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2016年4月14日(木)

『さくら5つの物語』 “桜葬” 亡き人への思い 重ねて

阿部
「今週、シリーズでお伝えしている『さくら5つの物語』。
全国各地の桜の風景と、そこに込められた人々の思いをお伝えしています。
今日(14日)は、大阪・高槻市の高台に咲く桜です。」

和久田
「今、樹木のそばに遺骨を埋葬する『樹木葬』が全国各地で広がりつつあります。
こちらは、その『樹木葬』の墓地の1つで、桜が植えられています。
その名も『桜葬(さくらそう)』です。
桜とともに永遠の眠りにつきたいと願った人たちと、その家族の物語です。」

亡き人への思い 桜に重ねて

大阪・高槻市にある「桜葬」の墓地です。
5年前につくられました。
ヤマザクラやしだれ桜など、およそ30本が植えられています。
まだ小さな桜ですが、これから何年もかけて成長し、桜の森になっていきます。
 

桜のそばに並んでいるのは、名前やメッセージが刻まれた石です。
現在、ここに153人が埋葬されています。
墓地には、亡くなった肉親の遺骨を持って、遺族がやってきます。
桜のそばに、家族たちの手で遺骨が埋められます。

 

「実家の近くに桜の名所の公園があって、(亡くなった両親が)ずっと眺めていたので、亡くなってからも桜が見えたらうれしいんじゃないかなと思って。」


 

毎年この時期、桜を眺めながら、亡き家族に思いをはせる人がいます。
長野輝彦さん、68歳です。
3年前に亡くなった妻が、ここに眠っています。

 

長野輝彦さん
「明るくて元気な人だったし、すばらしかった人。
そういう縁があったというのも、僕も幸せだった。」


 

妻のちよみさんです。
朗らかな性格で、いつも笑顔を絶やさず、誰からも慕われていました。
そんな彼女が大好きだったのが、春、華やかに咲き誇る桜でした。

長野輝彦さん
「桜っていうのは、寒い冬を越して、春になったらあれだけきれいな花が咲いて、みんなを幸せにできるというのは、(桜を)自分の生き方みたいに思っていたのかも。」

39年におよぶ結婚生活。
毎年春になると、夫婦2人で全国各地の桜を見に出かけました。
桜を見て喜ぶ妻の笑顔が、長野さんにとって何よりの楽しみでした。
そんな2人の思い出が詰まった宝物があります。

 

使い古された道路地図です。
15年前、この地図を手に、2人は車で桜前線を追いかける旅に出ました。
赤い線が、この地図を片手に道案内を務めたちよみさんが記した旅路。
鹿児島から北海道まで、3か月かけて日本列島を縦断しました。

長野輝彦さん
「(桜を)見ていると本当に心が和むというか、やっぱり桜の力というか、本当に無邪気にお互い笑顔が出てきた。」

そんな夫婦の暮らしが変わったのは4年前。
ちよみさんの体にがんが見つかったのです。
医師からは、余命半年と告げられました。
それでも、早く元気になって2人でまた桜を見に行きたい。
ちよみさんは懸命に治療に取り組みました。
長野さんが「桜葬」の存在を知ったのは、闘病生活のさなかでした。
しかし、生きようと頑張る妻に、亡くなったあとの話をすることはできませんでした。
ちよみさんが亡くなる1週間前。
2人は、病室で朝から思い出話を続けていました。

アルバイト先のデパートで出会って、結婚。
それから39年、どこに行くにもいつも一緒だったこと。
そして、全国各地の桜を見に行ったこと。
話は一日中、尽きませんでした。

 

夕方、突然ちよみさんが「夕日を見たい」と言い出しました。
無言のまま、夕焼け空を眺める2人。
その時、長野さんは、これまで言えなかった「桜葬」のことを切り出しました。

長野輝彦さん
「“うん、最後はそこがいい、そうしよう”って、決まりましたね。」

愛する妻を亡くし、生きる気力を失いかけていた長野さん。
ある日、桜前線を追った道路地図を見ていた時、これまで気付かなかったちよみさんの書いた文字に目が止まりました。
そこにつづられていたのは、一緒に旅する長野さんへの思いでした。

“し・あ・わ・せと 二人同時に声を出し 大笑いする能登の夕ぐれ”

“この人が 我が連れ合いで良かったと つくづく思う車中かな”

いつも明るく、最後まで前向きに生きたちよみさん。
そんな妻への感謝の思いが、改めて沸き上がってきました。

ちよみさんが眠っている墓地です。
ここで桜を眺めていると、長野さんは、ちよみさんが語りかけてくるように感じると言います。

長野輝彦さん
「明るく元気に思い切り生きた人だったから、1人だけれども、しっかり生きていきなさいと言われている気がする。」

大切な家族が、桜のそばで眠る「桜葬」。
亡くなった人と心を通いあわせる、かけがえのない桜です。


阿部
「桜の木には、ここまで人と人との絆を強める力があるのかと、改めて感じますね。」

和久田
「この時期は、ここで桜を見つめながら、長い時間、亡くなった人に思いをはせる方も多いということです。」

 

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