これまでの放送

2016年6月9日(木)

“実際と異なる条件で…” 求人トラブルの実態

阿部
「今、実際よりも労働条件を良く見せかけて人を集めようとする求人についてのトラブルが増えています。」

和久田
「こちらは、厚生労働省の調査です。
ハローワークの求人が、実際の労働条件と違ったとして、毎年4,000件前後の相談が寄せられています。
こうした求人、『ブラック求人』とも言われています。
トラブルの実態と、増加する背景を取材しました。」

“実際と異なる条件で” 求人トラブルの実態

宮城県で暮らす、20代の男性です。
求人広告に載っていた労働条件が、実際とは異なっていたという事態に直面したと言います。


 

20代 男性
「これが最初に見つけた求人広告。」



 

1年前、転職を考えていた時に見つけた求人広告です。
勤務地は、当時男性が住んでいた宮城県大崎市。
仕事内容は自動車整備やタイヤの販売。
正社員としての募集でした。
地元で、昔から好きだった車に関する仕事ができる。
男性はこの求人にすぐ応募し、1度の面接で採用が決まりました。

20代 男性
「まだ子どもが小さかったので、すぐ帰って来られる場所がいいと思った。
そのときは、ずっと一生(この会社で)やっていこうと思いました。」


 

しかしその後、会社から提示された条件は、広告とは大きく異なったと言います。

勤務地は、大崎市から車で1時間半かかる、仙台。
与えられた仕事は、派遣社員の管理と営業。
自動車とは全く関係のない仕事だったと言います。

20代 男性
「先輩に“自動車関係(の仕事)じゃないんですか”と聞いたところ、“何言っているんですか、人材派遣だようちの会社は”と言うので、言っていることと話が違うじゃないかというふうになった。
それでも、子どもが生まれたばかりなので、お金もないので、とにかく稼がなきゃいけなくて、辞められなかった。」

仕事は、長い時には早朝から深夜まで及びましたが、残業代は出なかったと言います。

男性の妻
「何時に帰って来るか聞いても、“上司が帰らせてくれないからわからない”。
遅いときだと2時くらいまで(仕事を)やってるときもあった。
体力的にも精神的にも結構疲れていたと思う。」
 

労働条件に疑問を覚えたという男性は、入社から半年を過ぎたところで退職を決意しました。

今年(2016年)4月、男性は虚偽の求人で入社することになったとして、慰謝料などを求めて、裁判をおこしました。
先週行われた第一回の裁判で、会社は「勤務地と業務内容は入社前に説明している」とする書面を提出し、訴えを退けるよう求めています。

増える“ブラック求人” その背景は

労働問題に取り組むNPO法人です。
ここ2年で、求人内容と労働条件が異なるという相談件数が、転職・新卒を問わず急増していると言います。


 

この日も、民間の就職情報サイトを見て、ウェブデザイナーの仕事に応募した男性が、実際の給与が求人と異なっていたと相談に訪れていました。



 

ウェブデザイナーの仕事に応募した男性
「(就職情報サイトに)掲載されていた額にはならない。」



 

NPO法人
「残業手当の11万円って70時間分なので、過労死ラインが80時間、近い残業が“見込み残業”として前提とされている。」

NPOによると、特に目立つのは残業代で基本給を水増しし、あたかも給料が高いように見せるケースです。
人手不足が特に深刻なサービス業などを中心に、偽りの好条件を示す例が増えています。
実際の労働条件を伝えられるのは多くの場合、入社した後であることも大きな問題だといいます。

NPO法人POSSE 今野晴貴代表
「他の内定を辞退したり、元いた会社に退職届を出してしまえば、簡単に辞められない。
1か月2か月で辞めてしまうと経歴書に傷がついてしまう。
履歴書に傷がついてしまうと、次の転職も難しい。
我慢して働き続けているという方がたくさんいるというのが実態。」

“ブラック求人” どうしたら無くせるか

こうした問題をなくそうという動きも出始めています。

取り扱う求人数が全国で最も多い、ハローワーク品川です。
新規で求人に来た全ての企業に、求人票を下回る条件での採用を控えるよう求めています。


 

ハローワーク品川 担当者
「いただいている求人より条件を下げるのは、基本的には避けていただく。」



 

仮に下回る条件で採用する場合には、いったん不採用とし、ハローワークと相談した上で改めて条件を提示し、応募者と話し合うこと。
それを守らず、トラブルに発展した場合には、その会社の募集を行わないことを確認します。
地道な働きかけですが、こうした動きが少しでも働く人たちの権利を守る事につながってほしいと考えています。

ハローワーク品川 水野治雇用開発部長
「私どもがお預かりした求人で、そういう問題が起きたということがあれば、それは本当に悔しい。
企業に、反省や今後の改善の取り組みなどはしっかり形を作ってもらう。
求職者の期待に応える必要があると思う。」

“ブラック求人” 広がる背景は

阿部
「ここからは労働問題に詳しい、法政大学の上西充子教授とお伝えします。
求人と実際の労働条件が違う“ブラック求人”が、なぜ起きてしまうのでしょうか?」

法政大学 上西充子教授
「求人広告などに載せる労働条件の書き方に明確な基準がなく、企業側が自由に書けてしまうということが問題のひとつです。

 

例えば、こういう記述があります。
この中の定額払割り増し手当てというのは、もしかしたら残業代のことかもしれません。
仮にこれが残業代だとすると、22万円のうち、いったいいくらが残業代なのか、また、何時間分の残業代なのか、この表記では分かりません。
長時間の残業を、追加の手当が無いままに強いられてしまうおそれがあります。
このように、あいまいな記述がされている場合もありますし、全くウソの条件が書かれている場合もありまして、それを取り締まる仕組みが整備をされていないのが問題です。
まずは、求人段階で労働条件の記載方法について統一した基準を設けることが必要です。
ウソの労働条件を提示した場合については、罰則を幅広く設けることを求める報告書が、厚生労働省の会議で出されており、今後、検討が始まる見込みです。」

和久田
「今、就職活動をしている人が、ブラック求人から身を守るためには、どういったことが必要でしょうか?」

法政大学 上西充子教授
「まずは求人の内容をよく読んで、確認をして、保存しておくことが必要です。
その上で、働くことに合意をする際に、労働条件を書面で受け取って、求人の際の条件と違いが無いか、改めて確認をして下さい。
労働条件を書面で渡すことは法律で定められていますので、それを渡そうとしないような企業は避けた方がいいでしょう。
また、一連の活動のどの段階でもおかしいと思ったら、早めに厚生労働省の『労働条件相談ほっとライン』などの専門相談窓口や、労働側の弁護士などに相談をして欲しいと思います。」