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2016年10月22日(土)

急増する肥満児童 被災地で何が…

森田
「『天高く馬肥ゆる秋』とも言いますけれども、秋になり、おなか周りが気になるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。」 

小郷
「食欲の秋とも言いますからね。」

森田
「ついつい食べ過ぎちゃいますよね。
こちらをご覧下さい。
全国の小学1年生から6年生の肥満児童の割合です。
この10年間、すべての学年で減少傾向にあります。
しかし、その一方で、東日本大震災の被災地では肥満児童が急増している学校があることがわかりました。」

急増する肥満児童 被災地で何が…

リポート:辻浩平(NHK盛岡)

宮古市田老地区の小学校です。
震災から5年半あまり。
今、新たな課題に直面しています。


 

宮古市立 田老第一小学校 坂下尚志副校長
「本校の肥満傾向の児童の出現率をグラフで表したものです。」



 

震災後、肥満児童が急激に増加。
30%あまりが肥満傾向で全国平均のおよそ3倍です。

宮古市立 田老第一小学校 坂下尚志副校長
「ショックでした。
まさか、そういうところに表れるとは思っていなかったので。」


 

肥満児童の増加は、同じ被災地の南三陸町でも問題になっています。
肥満傾向は20%以上。
町内5つの全ての小学校で、震災前より増えていたのです。

 

南三陸町 教育総務課 菅原義明課長
「学校とかの教育現場も非常に心配しているところではある。
困ったことだという認識は、みんな持っている。」


 

被災地の子どもの肥満を調べている岩手県立大船渡病院の森山秀徳(もりやま・ひでのり)医師です。
森山さんは、被災地の小学生500人以上のデータを分析。
生活習慣についてもアンケートを行いました。
子どもの肥満は、徒歩による通学の時間が影響していると森山さんは考えています。
 

岩手県立 大船渡病院 森山秀徳小児科医長
「一番大きいだろうというのが、徒歩の通学時間の減少ですね。
食事、家庭環境、生活習慣とかもあるが、おそらく(徒歩通学の減少が)一番大きいだろう。」

 

なぜ徒歩の通学時間が減少したのか。
肥満児童が急増した、宮古市田老地区の小学校です。

震災後、仮設住宅が建設されたのは、学校から8キロ離れた場所。
これまで歩いて通学していた児童のほとんどが、スクールバスを利用するようなりました。

5年生の三浦聡悟(みうら・そうご)くんです。
毎日、仮設住宅からバスで通っています。
三浦くんは放課後も、すぐにバス乗り場に向かいます。
バスが出発するのは、授業が終わって20分後。
校庭で遊ぶ余裕もありません。
 

三浦聡悟くん
「(授業が)終わったらすぐに、こっちに(バス乗り場に)来る感じ。」



 

遊ぶ場所も限られているため、自宅で過ごす時間が増えています。

母 泉さん
「家族で見ていても、おなかの出具合とか気になっていたし、車を使って、ドアからドアへという生活になりましたから。」


 

徒歩通学の減少には、被災地ならではの事情がもう1つあります。

復興工事がピークを迎えている、南三陸町。
現在も、至る所で工事が行われています。
通学路をダンプカーなどが行き交い、場所によっては歩道もありません。

不安に感じた保護者が、子どもを車で送り迎えしているのです。
この小学校では、児童の半数がスクールバス。
3割が保護者の送迎で通学しています。


 

送迎する家族
「なるべく歩かせたいんですけど、ちょっと心配で。」

送迎する家族
「震災前は、送迎なんてものは、考えられなかったんですけど。」

 

なんとか子どもたちの肥満を減らすことはできないか。

田老地区の小学校がまず始めたのが、休み時間に行う“5分間マラソン”です。
週2回、全校児童で行います。
スクールバスで通う三浦くんも参加していました。

三浦聡悟くん
「体を動かすと結構疲れて、汗も出るけど、それをやりきったあとには、やったという気持ちになりますね。」


 

さらに、この夏からはスクールバスの乗り場も変更しました。
新しいバス乗り場は、学校から200メートル離れた役場の前。
少しでも子どもたちの運動量を増やそうという狙いです。


 

宮古市立 田老第一小学校 坂下尚志副校長
「たったの200mですけれど、大事かなと。
震災後、右肩上がりのように肥満度が上がっていったわけですので、震災前に戻したいなと。
健康で活力のある子どもに育ってほしいと思います。」

 

小郷
「被災地では、こんな思わぬところにも影響が出ているんですね。」

森田
「意外でしたね。
被災地の復興に時間がかかっている現状では、子どもたちの肥満の解消を進めるのも簡単ではありません。
震災から5年7か月が経過した今も被災地では、こうした新たな問題が起き、その対応に追われています。」