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2016年12月12日(月)

なぜ?“異物混入”で相次ぐ食品回収

阿部
「食品に異物が混入し、メーカーが自主回収するケースが相次いでいます。」

さんまのかば焼きの缶詰。
先月(11月)、その一部から、金属の破片が見つかり、2,700万個余りが回収の対象に。
 

その3日後、ゼリー飲料に、カビが混入していたとして、270万個の回収が発表されました。」




 

「命に関わるものが入っていたら嫌。」

「体に害がなければ、そこまで騒がなくても。」




気になる食の問題。
何が起きているんでしょうか。

阿部
「こちらの表をご覧ください。

先月(11月)、異物が混入したとして、自主回収が発表された主な食品です。
混入したのは金属片やプラスチック、さらには病原菌やカビなどです。
個数を見てみると、2,700万を超えるものから、数万、数千までと、さまざまです。」

和久田
「このほかにも、虫の混入による回収も増えているといいます。
なぜ、異物混入による食品回収が相次いでいるのか。
そして、この問題に企業はどう向き合おうとしているのか、取材しました。」

相次ぐ食品回収 “異物混入”は防げるか

リポート:野口恭平記者(経済部)

静岡市にある従業員およそ50人の食品メーカーです。
スーパーや学校給食向けの納豆を生産しています。
相次ぐ異物混入の問題を受けて、これまで以上に衛生管理に気を使っています。

特に注意しているのが、虫対策。
虫取り機は最近2台増やし、あわせて10台設置。




虫やネズミの侵入を防ぐため、月に1度専門業者に点検してもらい、壁にできた隙間などを埋めています。





各工程では、異物がないか、必ず2人以上でチェック。





最後に、探知機で金属片がないことを確認します。
中小メーカーにとって、こうした衛生管理にかかる費用は大きな負担です。



 

冨良食品 木下真一郎さん
「異物混入を出すより、設備投資して安心安全な商品を提供したい。
今以上に安全衛生管理をしっかりしていきたい。」


 

一方、他のメーカーからは「異物混入を完全に防ぐのは難しい」という指摘も出ています。
この秋、商品の自主回収を発表したある食品メーカーの社長が電話取材に応じました。

電話:自主回収した食品メーカー社長
“虫の一部が入っていると報告が入った。”



 

専門業者に依頼し、虫対策に力を入れていたにも関わらず、商品から虫の一部が見つかったのです。

電話:自主回収した食品メーカー社長
“一つ問題が起きたら利益も全部なくなる。
防虫・防鼠(そ)対策にお金をかけたり、ハード面にお金をかけてずっとやってきた。
100%(混入防止)できたらいいが、なかなか難しい部分がある。”

こちらは、最近5年間の食品回収の件数です。
「異物の混入」が原因の回収は以前からありましたが、2014年に、その前の年の2倍になり、今も高止まりしています。
危機管理の専門家は、2014年に起きたある問題が、回収が増えるきっかけになったと指摘します。

人気のカップ焼きそばに「虫が入っていた」と、消費者が写真付きでネットに投稿。
メーカーは商品の回収、さらに一時生産中止に追い込まれたのです。

ACEコンサルティング 白井邦芳さん
「これまで虫はリコール(回収)の対象にならなかった。
ソーシャルメディアが発達したことによって/あっという間に数万単位で投稿が見られるようになった。
会社としてはすぐに対応しないと、会社そのものが、ひとつの商品によって全体にまで影響を受ける。」

相次ぐ食品回収 変わる企業の対応

阿部
「取材にあたっている経済部の野口記者です。
異物の混入がツイッターなどのインターネットサービスですぐに広がる時代ですから、企業の対応も変わらざるを得ないようですね。」

野口恭平記者(経済部)
「そうですね。
企業の食品回収についての対応方針は変わりつつあると思います。

食品の業界団体がまとめた手引きによりますと、例えば食中毒菌や病原菌、化学物質などが混入した場合は『回収をしなくてはいけない』となっていますが、虫や髪の毛などは『身体に影響を与える可能性が低い』とされていて、『当事者間で解決』となっています。
ただし、虫が混入した写真などがインターネット上にアップされると、情報が一気に広がり、メーカーのブランドイメージが損なわれるケースも出ています。
このため、これまでは回収していなかった虫の混入などでも、回収に踏み切るメーカーも出てきているんです。
こうした中、メーカー側も万が一に備えた対策を強化しています。」

“異物混入”に備え 消費者と向き合う企業

食品メーカーなどをサポートしている、東京都内の会社です。
顧客企業に対するネット上での書き込みを24時間体制で監視しています。




「虫」や「髪の毛」、「混入」や「汚染」といった単語を含んだ情報を抽出します。

エルテス 執行役員 安達亮介さん
「このワードが入っている投稿というのは、クレーム情報である可能性が高い。」



 

クレームと思われる情報が集中すると、アラームが鳴り、消費者の声を分析してすぐにメーカーに知らせる仕組みです。

エルテス 執行役員 安達亮介さん
「“もっと真摯(しんし)に対応してほしかった”という(消費者の)気持ちが、さらなる不満として発露して問題が大きくなるケースが多い。」



 

サービスを利用した食品関連の企業は、およそ100社。
その数は増え続けています。
一方、過去の不祥事の教訓から、長期的な視野で消費者との信頼関係を築こうとする企業もあります。

大手乳業メーカー「雪印メグミルク」です。

今、力を入れているのが、徹底的な情報公開です。
全国に21ある工場のほとんどで、週5日、見学を受け入れています。
工場内には、最新鋭の生産ラインが並びます。



例えば牛乳の場合、パック詰めは雑菌が入らないよう遮断した空間で行われています。





通常、食品メーカーが公開することが少ない「品質検査」の様子も見ることができます。

見学者
「見て安心した。」

見学者
「きちんと作っていると確認したものを買う。」


 

こうした取り組みの背景には、過去の苦い経験があります。

会社の前身・雪印乳業グループは、2000年代、食中毒事件や牛肉偽装事件を相次いで引き起こし、会社の信頼を大きく損なったのです。

現在、問合せや苦情を受け付けるコールセンターは、1年365日、休みなしで対応しています。





寄せられた苦情の内容なども、あえて公開することで、消費者の信頼を高めていきたいと考えています。

雪印メグミルク 並木俊之工場長
「築いてきた信頼を失うのは本当に一瞬だということを、貴重な経験として学ばざるを得なかった。
見てもらう中で信頼を少しずつ作っていく。
1日や2日、1年でできるものではない。」

“異物混入” 企業の課題は

和久田
「工場などでの対策を徹底することに加えて、生産工程や苦情の情報を公開することも大事なんですね。」

野口記者
「消費者はメーカーの対応を厳しく見るようになっています。



背景には、消費者もネットで情報を発信できるようになり、メーカーなどが一方的に情報を出すのではなく、より対等な関係になってきている変化があると思います。
例えば、企業が異物混入を公表しなくても、消費者側の指摘で世に広まることもあるわけです。
その食品がどう作られたのか、問題があった場合にはどう対応するのか、企業はより積極的に情報を発信していく必要があると思います。」