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2016年5月23日(月)

医療的ケアの負担 家族をどう支える

都内で暮らす2歳の女の子です。
痰がつまると、呼吸が止まってしまうため、常に医療的ケアが欠かせません。
四六時中、その対応に追われる家族。
体力的にも、精神的にも大きな負担がのしかかっています。
しかし、子どもを預かってくれる施設は多くありません。

池末香奈子さん
「こっちも疲れてきちゃったりするので、考え出すと不安がありますね。」



 

先月(4月)東京・世田谷区に、こうした子どもを一時的に預かる専門施設「もみじの家」がオープンしました。



 

ここでは、看護師が24時間態勢で対応してくれます。
さらに、ベッドやキッチンもあり、家族は日頃の負担から解放されて、くつろぐ事が出来ます。


 

利用した人
「安心してお任せできます。」

利用した人
「受け入れ先がほぼない状態の所にできたから、すごくありがたい。」

 

新たにできた施設の取り組みを通して、子どもたちと家族をどう支えていくのか考えます。

阿部
「人工呼吸器の使用や、たんの吸引といった医療的ケア。
在宅で、こうしたケアを必要としている子どもの数は、全国でおよそ1万3,000人に上ります。
現在、急速な医療技術の進歩によって、かつて救えなかった命が救えるようになったことで、その数は増え続けています。」

和久田
「医療的ケアは原則、医師や看護師などの医療者、そして、家族しか行うことができません。

そのため、多くの保育園や幼稚園などで医療的ケアができないとして、受け入れてもらえず、受け入れてもらえたとしても、親の同伴が必要となるケースが少なくありません。
社会的な受け皿がないため、家族の負担は重く、孤立しているのが現状です。」

阿部
「こうした家族を支えようと新たにできた『もみじの家』。
利用した、ある家族を取材しました。」

医療的ケアの負担 家族をどう支えるか

都内で暮らす、池末香奈子(いけすえ・かなこ)さんです。




 

2歳8か月になる娘の琴(こと)ちゃんは、医療的ケアを必要としています。
体調が悪い時には、たんの吸引を5分おきに行わなければならないこともあります。

池末香奈子さん
「(たんを)取らないでいると窒息しちゃいますね。
吸引はこまめにやらないと厳しいですね。」

さらに、自分で食事を取ることができず、鼻からチューブで、ミルクを体内に送っています。
少しずつしか消化できないため、1回あたり4時間、5回にわけて行います。
香奈子さんは、訪問看護を利用していますが、その時間は1日に1時間半程度。
1日のほとんどは、つきっきりで介護にあたり、琴ちゃんから目を離すことができません。

池末香奈子さん
「すぐに何かが起こりうる状況で、ずっと見ていて、パパはもちろん仕事に行かなきゃいけないし、いない間に死なせちゃったらどうしようってずっと思っていて。」

夜、寝る時も扉は開けたままにしています。
眠りについて30分ほど。
琴ちゃんが咳き込む音で目が覚めました。
たんの吸引やミルクの交換のため、何度もくり返し起きなければなりません。
「少しでも自分が気をぬけば、娘の命が危ない」。
この2年間、まとまった睡眠はほとんど取れていないといいます。

池末香奈子さん
「疲れがたまっているなって感じはしますね。
どれだけこっちに将来体力が残っているか、そういう心配はありますね。」

この日、池末さんの家族は「もみじの家」を訪れました。
二泊三日で利用することにしたのです。



 

まず、母親の香奈子さんは、看護師と入念な打ち合わせを行います。
看護師は、家庭で行っている医療的ケアをきめ細かくそのまま引き継いでくれます。


 

さらに、看護師だけでなく保育士も常駐。
子どもたちに、少しでも楽しい時間を過ごしてもらおうと、さまざまな遊びを行っています。
これまで、外に出る機会が少なかった琴ちゃんにとって、新鮮な経験です。


普段、自宅では見せない表情を見せてくれました。

池末香奈子さん
「家だとどうしても1対1で遊んではあげるけど、刺激が足りなくなっちゃっているので、こういうのはありがたいです。
めちゃくちゃ笑っていたので、こっちまでうれしくなっちゃう。」

夜の間も、看護師が琴ちゃんをみてくれます。
香奈子さんも、この日は日頃の緊張感から少しだけ解放されました。



 

夫 有貴生さん
「食事に出させてもらおうかなと思いまして。」

池末香奈子さん
「ゆっくり行ってきます。」

 

施設を利用したことで、久しぶりに、つかの間の夫婦2人の時間を持てました。
隣の部屋で、ゆっくり休めたという香奈子さん。
琴ちゃんに向き合う思いを新たにしたといいます。

池末香奈子さん
「久々に寝かせてもらいました。
これだけリフレッシュしたから、また頑張れそう。」


 

医療的ケアを必要とする子どもと家族に手厚い支援を行う「もみじの家」。
運営する成育医療研究センターは、こうした取り組みを全国に広げていきたいと考えています。
しかし、看護師を始めとした多くの専門職を配置するには、現行の福祉制度だけでは、人件費などをまかなうことはできません。
ここでは、年間6,000万円ほどを寄付金で補っています。
取り組みを広げて行くためには、全国どこでも運営が成り立つ仕組み作りが必要だといいます。

国立成育医療研究センター 賀藤均病院長
「どのような形でもいいので、広がっていくようにしないとだめだろう。
うちだけで、できても、まったく不十分で、こういう施設が日本全国に作られて、きちんと施設として運営できるモデルを作っていきたい。」

 

日々、緊張感の中で、必死に子どもの命を守り続ける家族たち。
その大きな負担を少しでも和らげる支援が、今まさに求められています。

 

和久田
「このもみじの家は、料金は障害の程度や宿泊する部屋によって異なるということで、最長で7日間、利用することができます。
こうした取り組み以外にも全国各地の病院では、空いた病床を利用して、医療的ケアが必要な子どもを一時的に受け入れる取り組みも行われていますが、その数は少ないのが現状です。」

阿部
「孤立する家族を社会全体で支えていくために、公的な支援はもちろん、寄付やボランティアなどの民間レベルの支援もうまく活用していく必要があります。」