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2016年4月7日(木)

“団塊世代” 老後の現実は

阿部
「日本経済をけん引してきた世代が迎えている老後の実態です。」

戦後のベビーブームに生まれたおよそ1,000万人。
「団塊の世代」と呼ばれています。
 

ファッションや文化など、日本社会に新たな風を吹き込み、職場では「企業戦士」「モーレツ社員」として高度経済成長を支えました。



 

今、その世代は60代半ばを過ぎ“高齢者”に。
豊かな老後を送ると思われてきた団塊世代ですが、生活のため、今も働き続けている人が少なくありません。
団塊世代が直面している厳しい老後の現実。
その背景には、一体何があるのでしょうか。

阿部
「高齢者人口が過去最高の3,300万人を超えた日本。
その中でも大きな割合をしめるのが、現在65歳から69歳のいわゆる『団塊の世代』です。
右肩上がりの時代を生き、比較的裕福とみられてきた『団塊の世代』ですが、その老後は決して安泰とは言えない状況にあります。」

和久田
「今回NHKは、この世代が多く暮らす首都圏の団地で、277世帯を対象に生活の実態について聞き取り調査を行いました。
この調査では、年金や蓄えだけでは暮らすことができないという家計の事情に加え、この世代ならではの問題も浮かび上がってきました。
 

年老いた親の介護、そして就職難などから自立できない子どもへの支援など、今も家族を支える要として、働き続けなければならないという現実です。」

阿部
「団塊世代の老後、その実態を取材しました。」

“団塊世代”老後の現実は

今年、65歳を迎える団塊世代の釘宮祐一(くぎみや・ゆういち)さんです。
パートタイムで、1日8時間の仕事を週6日行っています。
この夏からもらえる年金は、月々11万円あまり。
ここでの収入が大きな頼りです。

お昼ごはんは、節約のため、手作りの弁当を持参しています。

釘宮祐一さん
「先のこと分からない。
いつどういう病気するかも分からないし。」
 

2年前に離婚し、1人で暮らす釘宮さん。
バブルの崩壊後に転職し、退職金はほとんどなかったため、大きな蓄えはありません。
4万円の家賃。
さらに、離れて暮らす母親には月2万円の仕送りと、出費がかさむ中、体が動く限り、働き続けなければならないと思っています。

釘宮祐一さん
「年金だけの収入で生活するとなると、もう目いっぱいになっちゃう。」



 

「一億総中流」とうたわれ、比較的余裕があると思われてきた団塊の世代。
なぜ厳しい老後を送っているのでしょうか。

これは、団塊世代より上の世代の賃金グラフです。
この世代は退職前まで賃金が上がり続けているのに対し、団塊世代は40代の働き盛りでバブルが崩壊。
そのあと給料のカットやリストラなどから、賃金が下落。
その結果、老後の蓄えを築けなかった人が大勢いるのです。

親もわが子も… 家族を支え続けて

蓄えが十分ではないことに加え、働き続けなければならない大きな理由が家族の存在です。
66歳の中島誠生(なかじま・まさいく)さんは、集団就職で北海道から上京、洋服を仕立てる職人として働いてきました。
今、ひと月に受け取っている国民年金は7万円ほど。
生活のため、仕事は続けています。

30年ほど前に妻を亡くした中島さん。
男手ひとつで育ててきた41歳の息子と同居しています。
転職を繰り返してきた息子をいつも気にかけてきました。


 

息子の食事の支度や洗濯などの家事はすべて中島さんの役目です。

中島誠生さん
「親としてできることは、これしかない。」

団塊世代の子どもたちの多くは、就職氷河期に直面した団塊ジュニアと呼ばれる世代。
老後を頼ることはおろか、中島さんのように、子どもの生活を支えている人も少なくありません。
さらに気がかりなこともあります。

仕事場に置かれているのは、ふるさとの北海道に残してきた母親の写真です。

中島誠生さん
「こうやって糸とったりする時にちらちらって(母の写真が)目に入るから、元気にしてるかなぁと思う、何してるかなぁと。」

94歳になる母のかつゑさん。
足腰が弱り、1人で身の回りのことができなくなりました。
ぼや騒ぎを起こしたこともあり目が離せず、兄夫婦が介護をしています。


 

兄だけに負担をかけたくないと、中島さんは3か月に1回、北海道まで介護のために通っています。
航空運賃とレンタカー代、10日ほどの滞在費で1回につき10万円近くかかります。

中島誠生さん
「これ払わないと帰れない。
高いのどうのって文句は言っていられない。
少しの時間でも、行って、なにかできればと思って。」

北海道への交通費を稼ぐため、中島さんは仕立ての内職に加えて、障害者向けのグループホームの寮で仕事をしています。

中島誠生さん
「お風呂ちょっと待ってね。
いま水替えたから。」

夕方5時から、翌朝9時までの夜勤を週に3回。
ひと月13万円の収入です。
ここからなんとか生活費や交通費を捻出しています。
“自分が家族を支えていかなければ”という強い思いがあるのです。

 

仕事に追われる中島さんが大切にしているものがあります。
母かつゑさんからの手紙。
見知らぬ土地で仕事を始めた中島さんを、いつも励ましてくれていました。

 

中島誠生さん
「(手紙は)心の支え的なもの。
これがあるっていうだけで、ちょっとした時に頑張れるかなって。」


 

ふるさとに暮らす年老いた母、そしてわが子。
家族を支え、守るため働き続ける団塊の世代です。

団塊世代の責任感 家族の“とりで”に

阿部
「自分が親も子も支援して家を守っていかなければらない、そうした強い責任感から負担が大きくなっているという状況もあるんですね。」

和久田
「専門家は、高齢となった団塊世代が今も家族を支え続けている現状について、社会保障制度の見直しも含めた新たな仕組み作りが必要だとしています。」

家族社会学が専門 放送大学 宮本みち子教授
「団塊の世代がいわば家族の最後の“とりで”として機能している。
全部抱え込んでいるわけですね。
これは意識の問題もあるし、日本の社会の仕組みそのものも余儀なくしているところがある。
そういう点で、苦労をしょい込んでいる団塊の世代の実情というものに、きちんと焦点を当てて、適切な支援が必要だろうと思います。」

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