これまでの放送

2016年4月6日(水)

導入から20年あまり その実態は…

和久田
「全国で問題となっている、労働力不足。
極めて深刻な地方では、倒産する中小企業も少なくありません。
こうした中小企業が頼らざるを得ないのが、『外国人技能実習制度』です。
『外国人』が最長で『3年間』、技能の習得を目的に日本で働くことができる制度で、中国、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイなどを中心に現在、およそ17万人の実習生を受け入れています。
しかし、近年の経済発展などから、こうした国からの労働力の獲得も思うようにいかない状況となっています。」

阿部
「こうした中、注目を集めているのが、アジア最後のフロンティアとも呼ばれる、ミャンマーです。
制度の導入から20年あまり。
岐路を迎えた、外国人技能実習制度の現場を取材しました。」

このままでは激減!? 労働力不足支える外国人

リポート:大西由夏(NHK松山)

ミャンマー最大の都市、ヤンゴン。
今年(2015年)1月、愛媛県の中小企業の経営者たちが訪れました。



 

代表の野田實さんです。
目的は、ミャンマーから技能実習生を受け入れるためです。



 

外国人技能実習生受け入れ団体 代表 野田實さん
「地方で、今の状況だと人材が集まりにくい。
優秀な人材を愛媛に、そうしたら、いろいろな問題点が払拭(ふっしょく)できる。」


 

日本国内、とくに地方で深刻になる労働力不足。

松山市にある野田さんの縫製工場です。
かつて300人近くが働いていましたが、事業の縮小を余儀なくされました。
その後も、労働力不足に悩まされる中、頼りにしたのが、中国やベトナムからの技能実習生です。

 

今や従業員の3分の1を占めるほどになりましたが、ここ数年は、母国の経済発展によって賃金水準が上昇。
日本で働きたいと希望する人は少なくなっています。


 

そこで、野田さんが期待を寄せたのが、5年前から民主化が始まったミャンマーです。
アジア最後のフロンティアとも呼ばれるミャンマーで、いち早く労働力を確保しようと考えたのです。

外国人技能実習生受け入れ団体 代表 野田實さん
「(技能)実習生がいなければ、企業は、もたない。
人材が日本に来てほしい。
地方に来てほしい。」

この日、野田さんは現地の縫製工場を訪れました。
ミャンマー人の技術レベルは、日本でも通用するかチェックします。



 

外国人技能実習生受け入れ団体 代表 野田實さん
「速い、手つきが、ものずごくいい。
このレベルの人たちならみんなほしい。」


 

思っていた以上の技術力に驚いた野田さん。
さっそく、実習生を送ってもらいたいと依頼しました。

外国人技能実習生受け入れ団体 代表 野田實さん
「日本に(人材を)送り出してもらえれば、ありがたい。」

しかし、工場の経営者から返ってきたのは、思わぬ答えでした。
 

ミャンマーの工場経営者
「(会社にとっては)1年間ならまだしも、3年間も日本に行くのは長すぎます。」


 

ここ数年、外国資本の企業の進出が相次ぐミャンマー。
経済発展とともに、国内でも労働力不足が起きているというのです。

外国人技能実習生受け入れ団体 代表 野田實さん
「(3年間、日本で学べば)さらに優秀になって戻ってくると思う。
そういう考え方は持てないでしょうか。」

ミャンマーの工場経営者
「優秀になって帰って来たら、給料のいい会社に移ってしまう。」

人材を手放そうとしない、ミャンマーの現地企業。
技能実習生の獲得は簡単ではありませんでした。

現地の人材派遣会社とも交渉した野田さん。
ここでも、思いも寄らぬ現実に直面しました。
アジア各国がミャンマーの労働者を求め、賃金が高騰。
民主化によって、海外渡航が緩和され、空前の出稼ぎブームが起きていたのです。
 

ミャンマーの人材派遣会社
「日本にはないが、シンガポールとマレーシア、タイには送ったことがある。」


 

外国人技能実習生受け入れ団体 代表 野田實さん
「本当に危機です。
(今後)技能実習生で来てくれる人たちは、激減するんじゃないかと。
難しくなる。」

厳しい現実をつきつけられた野田さん。
何とか実習生を確保するために打ち出したのが、ミャンマー政府との協定です。
愛媛県の協力を得て、適切な賃金の支払いや、受け入れに伴う待遇を保障することで、ミャンマーから人材を送ってもらう約束をとりつけました。
 

野田さんがミャンマーを訪れてから2か月。
愛媛県にとって初めてとなるミャンマー人の技能実習生、2人が来日しました。
受け入れ先は、野田さんと付き合いのある食品加工会社です。
受け入れにあたり、待遇は最善を尽くしました。

 

寮は、150平米の一戸建て。
家賃は光熱費込みで月1万円です。
コメや野菜などの食料も会社が提供します。


 

ミャンマー人 技能実習生
「もしもし、聞こえる?」

家族と毎日話したいという要望に応え、インターネットを自由に使える通信環境も整えました。
労働力不足の中小企業を支えてきた、外国人技能実習制度。
年々厳しくなる技能実習生の確保に、野田さんは不安を感じています。

外国人技能実習生受け入れ団体 代表 野田實さん
「人の確保は非常に難しく、また大事だと思う。
日本人がいれば、日本人がいいと思うが、不足する部分は、どうしても海外の助けが必要。
何とか頑張って進めていければ。」

確保が難しくなる 外国人技能実習生

和久田
「ここからは取材にあたった、松山放送局の大西記者。
そして、雇用問題にお詳しい、日本総研の山田久さんとお伝えします。」

阿部
「まず大西記者、この技能実習生の確保はあそこまでしないといけない難しい状況になっているんですね。」

大西由夏記者(NHK松山)
「今回、野田さんに同行してみて、日本で働くことに魅力を感じるミャンマーの人が、それほど多くないということに驚きました。
愛媛県では、福利厚生など、手厚い待遇が技能実習生にとって魅力だとしていますが、時給は、県内の最低賃金と同じ696円です。
また、国内の外資系企業や日本以外の国で働く方が、賃金も、身につく技術も上と考えている人が多く、このままでは、ミャンマーからも技能実習生を確保できなくなる日も遠くないのではと思わされるほどでした。
こうした状況は、国も把握していて、制度の見直しも検討しています。
その1つとして、3年に限られていた技能実習生の在留期間を最大5年に延ばす方向で協議を進めています。
ただ、労働力不足の抜本的な解決につながるかは未知数です。」

和久田
「そして山田さんにも伺います。
導入から20年以上が経過した、外国人技能実習制度ですが、こうした状況をどう捉えていらっしゃいますか?」

日本総研 チーフエコノミスト 山田久さん
「この20年前で、アジアでかなり経済発展した結果、アジアの賃金がかなり上がってきているわけです。
その結果として、さらに人手不足が、もうアジアの方で起こっているんです。 そう簡単に人が取れないということですね。
それから、韓国とかシンガポールの企業も現地に進出して、いわば、人材の獲得競争というのが、アジアで起こっているんです。 これまで日本は、この外国人技能実習制度っていうことで、制度自体は技能実習ということなんですけれども、実体的には、安い労働力、安い外国人の活用というような形で使われてきたことがあったわけですけれども、それがかなり限界に来ているということなんじゃないかと思います。」

労働力としての 外国人と どう向き合う

阿部
「では、この状況が大きく変わる中で、労働力としての外国人とどう向き合っていったらいいんでしょうか?」

日本総研 チーフエコノミスト 山田久さん
「これまでは、実体的には労働力を安く使うっていうような形であったんですけれども、やはり生活のある人として外国人の方を受け入れていく、そういう正面から制度を見直していくっていうことが必要だと思うんですね。
実は、お隣の韓国も日本と同じような問題に直面していまして、約10年前に制度を抜本的に見直したんです。
それが、参考になるんだと思います。
具体的には2つポイントがあると思います、この制度を変えていく時に。
1つは、日本人の仕事を奪わないということを前提に、外国人の方を日本に労働者として受け入れる。」

阿部
「雇用は守るということですね。」

日本総研 チーフエコノミスト 山田久さん
「はい。
ただ一方で、外国人の方の処遇を日本人と同等以上の処遇で、しっかり保障していくっていうのが、まず1点目ですね。
それから、もう1つが、外国人労働者は、基本的には一定期間で帰国してもらうということを前提ですね、これ原則なんですけれども、結果として、長く日本で働く方も出てくると思うんです。
そういう場合は一定の条件、例えば、語学力が十分ある、あるいは、技能レベルがある、あるいは、素行で問題がないっていうような、そういう条件をクリアする場合に限って、永住権を認めていくと。
いわば、段階的な移民受け入れの道を開くことで、外国人の方にとって、日本が魅力のある国っていうふうに写るようにしていくっていうことが重要なんだと思います。」

Page Top