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2016年10月2日(日)

夢の“自動運転”が社会を変える

18世紀後半、ヨーロッパで誕生した自動車。
人々のライフスタイルを大きく変えてきました。
そして、2016年。
コンピューターが走行をつかさどる自動運転が現実のものになろうとしています。
新時代のモータリゼーション。
私たちの社会や暮らしはどうなるのでしょうか?

近田
「自動車誕生から、およそ250年。
今年(2016年)は、『自動運転元年』とも呼ばれています。」

小郷
「この夢の新技術を活用して、交通や物流など、新たなサービスの開発が進んでいます。

シンガポールでは、公道を使った自動運転タクシーの実験が始まっています。
スマートフォンでタクシーを呼び、決められたコースを乗り降りすることができるというものです。

 

そして、アメリカ。
自動運転のトラックを開発。
長距離運転のドライバーの負担を減らすことができると期待されています。」

 

近田
「さらには、ヨーロッパに行きまして、オランダ。
こちらは、自動運転の小型バスを走らせまして、マイカーに代わる新しい交通システムを生み出そうと取り組みが始まっています。」

自動運転が社会を変える

オランダ東部の学術都市。
地元の政府が中心となって、自動運転バスを公道で走らせる実験が行われています。

車内には、運転席がありません。




 

車体に取り付けられたセンサー。




 

そして、カメラ。
こうした機器を使って、自転車や車を認識します。
運転手がいなくても、自動で走行することができます。


 

技術責任者の大学教授
「1〜2年後には完全に実用化ができるようになっているでしょうね。」


 

将来的には、この自動運転バスが街中を何台も走り、利用者が自由に乗り降りできるような交通システムを作り上げる構想です。
渋滞が課題となっている都市部に導入すれば、マイカーを持たなくてもよくなり、交通量を減らすことができると考えているのです。

地元政府 担当者
「1人1人が車を所有するのではなく、必要に応じて利用するシステムです。
長期的には、マイカーに取って代わり、社会を大きく変えるでしょう。」
 

日本でも自動運転を活用して、社会を変えようという取り組みが始まっています。

このIT企業が去年(2015年)いち早く、自動運転を活用した事業に乗り出しました。
自動運転に、得意とするIT技術を組み合わせることで、社会を変えるような新たなサービスを生み出せると考えたのです。

 

今、この企業が2020年の実用化を目指して開発を進めているのが、自動運転による「無人タクシー」です。
高齢化や過疎化が進む地域で活用できると考えています。

ディー・エヌ・エー 中島宏執行役員
「完全自動運転ができるかもしれない。
モビリティの発展に伴って、世の中が便利に豊かになる現象が起こるだろう。
ライフスタイルが革命的に変わる、それは間違いないと思う。」

過疎の町に自動運転車を

リポート:野口恭平(経済部)

この無人タクシーに期待を寄せている町があります。
山口県・周防大島町です。
人口およそ1万7,000人。
その半数以上が高齢者です。

主な交通手段は、バス。
しかし路線によっては、本数は決して多くありません。
車がなければ、買い物などが不便な環境です。
自動運転者を、ここで活用できないか。

 

この日、IT企業の社員が町役場を訪れました。
さっそく住民から意見を聞きました。



 

住民
「タクシーのドライバーも、90歳近い人がおられたと。
ここでは90代でもやっているんです、現実としてね。」

住民
「免許を返納した方がおられる。
そうすると交通の手段がないわけですね。」

山根恵一(やまね・えいいち)さん、82歳です。
およそ7キロ離れた病院まで通っています。



 

送り迎えをするのは、77歳の妻、ケイコさん。
自動運転が実用化されれば、運転の負担が少なくなると、夫婦で期待しています。


 

妻 ケイコさん(77)
「ロボットさんが病院まで連れてってくれるって。」

山根恵一さん(82)
「利用できれば、ありがたいことはありがたい。」

しかし、この島で無人タクシーを走らせる上で、大きな課題も見えてきました。

ガードレールのない狭い道。




 

消えかかった白線。
センサーで周囲を認識して走る自動運転車にとって、厳しい道路状況でした。

ディー・エヌ・エー 中島宏執行役員
「こういうところで走らせるような技術までレベルが上がってこないと、日本中で困ってらっしゃる方々は救えないということになるので、チャレンジしなきゃいけないところかなと。」

自動運転が“物流”を変える

自動運転は、人手不足が深刻な物流業界でも活かされようとしています。
業界団体の調査では、過半数の業者が、労働力が足りないと応えています。
少子高齢化により、今後、状況はより厳しくなるとみています。
さらに拍車をかけているのが、受取人に不在による再配達の増加です。
 

配達員
「きょうは(不在が)25軒目ぐらいだと思います。
最近は不在の方が多くなってきたと思います。」


 

ネット通販の普及で、宅配便の利用が急増する中、再配達が増え、ドライバーの負担は増しています。

こうした中、大手物流企業がIT企業と手を組んで、自動運転を活用した新しいサービスの開発に乗り出しました。
両者が考える、自動運転による宅配サービスとは…。

まず利用者が、スマートフォンで受け取りたい時間や場所を指定します。
すると、指定した通りに自動運転の車が来ます。


 

車内には、鍵のかかる箱が取り付けられていて、利用者はパスワードを入力するなどして、鍵を開け、荷物を取り出すシステムです。
利便性を上げて、確実に荷物を届けることで、配達の負担を減らせるのではと考えています。
自動運転を使った、さらなるサービスも検討しています。
スーパーや飲食店と連携して、弁当や食料品を配達できないか、人を乗せながら、宅配も行うサービスはできないか、議論が続きます。

ヤマト運輸 長尾裕社長
「社会構造も変わってきていて、特に我々の業界は労働力が先細りになっていく可能性が高い。
サービスの多様化をつくっていく際の1つの手段としては、今回、チャレンジする自動運転がブレークスルーしていくための技術になり得る。」

 

近田
「ここからは、取材にあたりました経済部の野口記者とお伝えします。
自動運転は、本当にさまざまな分野で活用が期待されていますけれども、やはり気になってしまうのは、安全。
本当に大丈夫なんでしょうか?」

野口恭平記者(経済部)
「課題は、いくつかあります。
1つは技術的な課題です。
限られた地域ならともかく、私たちが普段利用する市街地では、歩行者や自転車の飛び出しなど、何が起こるかわかりません。
そうした緊急事態でも、必ず安全を確保できる自動運転の開発は、まだこれからなんです。
さらに大きな課題は、自動運転に対応した法制度など、社会的なルールづくりです。
例えば、自動運転車が事故を起こした場合、責任の所在はどうなるのかですとか。
保険や運転免許の制度はどうあるべきなのか、考えるべきテーマはいくつもあります。」

小郷
「まだまだ、課題は多いようなんですが、実用化はいつ頃できそうなんでしょうか?」

野口記者
「政府は、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる、2020年をターゲットに自動運転の開発を推進していて、まずは限定された地域でサービスを始めようと考えています。」

小郷
「4年後は、結構すぐですよね。」

野口記者
「そして、今から10年以内の2020年代前半には、国内で完全な自動運転車の販売が始まる可能性もあります。
こうした中、紹介したIT企業のほか、大手通信会社など、さまざまな企業が参入し、自動運転で新たなサービスを展開しようとしています。
世界は、本格的な自動運転時代を見据え、すでに大きく動き出していて、競争も激しくなっています。
日本として、技術開発はもちろんなんですが、これを社会課題の解決にどう活かしていくのか、そういった使い方について考えていく必要があると思います。」