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2016年5月12日(木)

宮城まり子さん 美術展に込めたメッセージ

阿部
「今、東京で開かれている美術展が、私たちにある問いを投げかけています。」

大好きな花を、3年半かけて描き続けた作品。


楽しそうに天使が遊ぶ様子を描いた絵。
これらは全て、体の障害や知的障害のある人々が描いたものです。




こうした作品を展示する美術展が、今月(5月)1日から、東京・銀座で開かれています。




 

阿部
「この美術展を主催したのは、女優の宮城まり子さんです。
宮城さんは昭和30年代、舞台や映画のほか、歌手としても活躍しました。
今年(2016年)89歳になった宮城さん、障害がある人の才能を見いだし、人生をかけて、40年以上にわたって美術展を続けてきました。」

和久田
「絵を通して、宮城さんは私たちに何を伝えようとしているのでしょうか。」

宮城まり子さん 89歳 美術展に込めた思い

静岡県掛川市にある「ねむの木学園」。
宮城さんが園長をつとめる、障害者支援施設です。



 

現在、73人が共に学び、暮らしています。
学園の運営を支えているのは、国や県からの助成金や支援者からの寄付金、そして宮城さんの私財です。



 

宮城さんが、ねむの木学園を設立したのは48年前。
41歳の時でした。



 

障害のある子どもが家庭の事情や経済的理由などで、家族と共に暮らすことができず、学校にも通っていない実態を知ったことがきっかけでした。



 

女優 宮城まり子さん
「私は耐えられなくて、義務教育なら権利じゃないかと。
何も考えない私は、自分の体力も財力も能力も考えないで、誰も作らないなら私が作っちゃえって。」


 

子どもたちを迎えた宮城さんは、その才能に驚かされました。
ペンを渡すと、独自の世界を描き始めたのです。
「体や言葉が不自由でも、絵で伝えることができる」。
宮城さんは障害者の可能性を見出したのです。

 

女優 宮城まり子さん
「だめな子って言われた子が、こんな絵を描いているのよって思って欲しい。」



 

多くの人に絵を見てもらい、障害者に対する偏見を覆したい。
宮城さんは全国をまわり、美術展を始めたのです。
回を重ねるうちに、子どもたちが自信をつけていきました。

その1人、創立直後から暮らしている、としみつさんです。




 

手足のまひと、学力の遅れに悩んだ幼少時代。
周りとの違いばかりを指摘され、心を閉ざしていたといいます。



 

学園に来て間もないころ、としみつさんが描いた絵です。
宮城さんと初めて作った雪だるまが溶けた、悲しい思い出。



 

宮城さんが手を引いて、ダンスに誘ってくれた喜び。




 

日常を素直な心で描く、としみつさんの作品は、国内外で賞を受賞するなど広く知られるようになりました。

としみつさん
「お母さん(宮城さん)がいなかったら、絵の心とか絵の力は生まれなかったし、ここまでこうやって絵なんて描けなかった子だから。」

 

しかし、としみつさんは、今回の美術展を前に大きな壁にぶつかっていました。
絵が全く描けなくなってしまったのです。
それに対して宮城さんは、「挫折を知ることはすばらしいこと。挫折を超えて次の山を登るの。」と伝えました。
宮城さんは絵を通じて、子どもたちの成長と向き合ってきたのです。
 

宮城さんの思いを受け止め、子どもたちを支援する仕事についた人もいます。
都内に住む、佐久間美香(さくま・みか)さんです。
学童保育や、自閉症の親子を対象としたサークル活動で、障害がある子どもたちを支えてきました。


そのきっかけは中学生の時、ねむの木学園の子どもたちの絵を見たことだったといいます。



 

佐久間美香さん
「絵を見た時に、すごいむくな、純粋な、きれいな魂をみたような気がしたから、そこに近づきたいっていうか、守りたいって気持ちがすごく強くなったかなって気はしますね。」


 

104回目となる今回の美術展。
宮城さんは、直前まで展示作品を絞り込む作業に追われていました。



 

女優 宮城まり子さん
「見せて、見せて。
お留守、お留守。
持って行く、持って行く、持って行く。」

 

70歳を過ぎて、がんを患った宮城さん。
5年前には、腰椎を骨折しました。
「もしかしたら、今回の美術展が最後になるかもしれない」。
宮城さんは、1人でも多くの人に絵を見てもらうことが、今の自分にできることだと考えていました。

今月1日。
ねむの木学園の美術展が始まりました。



 

飾られていたのは、350点余りの作品です。




 


「どの絵も生きている。
一生懸命生きているというか、力強さがある。」



 

会場には、子どもたちの絵に影響を受けた佐久間さんの姿もありました。
目に留まったのは、としみつさんの作品でした。



 

絵を描けずに苦しんでいたとしみつさんが、宮城さんの言葉で、再び筆をとって描いたものです。
宮城さんとの日常ではなく、初めて、挫折した自分の心の内を絵にすることができました。

佐久間美香さん
「すごいね、ちゃんと育っているっていうか。」

佐久間美香さん
「感慨深いと言うか、時間が経過している中に、ずっと情熱を捨てないできている。
そこがすごいと思って。」

 

宮城まり子さん、89歳。
この日、お客さんに向けたメッセージには、障害者に対してあたたかい社会であってほしいという思いが込められていました。

女優 宮城まり子さん
「子どもたちが大人になって、その中を生きていくことができるように、お守りくださいませ。」




 

阿部
「障害のある人たちへの偏見のない社会であってほしい。
40年以上にわたって美術展を開催されてきた宮城さんの強い気持ち、熱意を感じましたね。」

和久田
「ねむの木学園の美術展は、今月29日まで、東京銀座画廊・美術館で開かれています。」