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2016年8月29日(月)

夏点描 トナカイよ 泳げ!

池を悠然と渡る、トナカイ。




 

来園者
「すごい、泳いでる。」

来園者
「見たことないね。」

 

トナカイを泳がせる、動物園の暑さ対策です。

阿部
「日本各地の夏の表情をお伝えする、シリーズ『夏点描』。
最終回の今日(29日)は、秋田が舞台です。」

和久田
「秋田市の動物園には、東北地方で唯一トナカイが飼育されています。
主に北極圏など、寒い地域に生息するトナカイは、暑さが大の苦手です。
そうした中、トナカイを泳がせるというユニークな暑さ対策を始めました。
トナカイと奮闘する飼育員の、ひと夏を見つめました。」

トナカイよ 泳げ! 動物園の暑さ対策

リポート:名古屋純子(NHK秋田)

秋田市の大森山動物園です。
飼育数は、100種類以上。
40年以上の歴史がある、市民の憩いの場です。
この夏、秋田市では異例の30度を超す真夏日が続きました。

 

来園者
「暑くないのかしら。」



 

来園者
「モコモコだからね。」

来園者
「私たちも暑いの。」

動物園の中でも、特に暑さに弱いのが、トナカイです。
北極圏でも生きていけるように、熱が体にたまりやすくなっているのです。

トナカイの世話をする、柴田典弘(しばた・のりひろ)さん。
この時期は、特にトナカイの体調管理に気が抜けません。



 

大森山動物園 飼育展示担当 主査 柴田典弘さん
「まず、怖い。
安心感があまりない動物。
突然、死んでしまったり。」

 

実は、柴田さんには苦い経験があります。
一昨年(2014年)、生まれたばかりの赤ちゃんを夏の暑さで死なせてしまったのです。
それから2年。
今年(2016年)の6月に、待望の赤ちゃんが生まれました。
 

母親は、人間で言えば70歳を超える、「サクラ」です。




 

柴田さんは、無事に育ってほしいと願いを込めて、「元気」と名付けました。

大森山動物園 飼育展示担当 主査 柴田典弘さん
「同じことは絶対繰り返さない、その気持ちだけ。
絶対に、絶対に、守ってやろう。」

柴田さんは、さまざまな方法で体温を下げようと努力をしましたが、効果的な方法を見つけられずにいました。

そうした中、野生のトナカイが川や池を泳いで渡る習性があることに注目。
池で泳がせることに行き着いたのです。
泳いだ後は、トナカイの体温が下がるという効果も分かりました。

大森山動物園 飼育展示担当 主査 柴田典弘さん
「(野生の)トナカイが自然の夏、生息している情景がここ。
トナカイを幸せにしてあげないと。」

先月(7月)下旬。
柴田さんは、元気を池に連れて行くための訓練を始めました。
しかし…。


 

大森山動物園 飼育展示担当 主査 柴田典弘さん
「元気くん、嫌なの?」



 

元気は、水を怖がります。
自然に近い形であれば、水に触れてもらえるのではないか。

柴田さんは、人工の小川を作りましたが…。
うまくいきません。
さらに、深刻な事態も起きました。


 

いつものように母親に乳をねだる元気。
ところが、サクラは逃げ出してしまいました。

大森山動物園 飼育展示担当 主査 柴田典弘さん
「お母さん、なんで無視するの?」

暑さのあまり、サクラに子どもの世話をする余裕がなくなったと、柴田さんは見ていました。
 

今月(8月)7日。
秋田市の最高気温は、37度6分。
観測史上2番目の記録となりました。

元気の食欲が落ちていきました。
一刻も早く水に入れなければなりません。
しかし、無理に池に入れると元気が溺れてしまうのではないか。
柴田さんは、悩みました。
閉園後、柴田さんは後輩の飼育員を呼び止め、元気を池に連れて行くことを告げました。

大森山動物園 飼育展示担当 主査 柴田典弘さん
「あした、サクラを泳がせる。
そのとき元気が、水の抵抗とか怖さとか乗り越えて、水に入ろうとしたら、もう止めない。
上陸が困難になったら、(オレが)救いに行くから。」
 

翌日。
元気にとって、初めて見る池。
じっと見つめていた元気。
すると…。

 

世話をすることを止めたサクラが、元気の前を歩き出しました。
いつもは池の中央に向かうサクラが、この日は元気の足がつく浅瀬の方へ歩いて行ったのです。
元気は、水を怖がることなく、泳ぎ出しました。

大森山動物園 飼育展示担当 主査 柴田典弘さん
「浅いところを選んだ、(サクラの)行動にやられました。
子どもを見てくれてるな。
すごいですね。
結局どんな経験則で、いろいろ考えて対策しても、さらっと上を行かれた。
(サクラから)教わったというのかな。」

数日後。
自ら、池に飛び込む元気。
飼育員に見守られながら、夏の暑さを乗り切ろうとしています。




 

阿部
「絶対に守るという言葉にあったように、飼育員の柴田さんの強い気持ちが、トナカイ親子に通じたように見えましたね。」

和久田
「トナカイの『元気』ですが、今では水を怖がることはなくなって、池を自由に泳ぎ回っているそうです。
柴田さんは、残暑が続く9月いっぱいは、池で泳がせたいと話しています。」

 

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