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2016年7月14日(木)

なぜ進まない 外国人留学生の「就職」

阿部
「私たちの将来にも関係する、この人たちについてです。」

柴崎
「日本各地の大学で、留学生の数が増えています。
この大学でも、あちこちに外国人の姿が見えます。」

去年(2015年)20万人を突破し、増え続ける外国人留学生。

外国人留学生
「日本で勉強するの大好き!」



 

背景にあるのが、国が8年前から進めてきた「留学生30万人計画」です。

留学生を呼び込むために、英語だけで学位を取れるコースや、快適な留学生寮の拡充などを進めてきました。
国は留学生政策に、少なくとも3,700億円を投入しています。
その目的とは?

和久田
「取材した柴崎アナウンサーです。
どうして国は、ここまでして留学生を呼び込もうとしているんでしょうか?」

柴崎
「少子高齢化に直面している日本にとって、欠かせないと考えているからなんです。


 

これは、日本の労働力の中心になる『生産年齢人口』なんですが、20年後には2割減少します。
さらに、40年後には、なんと現在の6割程度にまで少なくなってしまうんです。

 

人数もこうなります。」

阿部
「5,000万人を下回ってしまうんですね。」


 

柴崎
「女性や高齢者の働く環境を整えても、なお、賄いきれない部分、その部分を担ってもらおうというのが、こちら。
外国人留学生です。
卒業後に、日本で就職してもらい、日本の活力を高めてもらおうと考えているんです。
こうした高度な外国人人材というのは、世界規模の獲得競争になっていまして、日本が取り残されるわけにはいかないんです。
ところが、せっかく迎えた留学生の日本での「就職」が進んでいない実態があるんです。」

日本で就職しない 外国人留学生

日本で学ぶ外国人留学生。
実はその多くが、卒業後も日本で働くことを希望しています。

日本での就職希望者は、博士課程で56%、学部卒で70%に及びます。
しかし、実際に日本で就職するのは、博士課程では18%、学部で30%ほどにとどまります。

3,000人の留学生が学ぶ東京大学。
日本ではなく、海外での就職を考える学生も多くいます。



 

その1人、教養学部3年のヘレン・チャンさん。
台湾出身です。
今、アメリカのサマースクールに参加しているヘレンさん。
インターネットを使って、日本での就職について聞きました。

 

東京大学3年 ヘレン・チャンさん
「説明会や面接にも、行きました。
でも、日本での就職活動を続ける意欲が、なくなってしまったんです。」


 

日本での暮らしが気に入り、国内のコンサルタント会社への就職を希望していたヘレンさん。
しかし、就職活動で思わぬ壁にぶつかったと言います。

東京大学3年 ヘレン・チャンさん
「英語で行う授業に集中していた。
日本語を学ぶ時間は、あまりなかった。 日本企業が求めるレベルの日本語を話すことができないんです。」

ヘレンさんが入学したのは、英語だけで学位が取れるコース。
日本語を使う時間は限られます。

国は今、留学生を呼び込むために、英語で学位が取れる学校を全国50校以上に拡大しました。
しかし企業は、外国人を雇用する際、高い日本語能力を重視しています。

人事担当者
「社員が皆、英語が出来るわけではないので、日本語力は、一定以上求めている。」


 

国の進める留学生政策と、企業の求める外国人人材の間で、ミスマッチが起きているのです。
ヘレンさんは今後、アメリカの大学院に進学し、海外で就職することを目指しています。

東京大学3年 ヘレン・チャンさん
「日本の文化に合わせるのは難しい。
新しい環境の中で、チャレンジしたい。」

文部科学省の担当者は、国費をかけて育てた留学生が、外国に流出してしまう事態に対策が必要だと言います。

文部科学省 高等教育局 井上諭一課長
「留学生の考えも、よく聞くというところで、企業も工夫できる部分がある。
企業と学生のマッチングの仕組みをつくることを、何か考えられないかと思う。」

“就職できない” 外国人留学生の苦悩

留学生の就職活動には、もう1つ大きな壁があります。
外国人が働く際に必要な「就労ビザ」の問題です。

日本での就職を目指す留学生が数多く訪れる「外国人雇用サービスセンター」です。
センターの相談員は、留学生は職種を絞らないと、就労ビザが得られない可能性があると伝えています。

 

相談員
「設計は、大学で学んだことと関連性がないから(ビザが)難しい。」

外国人留学生
「ビザおりない?」

相談員
「審査されますから、難しいかもしれません。」

入国管理局は、留学生が卒業後、日本企業に就職しようとする場合、学校での「専攻」と、就職先での「業務」が関連していることを、就労ビザの認定要件の1つとしています。


 

慎重に審査した結果「関連性」がないと見なされると、就労ビザが認められない場合があるのです。



 

東京外国人雇用サービスセンター 梅田亜紀室長
「あくまで、大学で学んだ専門知識をいかせる職業じゃないといけない。
(留学生は)職種がある程度、限定されてしまう。」


 

同じ時期に、一斉に就職活動を行う日本独自のスタイルも留学生を戸惑わせています。

「勝手に、座らないように。
日本って、そういう礼儀作法、よく見てますから。」

 

都内の大学院で学ぶ、中国出身の李穆(り・ぼく)さんです。
出版などのコンテンツ業界に就職したいと考えています。



 

李さんが苦戦しているのが、大量の応募者を見極めるために多くの企業が取り入れている、インターネットによる学力検査です。
合格しなければ、履歴書さえも受けとってもらえない現実。
李さんは、こうした仕組みも、留学生の日本での就職を妨げていると感じています。

大学院2年 李穆さん
「どんなふうに、自分をPRしたらいいのか分からない。
本当に、心が折れますね。」

留学生の就職 溝を埋めるには?

阿部
「みていますと、外国人留学生を増やしたい国と、企業の採用状況にはギャップがあるようですね。」

柴崎
「留学生が増えているほどには、企業側の採用意欲は高まっていないというのが現実なんです。
高度な技能を持つ外国人をどうやって生かしていけばいいのか、また、どう処遇したらいいのかなど、まだまだ受け入れ体制が整っていない企業が多いんです。」

和久田
「では、企業と留学生の溝を埋めるには、どうしたらいいのでしょうか?」

柴崎
「有効だとされているのが、留学生の職場体験・インターンシップです。
職場で一緒に働いてみることで、語学力以外の、外国人ならではの価値観や発想力などに気付く機会になるんです。
留学生が増えている今、高度な外国人人材を定着させる有効な手立てというのを考えていかなければいけないと感じました。」