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2016年10月25日(火)

ドローンで人命救助 初の競技会

阿部
「ドローンを使った人命救助、その最前線に迫ります。」

4月に発生した熊本地震。



人が立ち入ることができない危険な地域の調査に活用されたのが、ドローンです。

イタリアやネパールの地震でも、被害状況の把握に使われました。
こうしたドローンを人命救助に役立てられないか、各地で模索が始まっています。

中でも活躍が期待されているのが、山岳救助の現場です。
複雑な地形や、二次災害のおそれのある場所で、ドローンの力が発揮されると考えられているからです。



 

山岳救助の専門家
「(ドローンを使えば)今後われわれの捜索の方法も大きく変わる。」



 

和久田
「今、山での遭難事故が相次いでいます。

去年(2015年)の遭難者の数はおよそ3,000人。
登山ブームなどもあり、この20年で3倍に増えています。
人命救助では72時間を過ぎると生存率が急激に下がるため、迅速な捜索が求められています。」

阿部
「ドローンの場合、ヘリコプターが近づけない場所や、視界が悪い気象条件でも捜索することができます。
厳しい自然条件の中、ドローンはどこまで力を発揮できるのか。
先週、北海道の山林で遭難者を捜索する、全国初の競技会が開かれました。」

ドローンで山岳救助 初の大規模競技会

競技が始まりました。
捜索の現場となった山林は300ヘクタール、東京ドーム60個分です。
気温や風など気象条件が変わる中、5日間にわたって行われます。

参加者はまず、ドローンからリアルタイムで送られてくる映像を手がかりに発見しようと試みました。
ヘリコプターよりも低い高度で飛べるので、木々の間など、より詳細な現場の映像を見ることができるからです。
しかし…。

参加チーム
「もっと進んで!」

参加チーム
「ストップ!」

 

参加チーム
「ぶつかった…。」

始まってすぐ、トラブルが続出します。 

参加チーム
「画像来へんな。」

参加チーム
「あかん、アウトや。」

 

通信障害です。
ドローンとコントローラーの間の通信は、直線的に伝わる電波を使います。

しかし、実際の自然には起伏や木などの障害物があるため、電波がさえぎられてしまったのです。

大阪大学チーム 西下敦青さん
「ハプニングの8割は通信に関するもの。
捜索現場で人を見つけることが、本当に難しいと実感した。」


 

さらに、切り札と考えていた最新技術にも問題が。

多くのチームが搭載していた、赤外線カメラです。

赤外線カメラは、画面の中の温度が高い部分を赤く表示します。
広大な山林の中で遭難者を探す有効な手段と考えられていました。
しかし、撮影された画像は予想外のものでした。

参加チーム
「これであたりをつけてやろうかなと思ったのに。」

本来は人形だけを検知するはずでしたが、多くの場所が赤く反応しています。
この日の気温は18度。
人間の体温とは大きな差があり、赤外線カメラで発見できると考えていました。

しかし、天気が快晴だったため、太陽の日を浴びた木々の温度が予想以上に高くなったのです。




 

損害保険会社 高橋良仁さん
「赤外線で捜すことを誰しも考えるが、なかなか捜索に結びつかない場合があると理解できた。」



 

大会が始まって2日。
人形を発見できたチームはありませんでした。

人形
“誰かいませんか。”

ドローンで人命救助 新たなアプローチ

迎えた3日目。
新たなアプローチで捜索に挑むチームが現れました。

ドローンを使ったベンチャー企業 野口克也さん
「赤外線が使いづらいので、自動運航じゃないと撮れない。」



 

このチームが注目したのは、「自動運航システム」。
コースを事前に設定すれば、ドローンが自動で飛行します。




ただし、木などの障害物にぶつからないよう、高い高度で飛ばす必要があります。

自動運航のドローンが戻って来ました。
映像を見てみると…。



 

「これは違いますか?」

不鮮明ではありますが、人形らしきものを見つけました。

次にこのチームが取り出したのは、より高性能のカメラを搭載したドローンです。
今度は出来るだけ低い高度で、ドローンを飛ばします。
新たな画像が届きました。

ドローンを使ったベンチャー企業 野口克也さん
「黄色い木の横。」

画面には、はっきりと人形の姿が映っています。

「当たり!」

ドローンを使ったベンチャー企業 野口克也さん
「自動運航で最初から撮って、あとで見ることを選んだのが勝因。」



 

多くのチームが諦めかけていた中での成功。
これまでにはなかったノウハウが生み出されました。

大会ではこの方法を参考にして、およそ半分の時間で発見に成功するチームも出てきました。
視察に来ていた地元の消防の責任者は、ドローンに大きな可能性を感じていました。


 

地元の消防 西垣隆泰主幹
「“ゴールデンタイム”、72時間以内の救助救出をドローンを使って要救助者を早期に発見。
位置情報がわかれば消防隊をピンポイントで送り、救命につながる。」


初めて大規模な自然の中で行われたドローンの競技会。

主催者は今後、遭難者の発見だけでなく、救援物資の運搬など、ドローンの持つ新たな可能性を試す場として続けていきたいと考えています。

 

和久田
「各チーム、練り上げた戦略を持って競技会に臨んだそうなんですが、実際に参加したことで思いもよらない課題が発見できたと話していました。」

阿部
「さまざまな課題が見えてきたようですが、それを一つ一つ克服して、早く人命救助につなげてほしいですね。」