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2016年10月7日(金)

人工知能 職場をどう変える?

阿部
「AI=人工知能が私たちの働き方を変えるかもしれません。」

ロボットや自動運転車など、さまざまな分野に広がる「人工知能」。



企業向けの展示会でも、注目されているのは人工知能です。
社員の働き方を変え、業績を上げられるのではないかと、期待が高まっています。



 

来場者
「企業にとって(人工知能は)非常に有効なツールになると思う。」

来場者
「日本の働き方は不合理なところが多かったので、期待感ある。」


 

将来、人工知能が、社員の能力を測定。
経営戦略や人事にも、人工知能が関わる時代が近づいています。

人材管理に詳しい 慶應義塾大学 岩本隆特任教授
「いままで年功序列でやってきた会社にとっては大きな変更になるので、のほほんと仕事してきた人にとっては(人工知能は)脅威になると思う。」


 

開発が進む職場の人工知能。
その最新事情です。

阿部
「これまで人間でしかできないと考えられてきた職場の人材管理に、今、人工知能が取り入れられつつあります。」

和久田
「人工知能で職場はどう変わるのか。
最新の現場を取材しました。」

人工知能が提案!? “生産的な働き方”

大手電機メーカー・日立製作所のグループ会社です。
人工知能で仕事の生産性を上げることができるのかをテーマに、社員600人を対象に実験が進められています。

実験に参加している本持香織(もともち・かおり)さんです。
この日、人工知能から、あるアドバイスが届きました。



 

本持香織さん
「“西岡さんとの会話をもっと増やしましょう”とアドバイスが出ています。」

上司にあたる西岡さんと会話するよう促すものでした。
アドバイス通り、西岡さんの元へ向かいます。

本持香織さん
「(会議の)時間を1時間ずらしていただきたいんですけど。」

西岡千尋さん
「空いているので良いですよ。」

本持香織さん
「本当ですか、分かりました。」

ふだんは、メールばかりでやりとりしていた2人。
会話することで仕事がスムーズに進むことに気づきました。

西岡千尋さん
「結果として(仕事の進みが)早い。
会話だと5分もかからない。
数分話すだけでも意識を合わせて(仕事が)できるので、いいと思う。」

 

こうした会話など、社員の行動は名札型の端末ですべて記録し、人工知能に送られています。

その仕組みです。
端末は感知した体の揺れから、その人が話しているのか、デスクワークをしているのかなど、行動を細かく記録します。

さらに、端末どうしの距離や向きで、社員が誰と、いつ、どれくらいの時間、会話したのかを計測。

人工知能はその膨大なデータを分析し、会話のほか、会議や事務作業の時間など、生産性の向上につながる提案を社員それぞれに行うのです。
社員の意識や、働き方も変わってきました。

勤続9年、瀬戸口崇(せとぐち・たかし)さんです。





こちらは、以前の瀬戸口さんの1日の行動記録です。
デスクワークと外での勤務が中心で、会議以外で職場で言葉を交わすことは、ほとんどありませんでした。
同僚との雑談は仕事の邪魔だと考えていたからです。

しかし、人工知能からのアドバイスは、「同僚との会話を増やしましょう」というもの。
時間は「5分未満」。

瀬戸口さんは、デスクワークの合間に同僚と短い会話をするようにしました。
その結果、さまざまなヒントを得られ、かえって仕事がはかどるようになったといいます。

日立コンサルティング 瀬戸口崇さん
「雑談をすること自体に少し抵抗があったけれども、ミーティングの中では聞けないようなこと、ちょっと困っているような相談事も聞けるようになったので、そういった面ではやってよかったなと思う。」


 

システムの開発を進めるプロジェクトチームです。
実験を始めて4か月。
これまでより3割多い仕事を、同じ時間でこなせるようになった職場も出てきたといいます。
人工知能によって、将来、生産性が飛躍的に向上する日がやってくると考えています。

 

日立製作所 研究開発グループ 矢野和男技師長
「(人工知能は)自分では気付ききれない、いろいろなことを、めざとく教えてくれる相棒、アシスタントのような形で、いろいろなことを把握したり、より的確な判断をするためのアドバイザーを一人ひとりが持てるような時代がやってくる。」

人工知能で社員の“異変”をチェック

すでに1,000社を超える企業が導入した、人工知能のシステムもあります。
開発したベンチャー企業です。

システムの特徴は、社員1人1人の表情を分析する「笑顔判定」。
2万人分の顔写真で学習した人工知能が、社員のささいな表情の変化を読み取ります。

「目尻がどれくらい下がっているのか、口角がどのぐらい上がっているのか。
今までの記録、その他のサンプルとしての表情と比較して、(人工知能が)計算して得点化している。」



 

同じ人でも、表情で得点が大きく変わります。

この得点をもとに、残業時間や休日出勤の回数などのデータを加えて、社員のストレスや仕事への意欲を総合的に判定します。
社員が仕事を休んだり、辞めたりする前に、人工知能が管理者に知らせる仕組みです。

ネオキャリア 開発担当マネージャー 平沢亨さん
「(対応の)1歩目が早くなると思う。
気づくまでが遅くて、言われて初めてその人が危機に陥っていたと気づくということが減ると思う。」


 

こちらのレストランも、先月(9月)システムを導入しました。
スタッフは1日2回、出勤と退勤の時に顔写真を撮ります。

従業員
「楽しいかなと思う。」

従業員
「昔みたいにただタイムカードを押すだけ、書くだけとは違う。」

 

システムの導入を決めた、本社の坂本済(さかもと・わたる)さんです。
飲食業界では人手不足が課題になっています。
人工知能によって社員の意欲を高めることで、人材を定着させ、サービスの向上につなげたいと考えています。



この日は、店の支配人にシステムの効果を確認しました。

レストラン運営会社 坂本済さん
「実際に使ってみてどうか。」

支配人
「面談じゃないが、立ち話程度でもケアしていくことができる。
そこでうまく使えるかなと思う、表情。」

システムの導入から1か月。
以前よりもスタッフ一人ひとりに気を配れるようになったと、手応えを感じています。

レストラン運営会社 坂本済さん
「すぐに(異変に)気付くことで、ずっと働き続けたいという人材の定着にもつながると思う。
その人材がサービスをする、客の顧客(満足)にもつながる。
全ていいことにつながっていくという印象を受けている。」

導入の効果は?

和久田
「取材した社会部の松尾記者とお伝えします。」

阿部
「同僚に声をかけたり、表情を見て体調を気づかったりということは、これまで普通にやってきたことと思いますが、人工知能が入ってくると、何が違うんでしょうか?」

松尾恵輔記者(社会部)
「これまでそうした同僚への声かけや気づかいは、職場の上司や先輩社員が行ってきたと思うのですが、昔の職場に比べて、今は社内でコミュニケーションを取るのが難しくなっている面もあります。
学習を重ねた人工知能のアドバイスがあれば、経験や勘に頼らず、誰でもそうしたことができるようになります。


紹介したケースでは、職場の雰囲気作りや社員の意欲を高める役割にとどまっていましたが、今後、人工知能が、さらに社員の膨大なデータを集めて試行錯誤を繰り返し、正しい判断を学習していけば、そう遠くない時期に、経営の判断や人事の決定に関わることも可能になるといわれています。」

導入に向けた期待と懸念

和久田
「でも、人工知能が会社の経営や人事を決めるというのは、ちょっと怖いような気もしますよね。」

松尾記者
「私も取材をしていて、そうした怖さは感じました。
人工知能の導入で、労働の生産性が上がり、ヒトは、より創造性の高い仕事に専念できるとする専門家がいる一方で、ヒトの仕事や職業選択の自由が奪われかねないという指摘もあり、専門家の間でも見方は分かれています。」

導入はどこまで進む?

阿部
「人工知能の判断によって『年功序列がなくなる』という話も出ていましたよね。
この先、人工知能の導入はどこまで進むのでしょうか?」

松尾記者
「人工知能によって、企業の中で若い人が抜てきされるようなケースが相次ぐと、従来の年功序列が崩れるなど、社会に大きな変化をもたらすという指摘もあります。
ただ、人工知能の判断の基準となるデータや判断を受け入れるのかを決めるのは、人間です。
人工知能をどのようにいかしていくのか、変化に対応するルール作りや私たちの心構えが必要になると思います。」

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