これまでの放送

2016年7月15日(金)

なぜ?“マタニティマークつけづらい”

和久田
「こちらのマーク、見かけたことがあるかもしれません。
特に、お腹が目立たない妊娠初期に、周囲に配慮を求めるためにつける『マタニティマーク』です。」

 

阿部
「10年前、厚生労働省がデザインを公募してマークを作り、現在、自治体が母子手帳を交付する時などに配布しています。」

和久田
「しかし今、妊婦たちからは『マタニティマークをつけづらい』という声が上がっていて、中には、つけることをやめたという人も出てきています。」

マタニティマークつけると危険? 妊娠中の女性から不安の声

リポート:飯田暁子(報道局)

妊娠6か月の山下実穂さんです。
母子手帳と共に、自治体の窓口でマタニティマークをもらいました。
妊娠初期はつわりがひどく、体調もすぐれなかったこともあり、バスや電車でマークをつけています。

 

山下実穂さん
「やっぱり立っているとしんどいので、座れるといいなという気持ちで。」


 

しかし最近、本当にマークをつけた方がいいのか悩んでいます。

山下実穂さん
「こういうのがありますね。」

「マタニティマーク」とインターネットで検索すると。

“電車で年配の女性ににらまれ、お腹を殴られたそうです。”

“妊婦が電車なんか乗るなよと言われた。”

事実かどうかはわかりませんが、不安を感じさせる情報ばかりが出ていたからです。

山下実穂さん
「怖いですね。
いいニュースよりも悪いニュースを聞くことのほうが多くて、単純に怖いな、悲しいなと思います。」

マタニティマークへの不安の声は、多くの妊婦の間に広がっています。

妊婦向けの雑誌を出版している会社です。




 

5年前から雑誌の付録として、マタニティマークを付けてきました。
ここにも、読者からはこんな声が。



 

“妊娠していることを強調すると狙われると聞いた。”

“わざとぶつかられたという噂を聞いた。”

こうした声を受けて、出版社では従来のマークのデザインを変更。

今年(2016年)1月号の付録では、裏返すとマタニティマークだと分からないように。



 

さらに、今月(7月)号の付録では、マークの大きさをこれまでのおよそ半分にしました。
編集長の尾花晶さんは、最近の保育園の騒音問題など、育児への厳しい視線がある中で、妊婦たちが過剰に萎縮していると感じています。

妊婦向け雑誌編集長 尾花晶さん
「子連れでも(周囲からの)目が厳しいと聞くんですけど、特に妊婦さんは、まだ子どもを授かったばかりの時に、周りに迷惑にならないように過剰に気にしているのではないかと思います。」

“目立たないように隠す” マタニティマーク なぜ?

目立たせたくないマークを、なぜ女性たちはつけるのでしょうか。

2か月前に出産した新村晶子さんです。
通勤中は、マークを見えないように隠していたという新村さん。
マークは、席を譲って欲しいと配慮を求めるためのものではなく、いざという時のお守り代わりだったと言います。

 

新村晶子さん
「倒れたときに周りの方が、このマークに気づいたら、お腹に赤ちゃんがいるとわかって、対応策が変わるのかなと。」

唯一、マークを表に出したのは、こんな時でした。

新村晶子さん
「優先席に座っていると、お年寄りがじっと見てきたりするので、マークが見える形で、膝の前に持ってました。」

こうした中、医師は、妊娠初期のお腹が目立たない時のためのマークであるという本来の趣旨を周囲も妊婦自身も再認識すべきだと言います。

産婦人科医 善方裕美さん
「妊婦さんだと特に、おなかの方に血液を集めようとする。
脳の方の血流が減ったりとか、血圧が下がって、倒れてしまう。」

妊娠初期は特に、立ち続けていることで脳の血圧が下がり、倒れてしまうリスクがあるからです。
 

産婦人科医 善方裕美さん
「実は(妊娠)初期が一番しんどい。
妊婦だから守れとか、甘えさせてくれという感情論ではなくて、(マークには)医学的に理由があるので、妊婦さんたちにも、周りの方にも知ってほしい。」

見かけたらどうする? マタニティマーク

阿部
「取材した飯田記者です。
マタニティマークをつけることをためらう現状があるというのは驚きましたし、なんだか切ないですね。」

飯田暁子記者(報道局)
「ネットに書かれていたこと、これは事実かどうかはわかりません。
しかし、こうした情報が飛び交う中で、今回、取材した多くの女性が、ネットの情報というのを信じてしまっていて、マークを付けることに対して不安を感じていました。
中には、実際につけるのをやめてしまったという方もいました。」

和久田
「普段は隠しているという方もいらっしゃいましたが、妊婦の人達がどうしてそこまで萎縮してしまうんでしょうか?」

飯田記者
「子育てに詳しい専門家は、次のように話しています。」

玉川学大学大学院 大豆生田啓友(おおまめうだ・ひろとも)教授
「妊娠中の人も、(電車で)座っている人たちも疲れているということまで思ってしまう。
なかなか自分の事を優先して言い出しにくい。
(マタニティマークを)前面に出していいのか、葛藤の中で電車に乗っているのではないか。」

飯田記者
「実際に、このマークについて、いろいろな人に声を聞いてみました。
『マークを知らなかった』ですとか、『聞いたことはあるけれども、見たことはなかった』という方もいらっしゃるんですけれども、マークを知っている方の中にも『譲りたいけれども、すごく疲れていると迷ってしまうことがあるかもしれない』という方や、『自分も疲れている“徹夜明け”の時に、そういったマークがほしい』という10代の女性もいました。」

阿部
「いろんな立場の人がいますよね。」

飯田記者
「今、妊娠している方たちの多くは、社会人として働いた経験があります。
なので、みなさんが疲れているということを分かっているだけに、自分だけが配慮してもらうというのは心苦しいんだという気持ちが強いのだと思います。
ただ、妊娠中の女性は、医学的に配慮が必要です。
マークができて10年の今、不安に思う妊婦さんがこれだけいるという現実を受け止めて、なぜ、このマークがあるのか、その意味をもう一度考えることが大切なのではないかと思いました。」

阿部
「そして、普段から周りをきちんと思いやれる余裕も持ちたいですよね。」