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2016年8月5日(金)

寅さんに憧れる若者たち

望月
「今も輝き続ける、あの国民的映画です。」

昨夜、都内で行われた「男はつらいよ」の特別上映会。
主人公の寅さんを演じた、渥美清(あつみ・きよし)さんの命日をしのんで企画されました。
会場には、監督の山田洋次(やまだ・ようじ)さんや、妹役の倍賞千恵子(ばいしょう・ちえこ)さんらが駆けつけました。

倍賞千恵子さん
「わたし個人は、ああいう男の人がいて結婚を申し込まれたら、“はい”ってついて行っちゃうくらい、寅さんの人間像が好き。」




会場で目立ったのは、映画館で寅さんを見たことがないという若い世代です。

来場者
「好きな時に好きな所に行って、(寅さんのような)自由なところが、ぼくらの世代にはない。」

来場者
「熱くて女性にすごく優しい。
男らしさを感じて、大好きです。」

世代を超えて愛され続ける寅さん。
その魅力とは…。

望月
「こちらの音楽でおなじみの映画、『男はつらいよ』。
主人公の寅さんを演じた俳優・渥美清さんが亡くなって、20年になります。
映画が初めて上映されたのは1969年。
以来48作が公開され、広く愛されてきました。」

和久田
「今、この映画の魅力に改めて注目しているのが、20代や30代の若い世代です。
当時を知らない若者たちの間で、なぜ寅さんへの共感が広がっているのか取材しました。」

寅さんに憧れる若者たち

リポート:森田智子(おはよう日本)

経済成長の真っ只中。
定職に就くことなく、旅を続ける寅さん。
時代に流されることなく、我が道を行く自由な生き様が、多くの人の心を掴んできました。

『男はつらいよ 寅次郎物語』より
“おじさん、人間は何のために生きているのかな?”

“生まれてきてよかったなって思うことが、何べんかあるじゃない。
そのために人間生きているんじゃないのか?”

寅さんの言葉に励まされてきたという、森美穂(もり・みほ)さんです。
すべての作品のDVDや関連の本を購入し、寅さんに浸る時間を大切にしています。

森美穂さん
「誰もが認める、誰もがいいなと羨む生き方ではない。
みんなに愛されている、必要とされている。
すごく憧れます。」

寅さんに夢中になったきっかけは、10年前。
就職活動に苦戦し、思い描いていたような仕事に就けなかったことでした。
契約社員として雇用され、将来に不安を感じていた日々。
そんな時に出会ったのが、寅さんの言葉です。

『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』より
“やっぱり真面目にね、こつこつこつこつやっていきゃ、いつか芽が出るんだから。”

『男はつらいよ 寅次郎物語』より
“大丈夫だよ、まだ若いんだし。
これからいい事いっぱい待ってるよ、な!”

世間の評価にとらわれず、ひょうひょうと、前向きに生きる寅さんの姿に気持ちが楽になったといいます。

森美穂さん
「今はつらいけど、いつか良い状態の日がくる。
前向きな気持ちに少しなれたり、契約社員とはいえ、“会社に残ってほしい”と言われるくらい頑張ろうと思った。」

今、森さんは正社員に登用され、30人以上の部下をまとめる立場です。
目指す上司像は、寅さん。
「すべてをうまくこなさなくてもいい」と伝えるよう心がけています。

森美穂さん
「“100点の自分でいなくては”と考えている人がすごく多い。
困った時に頼れる人になりたい。」

寅さんの生き様から、人との関わり方を学んだという男性もいます。
葛飾区にある寅さん記念館。

毎月のように訪れている、落合良平(おちあい・りょうへい)さんです。





正面から人と向き合うその生き方にあこがれ、首からはいつも寅さんと同じお守りを下げています。

落合良平さん
「人に対してこう接するべきだとか、思いやりが大切だということを、映画を通して教えられている感じがして、すごく好きです。」

落合さんの心をとらえたのは、おせっかいでも、人と深く関わっていく寅さんの姿です。

落合良平さん
「この時代は“空気を読む”というのがあって、がつがつ(本音が)言えなかったりしたけど、寅さんを見て、自分の思ったことを伝えることが大切だと思った。」



来年、結婚を予定している落合さん。
新たな家庭では、時にはぶつかりながらも本音で向き合う、寅さんのような存在でありたいと思っています。

落合良平さん
「寅さんだったらこうするとか考えながら、コミュニケーションを取りつつ、家族の団らんを築いていきたい。」

寅さんにひかれる現代の若者たち。
寅さんならどんな言葉をかけるのか、山田監督に聞きました。

山田洋次監督
「寅さんに憧れるなんて。
寅さんに言うとびっくりするかもしれないね、“俺なんかに憧れてどうするんだ”って。
寅さんはときどき、若者に向かって“おい青年!”と呼びかけたのね。
青年の未熟さと、青年に託された希望と、2つが一緒になっている。
ぼくは今、若者に“おい青年がんばれよ”と言いたいですね。
この国の未来は君たちが決めるんだ。」


望月
「『男はつらいよ』とは無縁のように見える若い2人が、寅さんに夢中になっている姿には驚きましたが、肩には力が入ってないけれど熱いところがある、寅さんの人柄にひかれているのかもしれませんね。」

和久田
「私も映画館では見たことがない世代ですが、ぜひ寅さんの人間味に触れてみたいと感じましたね。
山田監督は、『自由に生きる寅さんが見直されている背景には、今の社会に窮屈さを感じている若者の心が写し出されているのではないか』と話していました。」

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