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2016年7月19日(火)

教員の長時間労働 改善に向けて

阿部
「学校の先生たちの負担をどう減らすのかについてです。」

和久田
「こちらは、学校の教員の残業時間の変化です。
昭和41年度は、月平均およそ8時間だったのに対し、平成18年度は、およそ42時間と、5倍以上に増えています。

背景には、特別な支援が求められる生徒や外国人生徒の増加。
不登校やいじめ、虐待への対応など、以前と比べ、学校現場が抱える課題が多様化していることがあげられます。」


 

阿部
「こうした中、教員の長時間労働の解消に向けて、今、議論が起きているのが『部活動』の指導をどうするかです。
そもそも部活動は、教員が必ずしも指導の義務を負うものではないと位置づけられていて、教員の業務が増える中、その指導の負担を減らすべきという声が上がっているのです。
今、教員たちはどのような状況に置かれているのか取材しました。」

教員の長時間労働 その現状

リポート:餌取慎吾(おはよう日本)

中部地方の公立中学校で国語を教えている、中村先生です。
以前務めていた学校で、次々と増える仕事に追われ、生徒としっかり向き合えない、つらい経験をしたと言います。

中学校教諭 中村さん(仮名)
「これは僕の出退勤記録です。」
 

当時の1か月の出退勤表です。
1日の平均勤務時間は14時間。

忙しい日は、朝の7時40分から深夜1時まで。
勤務時間は、17時間を超えました。



 

放課後、翌日の授業準備のほかにも、国や県などに提出するさまざまな報告書や、保護者に向けたプリントの作成。
風邪で欠席した生徒の自宅に電話をかけ、体調の確認なども行います。
さらに増えてきたのが、新たな課題への対応です。
ネットやSNSを生徒たちが頻繁に利用する中、被害に巻き込まれないよう目配りしたり、トラブルに対処したりする仕事が増えたのです。

中学校教諭 中村さん(仮名)
「(生徒の)問題行動がSNSにもぐってしまって、例えば誰かの悪口を書いたとか、そういうのをひとつひとつ、放課後に(生徒を)残して話を聞いて、事実だったら保護者に連絡して指導する。
そういうことも増えてきています。」

業務が増える中、少しでも時間を作り、授業の準備にあてたい。
そう考える中村先生にとって、負担になってきたのが部活動の指導でした。

平日は、朝の練習を含め3時間あまり。

さらに土曜日と日曜日には、試合や大会が集中。
1日4時間以上で、3,000円の手当は出るものの、休みをとれない状態が続きました。
忙しい月の残業時間は、185時間にも及びました。
授業の質にも影響が出始めます。
 

生徒の理解をより深めるために自主的に作っていたプリント。
こうした丁寧な授業の準備に手が回らなくなってしまったのです。

中学校教諭 中村さん(仮名)
「自分で言うのも情けないですけど、全然だめだなと。
もうちょっと余裕があれば、授業の準備をしっかりして、楽しくて分かりやすい授業ができるはず。」
 

本来の教員の仕事に手が回らない現状を改善してほしい。
公立中学校の教員たちが、去年(2015年)12月、サイトを立ち上げ、署名を呼びかけました。

教員を中心に集まった署名の数は、2万3,000以上。
今年(2016年)3月、文部科学省に提出されました。



 

厳しい勤務に追い込まれている教員たち。
こうした状況は、子どもたちのためにも望ましくないという訴えが多く寄せられました。
しかし教員たちにとって、部活動の負担を減らすことは簡単ではありません。
 

署名をした1人、ソフトテニス部の顧問をしている先生です。
クラスの運営や生徒の指導にもっと力を入れたいと、週6日の部活動を週4日に減らしました。
ところが、保護者から反発され、なかなか理解してもらえなかったといいます。
休日にも部活動をしたいと子どもが望んだら、教員はその期待に応えるべきだというのです。

中学校教諭
「“なんでそんなに頻度を落とすのか”。
“うちの子は(試合に)勝ちたいと思っている”。
(保護者から)直接、携帯電話に連絡がくる。」

部活動の指導による教員の負担を減らすため、先月(6月)文部科学省は中学校の部活動に休養日を設けることや、外部指導員の配置を促す新たな指針を策定することを決めました。


 

文部科学省 初等中等教育局 木村直人参事官
「先生方が取り組まなきゃならない課題が非常に多くなってきている。
教員が子どもとしっかり向き合う時間を確保する手だてを考えないといけない。」

教員の長時間労働 改善の試み

こうした中、自治体レベルで教員たちの負担を減らそうという取り組みも始まっています。

東京・杉並区の中学校です。




 

ソフトテニス部では週2回、民間企業やNPOから派遣された外部のコーチが部活動の指導にあたっています。
技術面での指導を充実させた上で、教員の負担を減らすことも目指しています。

 

顧問の甲斐俊哉先生です。
部活動の指導を任せている間に、テストの採点など、本来の業務に時間を割けるようになりました。


 

杉並区が今年度から本格的に始めた、この取り組み。
区の教育委員会が、スポーツクラブなどと契約を結び、コーチを確保。
そして、それぞれの学校からの要請に応じて、コーチを派遣する仕組みです。
甲斐先生は、職員会議などで特に忙しい水曜日と、休日の確保のため、土曜日に部活動の指導を任せています。
捻出した時間を使って、生徒と話す機会を多く持ったり、時間をかけて相談にのったりできるようになったと言います。

杉並区立松渓中学校 甲斐俊哉先生
「コーチがついてくれるから、きょうは仕事に集中しよう、(部活動の指導と)一線引ける。
こちらが余裕ができたからこそ、受けとめてあげられる。
すごく関係がよくなっていると思います。」
 

杉並区がこの取り組みに計上した予算は、年間3,000万円。

現在、区内23校のうち17校がこの制度を取り入れており、希望する学校は年々増えています。



 

杉並区 教育委員会 小林淳係長
「コーチに任せて自分は専門の教科に専念する。
その仕組みが入り込むことで、学校全体の教育力が高まると考えている。」
 

阿部
「教員の負担を軽減するため、こうした部活動の指導の一部を外部に委託する取り組みは、杉並区のほかに、大阪市などでも行われています。」

和久田
「ほかにも、文部科学省は教員の長時間労働の改善に向け、省内に専門の対策室を設置し、全国の自治体にアドバイザーを派遣するなどの方針を決めました。」

阿部
「こうした取り組みを通じて、子どもたちにとって、より良い学びの場を守ることが求められています。」