、母のありがたみを実感しているといいます。

松原美月さん
「自分のことを後回しにして美月たちを一番に考えてくれたりしているところはすごいなって。
迷惑かけてきたこともあるので、感謝の気持ちがいちばん。」

迎えた成人式当日。
会場の準備も自分たちで行います。

本格的な化粧も。




 

松原美月さん
「こっちとか、貼られてないところ。」



 

朝から本番の間際まで、準備に余念はありません。

松原美月さん
「テープはまだ余っているでしょ?
貼った方がいいと思う。
取ってくる。」

招待状を受け取った人たちが続々とやってきました。
会場は300人を超える人たちでいっぱいになりました。

地域の人たちに教わった踊りや太鼓。
3時間にわたって披露します。
かつて、手作りの成人式を経験した先輩たちも、年に一度のこの日を心待ちにしていました。

 

「きょうの成人式は白保だけ。
最高でしたよ。」

「白保の子どもは頑張ってやってくれる。
ずっとずっと何十年続いている。
何とも言えない喜びだね。」
 

式の最後を締めくくるのは、新成人の言葉。
親と一緒にみんなの前に立ち、この日を迎えた思いを語ります。

新成人
「朝から晩まで働いてくれて、そのおかげで私も今、学校に行けているので、そこは本当に感謝しています。
ありがとうございます。」

 

中学生の時、父親を病気で亡くした男性。
母が1人で守ってきた、畜産の仕事を受け継いでいく決意を語りました。

新成人
「畜産の勉強したんですけど、まだまだっていうのに気付いて、(石垣島のある)八重山地方の畜産関係のトップに立って、白保から八重山を引っ張っていけるような人間になりたいと思います。」

 

都会にあこがれ、高校を卒業して、すぐに島を離れた男性。
成人式の準備を通して、改めてふるさとの良さに気づきました。

新成人
「白保の昔からの風潮というか、みんなで集まって、行事に必ず出なきゃいけないというのが、自分は個人的に嫌いで、本当は。
いやいやしてたんですけど、帰ってきて、みんなで集まって練習とかしていて、本当に白保生まれで良かった、と思います。」
 

そして、松原さんは…。

松原美月さん
「(母が)女手一つで私たちきょうだい4人を育ててきたことはとても感謝しています。
自分の子どもを産んで、子育ての大変さというものを実感しました。
自立できるように頑張りたいと思います。」

自分の20年と改めて向き合った、節目の日。
若者たちが一歩成長する、伝統の成人式です。

和久田
「感謝の気持ちを言葉にするのはもちろん、自分自身を見つめ直すことで自信を持って新たなスタートを切れていましたよね。」

阿部
「親に加えて、ここでは地域の人たちが温かく見守っていましたよね。
その中で決意を話す新成人のみなさん、応援したくなりました。」
 

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