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2016年10月24日(月)

ITで激変! 中小企業のモノ作り

和久田
「『第4次産業革命』。
ITや人工知能などを使って、製造工程のデジタル化や高度な自動化を進め、生産性を飛躍的に高めようというものです。」


阿部
「政府も成長戦略の重要な柱として位置づけています。
とりわけ、海外との価格競争や人材不足などに悩む中小企業に大きな変化をもたらすと期待され、少しずつ広がりを見せています。
変わる中小企業のモノ作りを取材しました。」

生産効率化で特注ドアを安価に

リポート:堀内健太(NHK徳島)

ITを駆使して、売り上げをこの5年間で倍増させた中小企業があります。
徳島県のドアメーカーです。
1年間で作るドアは10万種類。
顧客の要望をかなえるオーダーメイドが、この会社の強みです。
 

「このドア、落書きをしても消せるドアです。」

幼い子どもがいる家庭からのニーズに応えたドア。

ペットブームを受けて、家の中をペットが自由に動き回れるドアも作っています。
通常、オーダーメイドの製品はコストが高くなりますが、この会社では量産品並の価格を実現しています。

 

それを可能にしたのが、3,000万円で導入した、このサーバー。
中には、過去10年の間に生産されたドアのデータが全て蓄積されています。


 

注文が入るとコンピューターは、蓄積されたデータの中から似ているドアの情報を取り出し、自動的に設計図を作成します。
設計図には効率的な作業工程が示されているため、複雑なドアも短時間で作ることが可能になりました。
さらにコンピューターは、最も効率的に工場が稼働する生産計画も立ててくれます。

注文順に作る従来の方法では、1日の作業量にムラが出来てしまいます。



 

一方、このシステムでは、ドアの材料やデザイン、さらには必要な作業時間などを考慮して、作業の順番を組み替え、生産の無駄をなくしました。
こうして、オーダーメイドのドアを量産品並の価格で生産することに成功したのです。



ドアメーカー社長 髙橋栄二さん
「本当に少ない在庫で、資材もジャストインタイムで必要なものしか買わない。
経営資源として、非常に効率化を図っている。
システムの威力だと思う。」

熟練職人の技を若手に継承

ITを駆使して、課題となっていた技術の継承に成功した中小企業もあります。

北海道にある従業員80人の金属部品メーカーです。
鉄道車両やスマートフォン向けまで、大小様々な金属部品を製造しています。


 

この工場の主力となっているのが、平均年齢27歳の若者たちです。
以前、この会社を支えていたのは、ベテランの職人たちでした。
しかし定年を迎え、次々と退職。

このままでは、会社の存続が危うくなる。
社長の山内さんが考えたのが、職人の技術をデータ化することでした。
10万通りにも及ぶ、金属の加工方法を細かく分析。
データ化した技術をサーバーに蓄積すれば、誰でも熟練工並の加工が可能になると考えたのです。
 

入社2年目の石田瑞樹(いしだ・みずき)さん。
作っているのは、スピーカーの部品です。



 

1枚の金属を、様々な角度から隙間なく曲げ合わせる作業。
以前なら、10年以上の経験が必要な職人技でした。



 

経験の浅い石田さんが頼るのが、このタッチパネル。
機械に金属の板を差し込む方向や長さなどを細かく指示してくれます。
石田さんは、指示通りに差し込むだけ。

寸分の狂いもなく、板を曲げ合わせることができました。




 

石田瑞樹さん
「この機械を使ったら誰でもできる。」



 

金属部品メーカー 社長 山内雄矢さん
「10年、20年先を見据えたときに、職人が世代交代しなくてはいけない時期が来る。
次に来る若者たちが同じ仕事ができるように考えてやってきた。」

つながる町工場 高い競争力を

東京・江戸川区では、零細企業が集まり、出来るだけ少ない投資で競争力を高めようという試みが始まっています。

その名も「つながる町工場プロジェクト」。
この日は「ステンレスの加工」「溶接」「組み立て」といった異なる技術を持つ、3つの町工場が集まり、共同で部品を作るための話し合いが行われました。

町工場 社長 今野浩好さん
「ITの世の中だから、ノウハウがつながって、一緒に仕事ができる。」



 

これまで3社は、自分で材料を調達し、別々に大手メーカーに部品を納めてきました。



 

このプロジェクトでは、インターネットを使った共通のシステムを導入することで、互いの生産工程を一元化。
3つの町工場が1つの工場のように稼働することで、それぞれの技術を生かした付加価値のある部品を作るのが狙いです。
作業の効率化にも取り組んでいます。
 

使用するのは、1台2万円の市販のタブレット端末。
 

従業員は作業を開始する際、タブレット端末の「着手」のボタンをタッチ。
その情報はネットを通して、他の工場にもリアルタイムで共有されます。
こうすることで、作業時間を大幅に短縮しようというのです。
 

通常、複数の町工場が1つの製品を作る時には、むだな時間が発生しがちです。
お互いの進捗状況がわからないため、納期の変更に備え、予備日を設定するからです。

 

新たなシステムでは、各工場の作業状況がリアルタイムで見えるため、余計な予備日が必要なくなります。
これがコストを抑えることにつながるのです。
効果は、作業時間の短縮だけにとどまりません。
これまでは、大手メーカーの求める製品ばかり作ってきましたが、空いた時間で、3社のオリジナル製品の開発も進めています。
システムの費用は、およそ300万円。
ITでつながることで、町工場に新たなビジネスの可能性が広がろうとしています。

町工場 社長 今野浩好さん
「よりオープンにつながることで、新しい価値を生む。
そのチャンスが、たくさんあるし、実現する手段が技術的に出来てきた時代だと思う。
そこに、僕らは活路があると思っている。」




阿部
「先ほどVTRに出てきた北海道の金属部品メーカーでは、ITによって職人の技術を継承することに成功していましたが、それによって作業時間が減った若手が自主的に設計の勉強をするなど、仕事の幅を広げることにもつながっているということです。」

和久田
「こうした中小企業の動きを、国も支援しようとしています。
経済産業省では、先進的な事例に補助金を出すことにしたほか、中小企業がITの導入について相談できる拠点の整備を今年度中に始める予定です。」