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2016年8月23日(火)

夏点描 夜空彩る精霊(しょうろう)送り

和久田
「みなさんはこの夏、どんな思い出を作ったでしょうか。
今日(23日)から『夏点描』と題して、各地の夏の表情をシリーズでスケッチしていきます。」


望月
「1回目の今日の舞台は、福岡県八女市です。
夏の夜空を彩る幻想的な光の数々。
実は、一つ一つが和紙で作られた灯篭なんです。」

和久田
「亡くなった人をしのぶ、お盆の精霊(しょうろう)送りです。
明かりを故人の魂に見立てて、思いをはせます。
灯篭が放つ、やわらかでどこか懐かしい光。
どんな思いで見つめたのでしょうか。」

夏点描 夜空彩る精霊送り

リポート:長山剛(福岡局)

福岡県八女市・黒木町大淵です。
およそ1,200人が暮らしています。
過疎化が進み、担い手不足から恒例だった夏祭りも30年前に途絶えました。



精霊送りが始まったのは3年前。
ふるさとを離れた人が、お盆の時期に戻ってくるきっかけを作りたいと、地元の住民グループが始めました。
今年(2016年)は、この地域にゆかりのある人を中心に、家族や大切な人を亡くした50組が参加することになっています。

精霊送りに参加する1人、鴻江かよ子(こうのえ・かよこ)さんです。
地元の宿泊施設の食堂で働いています。
去年(2015年)、夫を肺炎で亡くし、初盆を迎えます。



40年間連れ添った夫の恒雄(つねお)さん。
性格は頑固で真面目。
働き者で、子どもにも恵まれました。



鴻江かよ子さん
「仕事に対しても遊びに対しても、本当に何事に対しても一生懸命向かっていく。
そういうところが大好きだった。」



亡くなって1年。
精霊送りに参加しようと思ったのは、夫と過ごした日々を見つめ直したいと考えたからです。

20年前に脳いっ血で倒れ、車いすでの生活を余儀なくされた恒雄さん。
かよ子さんは、夫の介護に専念したいとずっと思いながらも、家計を支えるために仕事で家を空けることが多かったといいます。




鴻江かよ子さん
「車いすで行ってたから、畳ぐじゃぐじゃ。」

寝室には、あちこちに車いすの傷があります。
かよ子さんがいないときに、夫が1人で身の回りのことをしようとしていたあとです。

鴻江かよ子さん
「傷ですか。
頑張ってたんだろうなって、今思うと。
きつかったろうなって思うけど。
もうちょっとこのまま(修理せずに)おいておこうかなって思っています。」

もっと夫のそばにいてあげられなかったのか。
恒雄さんが亡くなってから、その思いが頭から離れません。
精霊送りでは、亡くなった人へのメッセージが読み上げられます。

鴻江かよ子さん
「何て書こうかな。」

どんな思いを伝えればいいのか。
離れて暮らす子どもに相談することにしました。

鴻江かよ子さん
「何て書いたらいいと思う?」




なかなか言葉が見つかりません。

鴻江かよ子さん
「思いはいっぱいあるんですけど、仏壇に向かって報告をしたり、お願いごとをすることはあるんですけど、改めてメッセージということになると、なかなか文章として出てこない。」

精霊送り当日。
お盆に合わせて帰省した人たちも集まってきました。
それぞれの家族が灯篭を空に飛ばすと、メッセージが紹介されます。



“ばあちゃんが作るそうめんのつゆは絶品でした。
ママが一生懸命作るのですが、ばあちゃんのつゆにはかないません。




食べたいなあ。
これからもずっと見守っていてね。”




“おばあちゃんが亡くなって、もう3年になります。
今月の27日に結婚式をあげます。
花嫁姿を見せてあげられないことがすごく残念だけど、当日は会場にいてくれると思ってるからね。”



かよ子さんは、まだ夫に送るメッセージを書けていません。

離れて暮らす子どもたちが、かけつけました。

鴻江かよ子さん
「沙希が書いて。
じゃあ代表して俊が書いて。」


かよ子さんが言葉にできなかった夫への思いを、2人の苦労をずっと見てきた子どもたちが代わりに考えてきてくれました。





鴻江かよ子さん
「ありがとう、いいよこれで。」




恒雄さんの灯篭の番です。

“お父さん。
こっちはみんな元気でやってるよ。




闘病生活20年。
けんかもしたけど、本当によくがんばったよね。
おつかれさまです。
でも、やっぱりまださみしいですよ。
そっちはどうですか。

あまのじゃくだから、決してさみしいとは言わないんでしょうね。
お父さんらしくていいけどね。
こっちのこと、よーく見守っててくださいね。
よろしくお願いします。”


かよ子さんが一番伝えたかった、闘病生活へのねぎらいを言葉にすることができました。

鴻江かよ子さん
「主人に対する感謝と、思い出と、そんなものが入り交じって。
そういうことを再確認できて本当によかった。」



夏の夜空を彩る精霊送り。
残された家族を優しく照らす、灯篭の明かりです。



望月
「鴻江さんご家族のメッセージ、きっと届いたでしょうね。
この日に向けて、ひと夏準備をしていく時間というのも、家族の絆を確認する貴重な機会になったのではと思いました。」

和久田
「大切な時間なんですね。
主催者によると、この精霊送りに参加する家族は年々増えていて、お盆に家族が集まる場として今後も続けていきたいということです。」

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