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2016年6月24日(金)

“食品ロス”を減らせ

阿部
「売れ残りや食べ残しなど、本来食べられるはずの食品が廃棄されてしまう『食品ロス』。
今、この食品ロスを削減していこうという取り組みが広がっています。
まずは、こちらの数字をご覧いただきましょう。
632万トン。
国内で、1年間に出た食品ロスの量です。

これは、世界中で行われている、途上国などへ向けた食料援助の量のおよそ2倍にあたるのだそうです。
食品ロスの問題は、日本だけではなく、先進国の間でも共通の課題になっています。

 

先月(5月)行われた、G7の環境相会合でも、2030年までに世界全体の1人あたりの食品廃棄量を半減することを目指し、各国が協調して取り組むことで一致しました。」

和久田
「食品ロスを減らすことは、食べ物がもったいないからということだけにとどまらず、企業にとっては、コストの削減、消費者にとっても、無駄な支出を減らすことにつながります。
こうした中、企業、そして消費者の間で、意識を変えて向き合おうという動きが新たに起きています。」

“食品ロス”を減らせ メーカーの挑戦

リポート:藤本浩輝(経済部)

群馬県にある、豆腐メーカーです。
今、日持ちしない豆腐を余分に製造しないよう、新たな試みを始めています。



 

豆腐メーカー 鳥越淳司社長
「こちらが廃棄する商品です。」



 

これまで、このメーカーは毎日のように多くの商品を廃棄していました。
小売りからの注文には必ず応えなければならないため、商品を多めに作らざるを得なかったのです。
少しでもロスをなくそうと、経験や勘を頼りに計画を立ててきましたが、見込みが外れることも多く、こうしたコストが重荷になっていました。
 

豆腐メーカー 鳥越淳司社長
「受注と実数という差が、ものすごく大きかったものですから、それを削減するというのが至上命題だった。
ずっと勘で続けていくわけにはいかない。」

 

そこで、豆腐メーカーがタッグを組んだのが、日本気象協会。
気象協会では今、蓄積した気象データを元に、企業活動を支援するサービスを行っています。


 

まず選んだのは、夏によく売れる「寄せ豆腐」。




 

気象協会は、過去1年間の気温の変化と販売数の関係を徹底的に分析。
1つの傾向を導き出しました。
寄せ豆腐は、暑さが続いた日よりも、前の日に比べ、気温が大きく上がった時に需要が伸びていました。
暑くなったと感じることがポイントだったのです。
 

「こちらは寄せ豆腐の予測データです。」




 

新たに作られた需要予測です。
食べたくなる度合いを「寄せ豆腐指数」として表しました。



 

高気温が前の日に比べ、3度あがると予想した、この日。
寄せ豆腐指数をプラス4ポイントとしました。



 

そして、この日は最高気温を30度と予想しましたが、前の日と比べ、1度しか差はありません。
急に暑くなったとは感じにくいこともあり、寄せ豆腐指数は据え置きました。
豆腐メーカーは、このデータを参考にして、翌日、翌々日に生産する量を見直します。
その結果、昨年度は寄せ豆腐の食品ロスが30%減りました。
およそ1,000万円のコスト削減につながりました。

豆腐メーカー 鳥越淳司社長
「ありがたいデータを頂いている。
最大限のパフォーマンスを出したい。
効果が出ているので、(データの活用を)拡大してやっていきたい。」

“食品ロス”を減らせ 変わる消費者

消費者の間でも、これまで捨ててしまっていた食品を大切にして見直していこうという意識が広がっています。

この日、開かれたのは、最近人気を集めている、サルベージパーティー。
サルベージとは、救い出すという意味です。



 

持ち寄ったのは、台所に眠っていた食品。
プロの料理人にアドバイスをもらい、ひと味違った料理をつくって、みんなで楽しもうというのです。


 

冷蔵庫に閉まわれていた缶チュウハイは、デミグラスソースの隠し味に。
お麩は乾燥したまま、春雨サラダにのせて、食感にアクセントを加えました。



 

参加者
「やわらかいものの中に、ぱりぱり感のある食感でいい。
賞味期限の間近なものをこういうふうにして使って頂いて本当によかった。」


 

主催者 平井巧さん
「サルベージパーティーを自分で開催したり、家で食材を使う工夫をするとか、大きい輪になると思っているので、期待している。」

“食品ロス”を減らせ つながる消費者とメーカー

食品ロスを減らしたいという、消費者とメーカーを結びつけようという動きも出ています。

主婦の大木香さんが最近、買い集めているのが、賞味期限が近づいたり、パッケージが傷ついたりした食品などです。
この日は、賞味期限間近のラーメンで子どもと食事です。


 

きっかけとなったのは、この通販サイト。
加工食品を中心に、5割から9割ほど割安で販売されています。



 

大木香さん
「すごい安い。
買いました。」


 

大木さんは、商品を手にするようになる中で、食品ロスへの理解が深まっていったと言います。

大木香さん
「まさかこんなに食品ロスが世の中に出ているとは思っていなかった。
日本が抱える大きな問題になっていると思った。
貢献できるのだったら、どんどんしていきたい。」

 

通販サイトの運営会社です。
サイトを始めるにあたって、課題だったのは、メーカーから商品を集めることでした。
食品メーカーの中には、値下げして販売することは、ブランドイメージの低下につながると、抵抗感を示すところもあるといいます。

そこで、このサイトでは、売り上げの一部が慈善団体などに寄付される仕組みにして、社会貢献にもつながるようにしました。
企業の数は、当初の100社から現在250社に増えています。

 

通販サイト運営会社 関藤竜也社長
「協賛いただけるメーカーが、立派な企業だという見え方を作るのも非常に大切なことだと感じている。
メリットがある、デメリットがないような流れをつくる必要がある。」

“食品ロス” 削減するためには

阿部
「取材にあたった、経済部の藤本記者です。
食品ロスを減らす取り組みは、いろいろと広がっているんですね。」

藤本浩輝記者(経済部)
「そうなんです。
『もったいない』という感覚に加えて、環境問題やコストへの消費者の意識の高まりが背景にあると思います。」

和久田
「それにしても、632万トンもの食品ロス、これを一挙に減らすというのは、簡単ではありませんよね。」

藤本記者
「そうですね。
課題を解決するため、今、食品ロスを生み出す原因になっている商慣習を変革していこうという動きも出ているんです。

それは、『3分の1ルール』と呼ばれる商慣習です。
例えば、賞味期限が6か月の食品の場合ですと、賞味期限の3分の1、製造から2か月までに小売り店に納品されない食品は廃棄。
さらに、2か月先の4か月までに売れないと廃棄するというものです。
そもそもは、消費者に新鮮な食品を届けるためでしたが、食品ロスを減らそうと、食品業界はルールを緩和し、一部で廃棄のタイミングを遅らせています。」

阿部
「さらに、食品ロスの取り組みを進めていくために、流通やメーカーの取り組みも大事ですが、私たち消費者自身も変わらないといけませんね。」

藤本記者
「消費者の役割がもっとも大切になってきます。
食品ロスは、販売のチャンスを逃したくないメーカーや小売りが、消費者の『新鮮さを求める強すぎる意識』に応えようとした結果だと指摘されています。
食品を廃棄すれば、原材料費などは無駄になりますし、廃棄の費用も必要です。
これらのコストは、最終的には価格に上乗せされ、私たち消費者の負担になります。
今日、使うことが分かっているのに、賞味期限が長い食品を選ぶ必要があるのかなど、買い物の時に少し考えてみる。
今の消費のあり方を見直すことも必要なのではないでしょうか。」