これまでの放送

2016年10月6日(木)

「一点でも多く…」 “保活”めぐる闘い

阿部
「まず、こちらの様子をご覧ください。
赤ちゃんを連れた人たちが役所に殺到。
来年(2017年)4月に保育園に入るための受付が、今週各地でスタートしました。」


和久田
「多くの自治体で、認可保育園に入園できるかがどのように決まるのか。
実は、ポイント制なんです。

たとえば、親が週5日働いていると20点、週3日だと12点。
こうした勤務状況に加えて、ひとり親世帯ですと、点がプラスされます。
逆に、祖父母などが日中子どもの面倒を見られる場合はマイナスになるなど、状況によって細かく点数が決められています。
それぞれの点の配分は自治体によって異なりますが、こうした合計点が、入園できるかできないかを決めるのです。」

阿部
「どうすれば、点数を1点でも多く稼げるか。
保育園に入るための活動、いわゆる『保活』の現場を取材しました。」

「一点でも多く…」 “保活”めぐる闘い

リポート:飯田暁子記者(報道局)

生後6か月の娘がいる、杉本美月(すぎもと・みづき)さん(仮名)です。
「何とか点数を稼ぎ、子どもを保育園に入れたい」という1人です。



 

杉本さんが暮らす東京・目黒区は、保活の激戦区。
これまで何度も区役所を訪れ、入園の相談をしてきました。



 

杉本美月さん(仮名)
「役所の人から(入園の優先順位が)かなり劣位になりますと言われまして。」



 

来年4月に、人材育成会社に復職予定の杉本さん。
両親は働いているため頼ることができず、娘が保育園に入れなければ復職はできません。

目黒区の基準では、杉本さんは復職後フルタイムで働く予定のため、20点。
これに夫のフルタイム勤務20点が加わり、持ち点は合計40点です。
しかし…。

杉本美月さん(仮名)
「保活セミナーでいただいた資料です。」



 

今年の春、40点で認可保育園に入れたのは49.5%。
希望者の半分以下だったのです。

杉本美月さん(仮名)
「私たちの家族も40点なので、何もしなかったら入れないんだって、すごく明確になりました。」

何とか点数を増やすことはできないか。
加点される項目をつぶさに見直したところ…。

認可外の保育のサービスを利用して、早く復職すれば2点が追加されることがわかりました。
 

この2点があれば、持ち点は40点から42点に。
データでは、ほぼ100%入園できています。

杉本美月さん(仮名)
「確実に(保育園に)入るためには、それ(点数)を獲得していかないといけない。」

そこで、まず探したのが認可外の保育施設。
区内の15か所ほどに問い合わせをすると…。

杉本美月さん(仮名)
「だいたい何人くらい申し込みされている状況ですか?
0歳児だと、100~200人(待ち)…。」


 

あるところは、空きを待つ人が100人以上。
別のところでは…。

杉本美月さん(仮名)
「7月が(申し込み)最後で150人。」

すでに申し込みを締め切っていました。

杉本美月さん(仮名)
「ため息しか出ない。
入れる保証はこれっぽっちもない、そんな状況なんだな。」

残された最後の手段は、費用が高いベビーシッター。
毎月の負担は、およそ20万円になります。
「それでも保育園に入れるためには、この方法で2点を稼ぐしかない」。
杉本さんは育休を切り上げ、来月(11月)から働き始めることにしたのです。

 

杉本美月さん(仮名)
「(普通に4月から)保育園に入れさえすれば、1年一緒にいられたのになって。
待機児童の問題がこういう状況なので、(復職を早める)選択をせざるを得ないのは悲しい。」

「保活成功させます」 専門ビジネスまで

職場に戻りたくても、戻れる保証がない保活の現状。
企業にも大きな問題になっています。

社員5,000人の監査法人です。
女性社員は増え続け、4人に1人に上ります。



 

「育休中の社員のリストです。」

育児休業を取る社員も年々増え、いまや90人。
しかし数年前から、子どもの預け先が見つからず、復職できないケースが出てきたのです。
このままでは深刻な人手不足に陥りかねません。

監査法人役員 梅木典子さん
「(育休から)戻ってこないとなりますと、穴をどうやって埋めたら良いのだろうと。
急に人を雇って教育して、というのもなかなかできないものですから。」


 

そこで、予定通りに復職してもらおうと、頼ったのが…。

「保活コンシェルジュにお任せください。」

「保活コンシェルジュ」。
企業と契約し、育休から復職できるよう保活をサポートする専門家です。

復職を希望する社員に代わって、自治体などに問合せます。

保活コンシェルジュ
「昨年10月に出産して、子どもが(生後)11か月。
来年4月に保育園の入所を考えている。」

点数の基準は自治体ごとに異なるため、細かく情報を集めるのです。

監査法人の社員で、現在育休中の友部千絵(ともべ・ちえ)さんです。





夫婦共働きの友部さんの点数は、住んでいる江東区では24点。コンシェルジュの報告によると、入園できるかどうかわからない、ぎりぎりの点数だと言います。

保活コンシェルジュ
“江東区も激戦。
広く(情報を)集めておいた方がいい。”


 

コンシェルジュは、友部さんの自宅周辺だけでなく、近隣の自治体にも問い合わせます。

保活コンシェルジュ
「(保育園の)空きはないですよね。


新しいところ増えたりはないですか?」

“ありますよ。”

保活コンシェルジュ
「ホームページに出てますか?」

“まだです。”

保活コンシェルジュ
「いま教えていただけます?」

すると、通勤途中の隣の区には、来年新たに4つの保育園ができることが分かりました。

「ネットには載ってない情報が。」

保活コンシェルジュ
「いっぱいありましたね。
(保活)は情報戦、日々更新なんです。
すぐ聞いた事をお伝えしようと思います。」

こうした情報を最大限活用し、友部さんは、なんとか予定通り復職したいと考えています。

監査法人社員(育休中) 友部千絵さん
「調べようと思いつつ、一日があっという間に終わってしまって。
なかなか入ってこない情報だったので、ありがたいです。」


 

監査法人役員 梅木典子さん
「働く女性に一日も早く戻って活躍して欲しい。
本当に企業にとって損失。
企業が生き残り、持続して成長するために必要な経営戦略、人事施策の1つだと思う。」

「一点でも多く…」 “保活”めぐる闘い

阿部
「取材した飯田記者です。
保活を代行する会社まででてきたというのは、驚きですね。」

飯田暁子記者(報道局)
「こうした保活の代行会社は、ほかにも出てきているんです。




今回取材した会社は、3年前に事業を始めたのですが、今、大手企業を中心に20社、230人の社員の保活を支援しています。
企業からの依頼は年々増えていて、今では受けきれないほどの状態だそうです。」

和久田
「それにしても、1点を争わないと保育園に入れないというのは、厳しいですね。」

飯田暁子記者(報道局)
「保育園に入りたいために、仲のよかった『ママ友』どうしが、保活が始まると点数を競いあうライバルどうしになってしまって、関係がぎくしゃくしてしまったという話も聞きました。
また、中には先ほどの杉本さんのように、点数を上げるために育休を早めに切り上げざるを得なかったり、点数が足りないために待機児童が少ない地域に引っ越したりという方もいました。」

阿部
「こうした状況を改善する方法はないものでしょうか?」

飯田暁子記者(報道局)
「待機児童が年々増えている中では、すぐに解決するのは難しいと思います。

さらに今、多くの自治体では、早く復職した方が点数がプラスされています。
しかしこれでは育休を切り上げざるを得ないという指摘があり、逆に、育休を長く取った方が点数をプラスするという自治体もでてきました。
ただ、こうして点数の付け方がたびたび変わると、今度はかえって保護者が混乱してしまうという皮肉な事態にもなっています。
保護者が余計な負担を負うことなく安心して育休を取り、仕事に戻るためには、やはり保育園の整備が欠かせないと思います。」

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