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2016年12月9日(金)

「漱石アンドロイド」製作の舞台裏!

阿部
「ちょうど100年前に亡くなった、あの『文豪』が現代によみがえります。」

日本の近代文学の礎を築いた小説家、夏目漱石。
1916年12月9日、この世を去りました。
没後100年となる今年(2016年)、あるプロジェクトが始まりました。

人型ロボット・アンドロイドとして、漱石をよみがえらせようというのです。
手がけたのは、漱石の母校の流れをくむ、二松學舎大学と、アンドロイドの製作で知られる大阪大学のチームです。

大阪大学 石黒浩教授
「アンドロイドを通して(漱石の)人物像に迫ったり、文学の中身に迫ったりすることに大きな価値がある。」


 

漱石のアンドロイドがスタジオに登場します。

阿部
「文豪・夏目漱石が、生前の姿そのままによみがえった『アンドロイド』です。」

和久田
「近くで見ましても、皮膚やまつげなど、とても精密なんですよね。」

漱石アンドロイド
「おはようございます。
夏目漱石です。」

和久田
「よろしくお願いします。
本当に精密ですよね。
せっかくですので、漱石さんと握手をさせていただきたいと思います。」

和久田
「すごいしっとりしていて、まさに肌の質感です。
ちょっと冷え性の方の手を触ったような感覚でした。」

阿部
「漱石さん、100年振りによみがえった気分はいかがでしょうか?」

漱石アンドロイド
「昔、夢十夜という小説で『100年待っていて下さい、きっと逢いにきますから』というセリフを書いた覚えがありますが、100年待って頂いてありがとうございます。」

阿部
「こちらこそ、ありがとうございます。
いやぁ、そうだったんですね。
この日を予言していたかのようなセリフですね。
このアンドロイド、いったいどうやって作られたのでしょうか。
漱石さん、お願いします。」

漱石アンドロイド
「こちらをご覧下さい。」

「漱石アンドロイド」 製作の舞台裏

リポート:添徹太郎(科学文化部)

漱石の生前の姿に迫る、アンドロイドの製作。
わずかに残された資料が頼りです。

顔の再現に使ったのは、漱石が亡くなった直後に弟子たちが顔の型を取った「デスマスク」。
レーザーを使って、顔のおうとつを精密に計測。
骨格や肉づきまで細かく表現します。

続いて、体格。
実際に着ていた洋服や身体測定のデータから、肩幅も狭く、小柄だったことが分かりました。


 

「(身長)159センチでしょ。
小さかったですね。
“きゃしゃ”。
52〜53キロ、体重がね。」

「女性用のマネキンを『ずんどう』にして着せている。」
 

漱石の声や話し方の再現にも取り組みました。

協力したのは、漱石の孫、夏目房之介(なつめ・ふさのすけ)さんです。
祖父に会ったことはありませんが、長年、その人柄に興味を持ってきました。
漱石と体格がほぼ同じという房之介さんは、声も似ている可能性があります。

録音した房之介さんの声を1音ごとに分解し、それを合成。
講演では、ゆっくり・はっきりと話したという、文献に残る漱石の話し方を表現しました。


 

「コンニチハ、オアイデキテウレシイデス。」




 

夏目房之介さん
「まさか声をやることになるとは思わなかった。
漱石のイメージが、どうなっていくのか見たい。
それが楽しみ。」

 

最も力を入れたのは、表情の追求です。
中でも笑い顔の表現は難航しました。
気むずかしいイメージがある漱石。
実は、落語や講談を愛するユーモアあふれる人物だったと伝えられていますが、笑った写真や映像はひとつも残されていません。
そこで頼りにしたのが、漱石を身近で見ていた弟子たちの証言をまとめた文献です。

二松學舎大学 山口直孝教授
「『大笑い』『呵々大笑(かかたいしょう)』『にやにや苦笑した』とも証言されている。」

笑顔の描写の中で、最も多かったのは「微笑」でした。
微妙な顔の動きをプログラミングし、再現します。

「基本的な表情がこれ。




 

ちょっと笑った顔で少し口角をあげてニヤッとする感じ。」 

こうして100年の時を経て、夏目漱石がアンドロイドとして、よみがえりました。

現代によみがえる!? 文豪 夏目漱石

和久田
「漱石さんの微笑みが見られて、私たち大変光栄です。」

漱石アンドロイド
「ありがとうございます。」

阿部
「今ちょっと笑いましたね。」

和久田
「こんな笑い顔だったんですね。」

阿部
「取材にあたった科学文化部の添記者です。
残された資料が限られる中で、亡くなった人をアンドロイドとして再現するというのは難しいんですね。」

添徹太郎記者(科学文化部)
「詳細な資料に基づいて、歴史上の人物をアンドロイドとして再現したというのは、少なくとも日本では初めてのことなんです。
正解のない、非常にレベルの高い挑戦だったと言えます。
隣にいる漱石アンドロイドは、外見は完成度が高くできているんですけれども、中身はまだ完成度を高めていく余地があるんです。
会話もできているように聞こえますけれども、あらかじめ録音したものを話しているというのが現状なんです。
ただ、応答の内容は勝手に作ったわけではなく、漱石が実際に書いたり、あるいは話したりしたことをもとに『もし漱石が話したなら』と考えて作られたものなんです。」

阿部
「では、漱石が書いたエッセーの内容を直接聞いてみると、どんな感じなんでしょうか?」

漱石アンドロイド
「理想を高く持ってください。
あえて野心を大きくすべきとは申しませんが、理想がないものの姿はあまり美しいものではありません。
理想とは見識から出るもの、そして見識は学問から生まれます。
学問を大切にしてください。」

和久田
「直接、教えを受けているような感覚ですよね。
こうしたアンドロイドを開発する意義というのは、どんなところにあるのでしょうか?」

添記者
「まず、文学を研究する上では、作家の『人となり』というのが、こうして形を持つことで、格段にイメージしやすくなるということが挙げられます。
ですので、作品の朗読や大学での講義といった、教育現場で用いられる見通しです。
さらには、作品の解釈や人物像を変えていくような新たな研究分野というのも切り開いていく可能性があります。
今後は、接客や介護などの分野にロボット技術が活用されていくと考えられますが、その際、人に寄り添って生活を豊かにしていく、こうしたアンドロイドというのは、どういう存在であるべきなのかと考える上でも重要です。」

阿部
「この研究、これから、“それから”が大事ということですね。」