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2016年4月8日(金)

不妊治療 “やめられない”

和久田
「女性の社会進出や晩婚化に伴って、不妊治療を受ける人の年齢が高くなっている今、新たな課題が浮かび上がってきました。」

阿部
「こちらの不妊治療専門のクリニック。
一日100人以上が訪れています。
全国の医療機関の中には、予約で1年待ちとなっているところもあります。」

和久田
「一方、こちらをご覧下さい。
体外受精で、子どもを授かることができた人の割合は、30代半ばを過ぎると大きく下がります。
そして、40歳で8.3%、45歳では0.8%。
40歳では、12人に1人しか、子どもを授かっていない計算になります。」

阿部
「治療しても、なかなか妊娠できないという現実に悩み『不妊治療をやめたいのに、やめられない』という人が増えています。」

“やめられない” 不妊治療

NPOが主催したグループカウンセリングです。
不妊治療をやめたいと考え始めた人たちが集まりました。

参加者
「(夫と)やめようという話を何度もするが、あとちょっと、もう1回やれば、できるんじゃないか、とか言われて、男の人は、わからないのかな。」

参加者
「主人の母や父も、あまり知らないから言いにくい。」

カウンセリングに参加した、43歳の女性です。
3年間続けてきた治療をやめたいと考えていますが、決心がつかないでいます。

カウンセリングに参加した 43歳の女性
「43歳で少ないけど、妊娠する人はいる。
それになる可能性はない、とは言い切れない。」

女性は20代、30代と出版社で編集者としてのキャリアを積んできました。
39歳で結婚。
自然に妊娠することを望んでいましたが、子どもは授からず、治療を始めました。

夫の子どもを授かりたいと、女性は会社を退職。
治療に専念しました。
夫や親の期待に応えたいという思いから、これまで取り組んだ体外受精は6回。
合わせて、300万円以上の費用がかかりました。

カウンセリングに参加した 43歳の女性
「子どもができたらこうなるんだろうな、という思いや、夫の期待というか『一緒に頑張ろう』とやっている。
そこには親だったり、いろんなものも入っている。」

それでも、妊娠しない現実を繰り返し突きつけられた女性。
次第に医療機関に通うことがつらくなり、「治療をやめてしまいたい」と考えるようになりました。
しかし、完全にやめてしまえば、わずかな可能性も捨てることになるという怖さも感じています。

カウンセリングに参加した 43歳の女性
「不妊治療は、“底なし沼”みたいなところがある。
今回ここまで来たから、次はいけるんじゃないか。
どこかにやっぱり、子どもが欲しい気持ちはあるので、『治療をやめる』という勇気はない。」

一方で、不妊治療をやめ、夫婦2人の生活を選択した人もいます。
辻英美(つじ・ひでみ)さんです。
子どもが2人いる生活を思い描き、42歳の直前まで4年間、不妊治療をしていました。
しかし、妊娠出来ない状況が続くにつれ、自分はダメな人間だと思い込むようになっていったといいます。

辻英美さん
「世の中の女性はみんな、普通に子どもを産んで、普通に育てている、と見えていたから。
私だけができないから、私は人よりちょっと劣っているし、私なんか、要らないんじゃないかみたいな感じに思ってしまって。」
 

外で子どもを見かけることさえつらく、家に閉じこもりがちになったという辻さん。
子育て中の友人とも疎遠になりました。

そんな辻さんの様子を見て、夫の暢仁(のぶひと)さんは、思っていた以上に治療の負担が大きいことに気が付いたといいます。
6回目の治療でも妊娠できなかったことがわかったクリニックからの帰り道。
辻さんは、夫からの思いがけない言葉に、心の重荷がとれたと言います。
それは、そのままの自分を受け入れてくれるものでした。
 

夫 暢仁さん
「これからは子どもがいないからこそできる、あるいは、子どもがいないからこそやれる、そういった人生を送っていって、2人で幸せになろうじゃないかと。
子どもがいないことをずっと引きずったままの人生は、すごく嫌だったので。」

辻英美さん
「すごくうれしかった。
そのあとの私の人生で、新しい方向に進んでいくための、応援の言葉になった。」

「自分を認めてもらえた」と感じた辻さん。
思い描いていた理想とは違いましたが、ようやく、次の一歩を踏み出すことができました。

辻さんは、自分の経験を語ることで、同じ悩みを抱える人を支えるピアカウンセラーとして活動しています。
この日は、不妊治療をやめたいと考える人たちが集まる、グループカウンセリングにのぞみました。
ここでは、まず参加者に、今、抱えている不安や悩みを語ってもらいます。

参加者
「主人は、もうちょっと頑張ってじゃないけど、まだ、できるんじゃないかとか、お守り買ってきちゃったり。」

辻さんたちは、参加者の声に耳を傾けます。
そのうえで、自らの体験を伝えます。

辻英美さん
「『私たちの子どもを授からなくて、ごめん』と言ったら、夫が『残念だったけれど、これからは子どもがいないからこそできる生活をしよう』と言ってくれたのが、私には、すごくうれしくて。」

 

自分たちがどうやってつらい思いを乗り越えてきたのか。
それを参考に自分自身を見つめ直し、答えを出してもらうのです。

参加者
「周りの目とか相談できる場が、なかなかないと、もともと感じていたので、はき出すことを体験できて、すごく気持ちが整理できた。」

不妊治療をしている人の心理に詳しい専門家は、夫や親ばかりではなく、周りの人たちの何気ない言葉が、治療中の人を追い込んでいる可能性があると指摘します。

臨床心理士 小倉智子さん
「結婚して、子どもがいない人は、おそらく周りにいる。
けれど、その方がどういう背景でいるのか、ちょっと思いやれば、悪意はないのだけれど『子どもはまだ?』と言うこともないかもしれないし、そういうふうに思いやることができれば、一番いいと思う。」

 

阿部
「国の調査によりますと、今、不妊に悩み、検査や治療を行ったカップルは、6組に1組となっています。」

和久田
「不妊治療をやめた方の多くが、『子どもがいなくても、自分自身が大切な存在と、周囲の人に認めてもらうことが支えになった』と話していました。」

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