これまでの放送

2016年8月26日(金)

夏点描 自分に打ち勝つ! 清流への大ジャンプ

望月
「今週、シリーズでお伝えしている『夏点描』です。」

和久田
「この、高さ10メートルの橋から飛び込む子どもたち。


岐阜県郡上八幡で90年以上続く、伝統の川飛び込みです。」




 

望月
「すごい迫力ですね!」

和久田
「この怖さに打ち勝って飛び込むことができれば、一人前として認められるんです。
そんな『清流への大ジャンプ』に挑戦する夏を追いました。」

自分に打ち勝つ! 清流への大ジャンプ

岐阜県の郡上市八幡町。
町の中心を流れるのが、吉田川です。




夏になると、川は子どもたちのいちばんの遊び場。





ここで度胸試しとして始まったのが、川への飛び込みです。
子どもたちは低い岩から挑戦を始め、少しずつ高い場所へと挑んでいきます。




最終目標はこの橋、通称「学校橋」からの飛び込み。
高さはビルの3階と同じ、およそ10メートル近くもあります。
 

子ども
「高すぎる。」

子ども
「絶対いかん、完全拒否。」

 

怖さに打ち勝って、初めて橋から飛び込めるのは毎年5人たらず。





大人たちは、子どもがケガをしたりおぼれそうになったとき以外はいっさい手助けせず、見守ります。




 

「地元の子どもはだいたい飛び込むよね。
大人の仲間入りしたっていうか。」



 

子どもたちの中で、ひときわ飛び込み上手なのが、6年生の凰牙(こうが)くん。

5年生のとき、真っ先に橋から飛び込み、みんなから一目置かれています。




 

凰牙くん
「がんばれ。」

飛べた子は、飛べない子たちを手助けするのが役目。

凰牙くん
「こわがるな。」

コツを教え、励まします。

凰牙くん
「いつまでも悩んでも何も変わらないから、覚悟が必要。」



 

凰牙くんのアドバイスを受けて、「今年こそ飛び込みたい」という少年がいます。

6年生の龍広(たつひろ)くん、通称“たっちゃん”。
去年も挑戦しましたが、結局飛べず。
悔しい思いをしました。



凰牙くん
「下見るな、下見るな。」

たっちゃん
「こえぇ。」

この日も何度も飛ぼうとしますが…。

たっちゃん
「行けんかった、ちくしょう、ちくしょう!」



 

たっちゃん、今年は飛ぶことができるのでしょうか。
飛び込む子どもたちを、じっと見つめる人がいました。

この町で生まれ育った河合一憲(かわあい・かずのり)さん、25歳です。

河合一憲さん
「よみがえってきましたね。」

10年ぶりに、この川で飛び込みに挑戦したいと考えています。

河合さんは、小学5年生でいち早く橋から飛び込み、一躍、人気者になりました。




 

高校卒業後は、都会への憧れから名古屋にでて、建設会社に就職。
しかし、仕事の厳しさと対人関係の悩みから体調を崩してしまいました。



 

去年(2015年)の秋、郡上八幡に戻り、実家の塗装業を手伝い始めましたが…。




 

河合一憲さん
「(ペンキが)目に入った、痛い。」



 

慣れない仕事で失敗続き。
この先やっていけるのか、自信が持てません。

河合さんの楽しみは、子どものころ川で遊んだ仲間たちとのひととき。
集まると、いつも飛び込みの話で盛り上がります。
この日、河合さんの話しになりました。

「一憲、学校橋飛んだもんな。」

河合一憲さん
「飛んだ。」

「学校橋飛んだの?」

「普通に飛んだ?
時間かかった?」

河合一憲さん
「時間かかったね。
やっぱり怖いもんね、あの一歩が。」

橋から飛び込めた数少ない1人だった、河合さん。
みんなから勇気を認められたことを思い出しました。

仕事休みの日曜日。
河合さんは友人とともに川を訪れました。
もう一度、飛び込むことで自信を取り戻したいと考えたのです。
しかし…。

 

河合一憲さん
「やっぱりちょっと怖い。」

橋から飛び込む勇気がでません。

今の自分ができるところから始めよう。
河合さんが向かったのは、高さ6メートルの岩。
10年ぶりに挑戦する飛び込みです。


 

河合一憲さん
「どうしても足がすくんじゃう。




そこを踏み出していかなくちゃいけない。」




 

河合一憲さん
「怖かったけど、楽しかった。
なんか吹っ切れた気がします。」


 

子どもの時は飛べた、あの橋。
今はだめでも、いつか挑戦したいと考えています。

河合一憲さん
「今後この町で暮らしていく、仕事をしていく、そういったことに重なってくるので、いつか本当に覚悟と勇気が持てたら、ここから改めて飛んでみないなって思います」


 

橋から飛び込めなかった、たっちゃんです。
挑戦はまだ続いていました。



 

たっちゃん
「アドバイスお願い。」

凰牙くん
「こわがらないこと。」

たっちゃん
「あとは?」

凰牙くん
「気持ち気持ち。」

たっちゃん
「気持ちの問題?」

凰牙くん
「5、4、3…。」

たっちゃん
「OK!」

この日10回目の挑戦で、ついに成功。

たっちゃん
「尻いてぇ。」

凰牙くん
「よし、もう一回行くか。」

仲間に支えられて、今日から一人前の男です。
怖さに打ち勝って、飛び込んだ子どもたち。
一歩踏み出す勇気を心に刻んだ夏です。

 

和久田
「たっちゃん、ついに勇気を出せましたね。
背中にちょっとだけ自信が見えたような気がしましたね。」

望月
「子どもたちにとってはまさに夢への大ジャンプという感じにも見えますよね。
そして大人にとっては、子ども時代の、がむしゃらで勢いのあった原点を思い出すきっかけにもなっているかもしれませんね。」

和久田
「ただ一方で、河合さんのように、大人になると昔のように思い切った一歩を踏み出せないという気持ちもわかりますよね。
この川飛び込みですが、地元の人たちは『慣れていない人は、むやみに川に飛び込まないようにしてほしい』と話していました。」

<関連リンク>
夏点描 夜空彩る精霊(しょうろう)送り
夏点描 ラジオ体操 達人の夏
夏点描 人文字「ありがとう」に込めた思い
夏点描 夏限定 町の手作りお化け屋敷
夏点描 トナカイよ 泳げ!

Page Top