これまでの放送

2016年7月12日(火)

棋士・井山裕太 常に心がけていることは

阿部
「今、囲碁の世界に新しい風が吹いています。」

今年(2016年)4月、囲碁で史上初めて7大タイトル独占を達成した、棋士の井山裕太さん。

 

先週末、東京で開かれた、男女でペアを組んで対局する囲碁の国際大会。
井山さんは、日本代表として参加。
世界のトップ棋士たちとハイレベルな頭脳戦を繰り広げました。
今、井山さんに憧れ、囲碁を始める若者が増えています。

 

「(囲碁始めて)1か月ぐらい、楽しいです。」

「七冠をどこまで維持するのか楽しみ。」



 

変化することをいとわず、自分の力にすることができるのが、井山さんの強みです。

井山裕太さん
「少しでも成長していたいという思いは常にある。
怖がらずに未知の世界にどんどん踏み込んでいく。」


 

新境地を語りました。

和久田
「ここからは、望月アナウンサーとお伝えします。」

阿部
「望月さんが、井山さんに話を聞いてきたんですよね。」

望月
「そうです。
井山裕太さん、現在27歳。
若いですよね。
こちらの7つのタイトルすべてでチャンピオンになっているんです。
今、井山さんはこれらのタイトルの防衛戦に臨んでいるところなんです。
日々、勝つか負けるかの厳しい世界に身を置いている井山さんに、常に心がけていることを聞きました。」

望月
「七冠を達成して、目指すべき景色というのは変わりましたか?」

井山裕太さん
「もちろん、大きな目標ではあったんですけれども、やはり次の対局が始まってしまえば、もうそのことで精いっぱいですし、七冠になった人間というか、男としてみられることで、今まで以上に責任感と言いますか、できれば恥ずかしい戦いはしたくない、いい戦いがしたいという思いは少し強くなったかもしれないですね。」

今や、追われる立場となった井山さん。
いつタイトルを奪われるか分からないという緊張感の中で、1局1局を戦っています。


 

先月(6月)末、「本因坊戦」を4勝1敗で防衛。



 

井山裕太さん
「『目の前の1局を』精いっぱいやるということ、変わらず今後もやっていきたい。」

井山裕太 七冠 「失敗から学ぶ」

井山さんが囲碁を始めたのは、5歳の時。
きっかけはゲームでした。



 

小学校に入ると石井邦生九段に弟子入り。
対局で負けるたびに泣いていた井山さんに、石井さんはあることを伝えました。

井山裕太さん
「当時は、よく涙を流している子どもでしたけど、それだけでは何回打っても、何万回打っても強くなれないと。
なぜ負けたのかを検証したり、反省したり、そういうことがないと、それ以上の進歩はないよと。」

それ以来、井山さんはすべての対局を書き起こし、自分の弱点を分析するようになりました。
同じミスを繰り返さないため、どこが悪かったのか、自分で考えるくせを身につけたのです。
『失敗した時こそ学ぶことが多い』。
井山さんは、この習慣を七冠をとった現在も続けています。

井山裕太さん
「人間、勝っている時とか、順調に行っている時というのは、結果が出ていますので、楽しくというか、充実してできると思うんですけど、その点、負けた方が、なぜ負けたかということを検証していく中で、自分の至らなかった点とか、だめだった点が非常に見えやすくて、ある意味では負けた時とか、苦しい時に、しっかりやれていれば、うまくいかせれば、その前より成長できるんじゃないかなと思います。」

井山裕太 七冠 「自分を信じる」

そうした井山さんの成長を間近で見てきた棋士がいます。
高尾紳路九段です。



 

高尾さんは「名人」や「十段」など、4つのタイトルを獲得したトップ棋士の1人。
井山さんと10年以上に渡り、タイトル争いを繰り広げてきました。


 

先月、井山さんと対局した高尾さんは、これまでと違い、攻めに迷いがなくなったように感じたと言います。

高尾紳路さん
「かなり決断が早かったのには驚かされた。
井山さんが早く打つからには、何か対策があるんじゃないかと迷ってしまい、向こうの迫力に押されたと言うか。
『七冠』というものが一つの自信となって、それが盤上にも盤外にも現れているという印象を受けた。」
 

七冠を獲得していくうちに、井山さんは『自分自身を信じる』ことが悔いを残さない対局になると学んだといいます。

井山裕太さん
「対局中は、特に囲碁というのは1対1の勝負ですので、本当に誰も助けてくれないわけですね。
自分自身で、もう何とかするしかないわけですから、自分にある程度自信を持って、自分の力をちゃんと出せば、誰とやっても勝てるんだというくらいの強い気持ちを、対局中はどこかで持っていないといけないと思うので。」

望月
「攻めと守りだったら、やっぱり攻めなんですか?」

井山裕太さん
「厳しい相手との戦いを経験する中で、攻める部分、勝負するところは勝負するというところがないと勝てないなと思ったので、そういうところに行き着いたと言いますか、どんどん自分に自信を持って勝負していこうと。
自分が負けても、これだけやったんだからしょうがないとか、そういうように納得できるぐらいに、今なれているとは言えないですけれども、技術的なことだけではなくて、心技体とよく言いますけど、いろんな面でもっと強くなっていきたいというのがあります。
哲学というか、何というか難しいですけれども、そういう思いではいますね。」

井山裕太 七冠 共感する若者

「自分自身を信じて、攻め続ける」という井山さんの姿勢に共感する人たちが現れています。

望月
「最近、囲碁ファンでにぎわっているというお店にやってきました。」

東京・新橋にある「囲碁喫茶」。
この2か月で若者が15人、入会しました。
その多くは、井山さんの考えに近づくことで、就職活動やビジネスシーンにいかしたいと考えています。
 

大学生
「大舞台で思い切った手を打てる。
どんどん探求していく。
それを実際の勝負の場でやる。」

 

「1個のタイトルをとるのもすごい。
それを維持する精神力と体力がすばらしい。」

井山裕太 七冠 「変化も成長の糧に」

さらに、囲碁の世界を巡る新しい変化も、井山さんは自らの成長の糧にしようとしています。

人工知能の開発にともなって、囲碁の対局ができるようになったコンピューター。
今年3月、韓国のトップ棋士に勝利するなど、人工知能が人間を超えようとしています。
こうした急速な時代の変化に対して、井山さんは『怖がらずに向き合うことが大事』と考えています。

井山裕太さん
「強敵が出てきたというのは大変な面がありますけど、新たな考え方を示してくれたり、与えてくれたりという存在でもあると思っているので、私はそんなに悲観はしていない。
むしろ得るものも大きいかなと思っている。
未知の世界というのは、やっぱり怖い。
そこに踏み込んでいくのは、けっこう怖いことだと思いますけど、リスクもありますし。
ただ、やってみないとわからないことは多いと思うので、意味があったなとか、うまく生かせたなって思えたら、それはそれで非常にすばらしいことだと思うので、怖がらず、未知の世界にどんどん踏み込んでいくことも必要だと思ってやっています。」
 

阿部
「『失敗から学ぶ』、そして『負けた理由を検証しないと進歩はない』、それを続けることが大事ということでしたが、私たちの日ごろの仕事も含めて、どんな世界にも通じるメッセージだなと思いました。」

望月
「井山さん、非常に謙虚な方なんですけれども、話していると内側に秘める『ぶれない自信』を感じました。
一見、平成生まれで草食系、柔らかい感じなんですけれども、その姿で、さらりと偉業を成し遂げるというところに、若者も「かっこよさ」を感じるのかもしれませんね。」

和久田
「そうかもしれないです。
私も井山さんと同世代ですが、プレッシャーを力に変える気持ちの強さがありますよね。
井山さんは七冠を達成して、この次の目標は何でしょうか?」

望月
「『世界一』なんですね。
囲碁の世界では、国際的に見ますと、中国や韓国が大きくリードしているんです。
その世界のトップに切り込んで行きたいというふうに話していました。」

Page Top