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2016年4月5日(火)

“キッチン付き”レンタルスペース 若者に人気 その背景は…

「かんぱーい!」

一見、普通のレストランに見える、こちらの場所。
キッチンをのぞくと…。

 

料理をしているのは、実はお客さんです。
ここは自分たちで料理をする“キッチン付き”のレンタルスペース。

利用者
「うん、おいしい!」
 

今、若者を中心にこうしたキッチン付きの場所が人気になっています。
何が若者たちを引き付けるのか。
その背景に迫ります。


 

阿部
「大人数で食事というと、レストランか居酒屋だろうと思ってしまうのですが、新しい場所が出てきているんですね。」

和久田
「この“キッチン付き”レンタルスペース。
これまでにも時間制で借りられる場所としては、会議室やスタジオなどがありましたが、キッチン付きで借りられる場所のことです。
自分たちで料理をするという手間がかかるんですが、そのプロセスも含めて若い人を中心に人気なんだそうです。
その背景には、最近の若者像も浮かび上がってきます。」

“キッチン付き”レンタルスペース 若者に人気の背景は

夜桜を楽しみながら集まっているのは、20代から30代の若者たちです。
会場は築90年以上の古民家。
キッチン付きのスペースとして貸し出されている場所を利用しているのです。
大きな理由は価格の安さです。

利用者
「コスト安く済む。」

備え付けの調理器具や食器は、自由に使うことができます。
食材や飲み物は、自分たちでスーパーなどで用意。
この日の費用は1人2,000円でした。


 

メインは水ギョーザ。
あえて皮から作ります。
このほかカレーやオードブルなど、あわせて7品を作りました。
利用料は5時間の貸し切りで1人2,000円。
食材や飲み物をあわせても4,000円でした。
 

利用者
「普通に居酒屋に行ってコース料理が出てきても、それなりにお金もかかるし、ここなら自分たちで料理作らないといけないが、すごくいい雰囲気で、こっちのほうが豊かな、ぜいたくな時間になっている。」

 

こうしたニーズを受けて、キッチン付きスペースが急増しています。
このレンタルスペースの紹介サイトには、現在、東京都内を中心に全国500か所以上が登録。
この半年間で2倍に増えています。

 

紹介されている中には、営業時間外のバーやカフェ。




 

また空き家になった一戸建てなどもあります。
いわゆる「民泊」と同じように、使われていない場所を有効に活用するのが狙いです。
人気の場所では、多い月には、レンタル収入が100万円近くになるということで、不動産の新たな活用手段として注目されています。
 

こちらは、かつて飲食店の厨房でした。
都内の家具の輸入会社が事務所として借りたビルのワンフロアのうち、使わない厨房を貸し出したところ、予約が相次いでいます。


 

スペースを貸している 家具輸入会社
「ほとんど毎日(予約が)入っている。
こんなに反響があるとは思っていなかった。」


 

スペース紹介サイト 重松大輔社長
「提供する側は、空いている時間帯を有効活用して、適正な収益を得ることができる。
空いているスペースは見渡すといっぱいあるので、そこをどんどん活用しようと。」

キッチン付きスペースに引かれる若者たち。
そこからは、新たな価値観も見えてきます。

都内のIT企業に勤める川上千晴さん。
職場ではパソコンを使った仕事が中心で、社員同士が直接会話をする機会はあまりありません。
都内で一人暮らしをしている川上さん。
同僚とはスマホでも繋がっていますが、たまには集まって一緒に何かをしたいと考え、キッチン付きのスペースを初めて利用することしました。

川上千晴さん
「食べる時間とか、一緒に食べる人とか、みんなでいい時間を作って食べようよみたいな。」



この日、川上さんと一緒に集まったのは部署も違う若手社員たち。
みんなで魚をさばいて、料理しました。
慣れない人も多く、戸惑いながらも会話が弾みます。


 

若手社員
「身がぼろぼろ。」

若手社員
「大変だな、料理している人って。」
 

川上さんは、アジのなめろう作りに挑戦。

若手社員
「もっと下半身使ったほうがいい。」

若手社員
「腕だけでやろうとしているから。」

若手社員
「リズミカルに!」

4時間かけて作ったのは、煮付けや唐揚げなど。
これまでの飲み会では得られないひとときになったようです。

若手社員
「作っている中で会話が生まれて、先輩と交流が生まれた。」

若手社員
「ふだんしゃべらないので。」

若手社員
「今日、初めてぐらい。」

「ふだんは全然しゃべらない?」

若手社員
「部署も違うしね。」

若手社員
「一人で料理をトントンするよりも、みんなで同じものに向かって、『ああでもない、こうでもない』が楽しい。」


 

話:川上千晴さん
「プロセス(過程)をみんなで楽しんで、結果、何ができるかなとわくわくして、焦げたりもするけど、食べてみておいしくできたとか、みんなで共有できるのがすごく楽しい。」

“安さ”だけでない魅力

阿部
「若い人たちが料理にかける時間、手間をいとわないのは意外な気がしましたね。」

和久田
「そうですよね。
では、スタジオには取材にあたった吉武記者です。
皆さん、本当に楽しそうでしたし、自宅に招くよりも気軽に利用できそうですね?」

吉武洋輔記者(報道局遊軍プロジェクト)
「そうなんですよね。
家に呼ぶ場合って、招くほうも部屋を片付けないといけないですし、招かれるほうも何となく気を使ってしまいますよね。
また、一人暮らしの若い人の家ってそんなに広くはないので、呼べる人数も限られますし、キッチンも狭いんですよね。
そんな若者たちの“みんなで手軽に利用したい”というニーズに今回の場所はマッチしているんだと思うんですね。」

“手間”をあえて楽しむ

和久田
「そうは言っても“お金を払ってまで料理をしに行くというのは、ちょっと面倒だな”という人もいるんじゃないですか?」

吉武記者
「そう思う人もいると思うんですね。
ただ、今の若い人たちは面倒なこと、手間がかかること自体に価値を感じているんですね。
例えばほかにもありまして、一杯ずつ丁寧にドリップするコーヒー、時間をかけていれるコーヒーの人気が出たり、音楽でも今、簡単にネットから聞けますけど、あえてレコードを買って、針をレコードに乗せてゆっくり聞く時間を楽しんでいる人もいるんですね。
こうした若者たちの感覚について、専門家に聞いてきました。」

若者の動向に詳しい ライター 牛窪恵さん
「ふだんの生活では、いかに効率化するかや短い時間でいろんなことをこなすかが求められる。
逆に“手間暇をかける”ということがすごく文化になっている。
実際に会うからこそ、みんなで思い出を共有できる、その価値が重要視されている。」

変わる若者の価値観

阿部
「手間暇をかける文化ですか、若者の価値感が変わってきているんですね。」

吉武記者
「そう感じます。
あえて手間や時間をかけてでも、何かを実感したいという若者たちの志向というのは、今、ちょっと弱いと言われている個人消費を考える上でも重要になってくると思いますし、さらには、これまで“いかに安く”とか“いかに便利に”という効率を求めてきた私たちに対しても、何か大事なことを問いかけているように感じました。」

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