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2016年4月4日(月)

消える? 地方の介護の担い手は

阿部
「『介護の担い手』が消えかねない事態が明らかになってきました。」

和久田
「先月(3月)下旬に経済産業省が公表したデータです。 『介護人材の確保が困難な地域』は、2015年時点では、全体のおよそ10%。 これが20年後には、『確保が困難』な地域は、全体の40%余り。 4倍以上に増加します。
中でも増えているのが、地方の都市や過疎地域などです。」

阿部
「この要因は、『人口減少』です。
高齢化が進む一方で、介護の主力をになう年代が急速に減少していくため、高齢者の数に見合うだけの介護の人材がいなくなるというのです。」

和久田
「地方の介護現場の模索を取材しました。」

待遇改善で介護人材を確保

人口6,700人余りの熊本県高森町です。
人口減少が進み、介護の主力になる20代・30代は、この20年で2割減少しました。




この町で、唯一の特別養護老人ホームです。
入所を待つ「待機高齢者」は増加傾向にある一方で、年々、介護人材の確保が難しくなっています。



 

特別養護老人ホーム ひめゆり 田代元樹施設長
「以前はこう(人材の確保が難しく)ではなかったなというのが本当に実感。
本当にすごく危機感を感じている。」


 

そこで、この施設が取り組んでいるのが職員の待遇改善です。

特別養護老人ホーム ひめゆり 田代元樹施設長
「給与は定期昇給を必ず行っている。」

この施設では、勤続年数が長ければ長いほど、昇給の幅が大きくなる制度を導入。
高卒で20年以上働いた場合の年収は平均で500万近くになり、町の公務員と同じレベルに達します。
待遇改善だけでなく、力を入れているのが、子どもを持つ職員への支援です。


岩下英美(いわした・てるみ)さん。
子ども3人を女手ひとつで育てています。
この日は、三女を連れて出勤。



三女
「行ってきます。」 

ここでは「学童保育」のように、子どもに職場の施設を開放をしています。
目の届くところで遊ばせることができるため、職員も安心して働くことができます。
職員から、育児などの理由で仕事を続けられないという声が上がったためです。
岩下さんも夜の勤務や急な勤務変更があっても、子どもの預かり先を探す必要がなくなりました。
ここでなら、長く働き続けられると考えています。
 

岩下英美さん
「子どもが小さいせいで、時間が融通きかず働けない方もいると思う。
目の届くところにいることで不安も消えて、安心感が持てるので働きやすい。」


 

さらに、子どもを持つ職員への支援はこれだけにとどまりません。

職員
「これはひらがなの“い”に見えてしまう。」



 

毎月1回、施設が開く無料の学習塾です。
経済的な負担を少しでも軽くするため始めました。
こうした努力もあり、離職率は全国平均を大きく下回っています。

最新機器で介護の効率化

人手が増える見込みがない中、介護の質をどう確保していくのか。
青森県むつ市にある特別養護老人ホームでは、最新の介護機器の導入で乗り切ろうとしています。



 

職員
「こちらが走行リフトになります。」



 

まずはこちら、「走行リフト」。
1人で歩くことが難しい人をベッドから車いすに移したり、入浴させたりする際に使います。
これまでは2人以上で行っていた作業。
導入後は1人でも可能になりました。


さらに入居者の記録は、タブレット端末での入力に変えました。
入居者を見守りながらでも入力ができるため、勤務時間の短縮につながっています。



 

職員
「会話もしながら記録も打てるのでいいと思う。」



 

職員
「私がそばにいた方が安心?」

入居者
「安心ですよ。」

最大の課題は、夜の時間帯。
日中よりも体力的な負担が大きく、人手の確保がより難しくなっています。


夜間は、60人の入居者に対し職員が3人。
国の基準を満たしているものの、少ない人数で介護にあたらなければなりません。

職員
「きょうも1日、お願いします。」

 

1時間に1度、異常がないかすべての部屋を見て回ります。
入居者が立ち上がると転んでけがをするおそれがあるため、気が抜けません。




そこで、施設は半年前、はいかいが多い人など3人が暮らす部屋に、赤外線カメラを利用した新たな見守りシステムを導入。




 

特別養護老人ホーム みちのく荘 浜辺将志さん
「起き上がったとする。




このアラームが作動する。
カメラで撮っている映像が確認できる。」



 

入居者がベッドから起き上がったら、音で知らせるだけでなく、入居者の様子を映像で確認できます。
プライバシー保護のため入居者の影だけが映る仕組みです。




離れたところからでも、今すぐに介助に向かう必要があるかどうか、優先順位を判断することができます。

「(行かなくて)大丈夫?」

特別養護老人ホーム みちのく荘 浜辺将志さん
「布団の上に座っているだけなので、今は(行かなくて)大丈夫。」

 

映像を見た上で駆けつけなければいけないケースもありますが、何をしているのかがあらかじめわかるので安心だといいます。
この夜、「見守りシステム」のセンサーが反応したのは少なくとも17回。
そのうち7回は、映像を見ることで「転倒のおそれはない」と判断することができました。

 

特別養護老人ホーム みちのく荘 浜辺将志さん
「今のシステムがあることで、精神的にはだいぶ軽減。
人数がいないならいないなりに、どうやっていくのか、サービスの質を落とさず介助・ケアしていくか常に考えながら行っている。」

働きやすい介護職場 地方で可能か?

阿部
「ここからは、取材した清水記者とお伝えします。
熊本の施設では手厚い待遇改善を実現していましたが、他の施設でもあのような取り組みはできるものでしょうか?」


 

清水瑶平記者(特別報道チーム)
「この施設のように、地方の介護施設は大都市部と比べると土地代や人件費が安くすみますので、給与面も含めて待遇改善をしやすい環境にあるといえると思います。
それから、子どもへの施設の開放というのがありましたが、これは新たな設備投資もいりませんし、月に一度のいわゆる“学習塾”は、職員が業務の合間に教えているので、新たな人件費もかかりません。
同じような工夫ができれば、他の施設でもできる可能性はあると思います。」

介護の効率化 課題は

和久田
「一方で、青森県の施設では最新の介護機器を導入していましたが、お金がかかりそうですね。」

清水記者
「そうですね。
確かに資金面の課題は大きく、こうした機器を導入している施設は、まだごく一部にとどまっています。

例えば紹介した『見守りシステム』は1台につき50万円余り、そして入居者を持ち上げる『リフト』にはおよそ2,000万円の経費がかかっています。
ただ、取材した施設では、こうした高額な機器であっても、将来、介護の担い手がいなくなりかねない事態に対応するには不可欠だと考えて、先行投資をしている状態です。
こうした取り組みはまだ始まったばかりですが、『担い手がいない』ということを前提に、新たな介護のあり方を見いだしていくべき時期に来ていると感じました。」

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