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2016年6月7日(火)

和牛高騰 生産現場で何が

日本が世界に誇る、和牛。
今、その価格が高騰しています。
この店では、5年間で20%の値上がりです。




「だんだん高くなってきて。」

「ちょっと買えない。
食べたいけど。」


 

こうした中、和牛の生産現場では新たな動きが。

一大産地・九州から、酪農王国・北海道へ、和牛が大移動。
生産現場の大きな変化が、価格の引き下げにつながるのか、注目を集めています。




阿部
「霜降り肉が特徴で、日本独自で改良が重ねられてきた『和牛』。
その値上がりが止まりません。」

和久田
「こちらは、小売価格の推移です。
一般的な『肩肉』で、3年前100グラム400円台だったのが、今年(2016年)は600円以上まで値上がりしています。
こうした和牛の価格上昇に伴って、これまで比較的、手ごろだった和牛以外の国産牛まで値上がりしています。」

阿部
「最大の理由は、和牛の子牛が減っていることなんです。
和牛の生産現場でいったい何が起きているのか、取材しました。」

続く和牛高騰 その背景は

リポート:佐藤庸介(帯広局)

日本最大の和牛の産地、鹿児島の市場です。
4月の子牛の取引価格は、1年前は、1頭平均65万円でしたが…。



 

“102万円。”

平均でも86万円。
価格は、過去最高にまで跳ね上がりました。
子牛が不足し、これが和牛の価格高騰を招いているのです。

 

競り参加者
「買えません。
もう買える数字でもない。
異常だと思う、この高い相場は。」

 

背景にあるのは、子牛の生産農家の減少です。

子牛の生産を40年近く続けてきた、こちらの農家も、体力の限界から今年、離農しました。
子牛の生産を担ってきたのは、規模が小さく、70代以上の農家が中心です。
高齢化に伴って、この5年で全国で3割近く減り、子牛の減少を引き起こしているのです。
 

こうした事態に対応を迫られているのが、大手食肉加工メーカーです。
グループで、市場で買った子牛を育てて肉を出荷しています。
和牛の販売額は、年間420億円にのぼる、主力事業です。
しかし今、市場で子牛が思うように調達できなくなっています。
このためグループでは、3年前から宮崎県で自ら子牛の生産に乗り出しました。
 

担当の山崎征二(やまさき・せいじ)さんです。
飼育頭数を徐々に増やしていますが、必要とする子牛の数には及びません。
問題になっているのが、コストです。


 

牧草などのエサは全て輸入に頼っていて、年間7億円以上。
さらに、牛から出るふん尿の処理にも莫大な費用がかかります。



 

大手食肉加工メーカー 山崎征二さん
「もっと大きくしたいけど、ここでやるのは、もう精いっぱい。」

酪農王国 北海道を 和牛の一大生産拠点へ

そこで活路を求めたのが、九州から1,600キロ離れた北海道です。
酪農王国として知られる北海道で、和牛の子牛を生産しようという計画です。
まずは、九州で飼育していた和牛の母牛を北海道に2日がかりで運びます。


今年(2016年)2月。
温暖な九州から、氷点下20度の北海道浦幌町に50頭の和牛が到着しました。
長時間の移動と寒暖差。
慣れない環境で健康な状態を保てるのか、心配が募ります。
 

牧場担当者
「33度の寒暖差、それがいちばんの気がかり。」



 

大きなリスクにもかかわらず、九州から母牛をここに運んできたのは、酪農王国・北海道ならではのメリットがあるからです。

九州では、課題だったエサの調達。
自前の畑で安く生産できます。
さらに、牛のふん尿は牧草の畑に堆肥にしてまけるため、処理費用も安く済む見通しです。
母牛が運ばれて2か月。
無事、冬を越したことが確認できました。

大手食肉加工メーカー 山崎征二さん
「順調にきてあと3か月で種付けも始まる。
安心します、ほっとする。」

今年中に合わせて、600頭の母牛を輸送し、今後も需要が見込める和牛の大きな生産拠点にしていきたい考えです。

大手食肉加工メーカー 山崎征二さん
「まず一歩踏み出すことができた。
これから拡大の余地を検討しながら、そういう方向性でやっていきたい。」

 

今、北海道では、酪農を生かして和牛の子牛を一気に増やそうという企業も現れています。

この会社は、1,700頭の乳牛・ホルスタインを飼育し、生乳の生産量は国内最大規模です。
ホルスタインの母牛から生まれてきたのは…。


 

真っ黒な子牛。
和牛の赤ちゃんです。
ここでは、ホルスタインから毎日のように和牛が生まれています。


 

牧場責任者
「お腹の中には肉牛の子牛が入っている。
和牛の受精卵移植をして、ホルスタインだけど、産まれてくるのは和牛の子牛。」

 

ホルスタインから産まれるのは本来、ホルスタインのはず。
しかし、子宮に和牛の受精卵を移植すると、ホルスタインからでも値段が高い和牛が生まれます。
いわば牛の「代理出産」です。
ここで生まれた子牛たちは、およそ9か月後、市場で売られ、全国各地へ。
そこで2年近く育てられ、出荷されます。
今年、ホルスタインから生まれる和牛は、およそ900頭になる見込みです。
4年後には、この数を3,000頭規模にまで拡大する計画です。

畜産・酪農会社 延與雄一郎社長
「やるからには圧倒的にコストが下がる方法を追求していく。
持続可能な生産基盤は確立できるというのを頑張って示していきたい。」

変わる和牛の生産現場 価格への影響は?

和久田
「取材にあたった帯広放送局の佐藤記者です。
北海道では、さまざまな動きが出ているようですが、和牛の価格は今後、下がるんでしょうか?」

佐藤庸介記者(帯広局)
「そうなればいいんですけれども、すぐには期待しづらいというのが関係者の見方です。
と言いますのも、今、子牛が減っているということを受けて、小売価格より、もっと牛肉の卸売り価格が上がっているからです。
消費の落ち込みを避けたいスーパーでは、もうけを減らして、ギリギリで価格を抑えています。
本当は、もっと小売価格を上げたいというのが実情なんです。
また、牛を数頭しか飼っていないような小さな生産農家の離農も、今後続く見通しです。
ですから、酪農王国としての基盤を生かして、大規模な生産ができる北海道への注目が高まっているんです。」

阿部
「和牛といいますと、最近では海外の人気も高まっていますが、このまま価格の高騰が続くと、その人気に影響が出るかもしれませんね?」

佐藤記者
「可能性はあります。
国内各地のブランド牛が和食ブームに乗って支持されていまして、輸出の伸びも期待されています。
しかし、これらのブランド牛も、九州などから子牛を買ってきて育てている場合も多いんです。
子牛の生産が細っている現状は、和牛の生産そのものが足元から揺らいでいると言っても言い過ぎではないと思います。
ですから、北海道が子牛の安定した生産拠点になることが出来れば、国内の和牛全体を支えていくという、大きな意味を持つことになると思います。」