2018年05月21日 (月)本当に「筆」で描いています!


おはよう日本の平日朝6時台のコーナー「イラスト解説・ここに注目!」を、みなさん、ご存知ですか?
個性あふれる絵とともに、日々のニュースの背景や意味をコンパクトに解説するコーナーです。 china1.jpg

たとえば日中首脳会談。日々のニュースだけでは見えない、日中双方の思惑、そこにアメリカはどう絡んでいるのかを、ひと目でわかるようなイラストになっています。

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たとえば夏場所への出場が注目されていた横綱稀勢の里。横綱の意志と、周辺からの心配の声を、工事中の橋を渡る姿に見立てて、1枚の絵に盛り込んでいます。

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この「ここに注目!」コーナーのロゴがこちら。筆でズバッと絵を描いているイメージです。

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 こうした独特の味わいのある絵を毎日描いているのが、イラストレーターの泊明(とまり・あきら)さんです。泊さんはどんなかたで、どんな思いでイラストを描いているのか、お話をうかがいました。

 

○もう20年以上、このコーナーのイラストを担当

このコーナーを担当して、もう20年以上になるのでしょうか。解説コーナーの「ここに注目!」は、かつては「おはようコラム」という名前でした。「おはようコラム」が始まったころに、上司から「このコーナーの絵をお願い」という感じで任命されました。 当時は、日々の政治経済や国際などのニュースに特別関心があるわけではなかったのですが・・・。 仕事として、ニュースに関わる仕事をなんとなくやらせていただくようになって・・・、以来ずっとこのコーナーのイラストを担当しています


○絵を描くのが好きな子どもが、そのまま絵の仕事に・・・

子どものころから絵を描くことが大好きで、ヒマさえあれば絵を描いていました。油絵も、水彩画も。 いや美術部っていうわけではなくて、部活は小学校中学校時代は剣道と野球をやっていました。 実は野球では巨人の元監督の原辰徳さんが同じ中学校の野球部の1年先輩でした。もちろん原さんは当時からすごくうまかったです。私は絵は好きだったけれど、絵だけではない学生生活でした。screen1.jpg 高校卒業後、絵に関係した仕事をしたくて、デザインの専門学校に通いました。その後、フリーでTシャツやトレーナーのデザインを請け負う仕事をしていました。そして、いまの会社「スタジオR」に入りました。 この「スタジオR」には沢山のイラストレーターがいて、日々NHKのお仕事に携わっています。仲間たちから多くの刺激を頂き、一緒に切磋琢磨しています。私は、最初は教育番組のフリップとかパターンといわれるボードのイラストを担当していました。NHKスペシャルの「地球大紀行」の特撮用の絵を描いたこともあります。いろいろなことをやりながら経験を積んで、いまのニュースの解説コーナーのイラストを始めることになりました。

 

○毎日、解説委員と打ち合わせしてイラストを決める

放送前日に、翌日の「ここに注目!」を担当する解説委員と打ち合わせをします。 meeting1.jpgまず委員から「こういう解説をしたい」という話をうかがいます。こちらからも、いろいろと質問して、お話をしながら、一緒にイラストを作っていく感じです。 このディスカッションで絵が生まれていく過程がとても楽しいです。meeting2.jpg委員は各分野の専門家ばかりなので、やりとりはとても勉強になるし、いろいろな知識をいただくこともできます。 委員によって、絵のアイデアをすでに考えてくださっているかたもいます。私に任せてくださるかたもいます。打ち合わせの時間は、短くて30分間、長いときは2時間です。
USA1.jpgアメリカ大統領選のこのイラストは、2人の戦いを「ハロウイン」に重ね合わせるアイデアで描きました。カボチャの中から要素が出てくる形にして。わかりやすさと面白さの両方をねらってみたのですが・・・。
Trump2.jpgトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の関係を描くために「ダンスパーティ」の設定を使いました。一見普通に踊っている2人が、実はボールの上で踊っている、という流れにしました。普通に踊っている姿がそのまま、グラグラのところで踊っている姿になるのが、なかなか難しい絵でした。

 

○鉛筆で描いて、筆で色をつける

イラストの制作は、とてもアナログです。enogu1.jpg まず紙に鉛筆で下書きします。鉛筆で何度も描き直しながら、構図を決めていきます。 ちなみに似顔絵を描くときには、そのかたの特徴を強調しています。例えばトランプ大統領なら、髪型が重要です。安倍首相なら、目もとからおでこのあたりが安倍さんっぽくなると、グッと似てきます。女性の場合はあまり誇張できないので難しいです。特に美しいかたは難しい。 ennpitsu1.jpgそんなこんなで、鉛筆で描いた線にペン入れして、下書きができあがります。 fude1.jpg次に、パレットに、何種類も絵の具を入れて、色を作りながら、筆で色を付けていきます。 nuru1.jpg紙、鉛筆、ペン、パレット、筆・・・。「イラスト解説・ここに注目!」のロゴには筆の絵が描かれているのですが、本当に筆で描いているのです。 絵が仕上がってから、最終段階でコンピュータに取り込んで、字などを入れて仕上げて、画像を納入します。fude2.jpgもちろんニュース番組なので、急きょ解説のネタが変わって描き直しすることもあります。そんなときは、とても慌てます。fude3.jpg 制作作業は毎日の仕事です。毎日ちがうものを時間内に描かないといけないので、ある意味ではスピード勝負です。そう考えればもっと最初の段階からコンピュータで、ソフトを使って作業をしたほうが効率はいいのですが、ただ、なんだか、手書きの筆圧、ぬくもり、あったかみが、絵の力になっている気がして・・・。 どこまでコンピュータの力を借りるかという点では複雑な思いをもっています。

 

○オンエアを見ると反省ばかり

オンエアを見ると、反省ばかりです。 イラスト全体の構図が、うまくいっていないなとか、情報が多くて、説明的になりすぎているなとか。 わかりやすくしようとすると、絵でなんでも説明しようとしてしまって・・・。 senaka1.jpg割り切って、すべてを絵で説明せずに、大事な点が直感的に伝わるように描かないといけないなと、よく感じています。
Fujiisan.jpg藤井さんのことは個人的に応援しています。このイラストの構図は自分では気に入っています。藤井さんのことが好きなせいか、似顔絵もうまく描くことができたのではないかと思っています。
kokkai.jpg建物や事象を人間に見立てる擬人化のイラストが好きです。なかでも、この国会の擬人化、「国会くん」は好きです。国会くんに荷物を背負わせたり、怒らせたり、泣かせたり、いろいろやってもらっています。
France.jpgマクロン大統領をナポレオンに重ね合わせるという発想がよかったかなと思っています。与党と野党が、馬を違う方向に引っ張ろうとしていて、馬を向かわせている方向はまた別で・・・、というふうに1枚のなかにすべてを盛り込むことができたのではないかと。

 

○「泊明(とまり・あきら)」は本名

ところで「おはよう日本」には、放送の前日から局内に泊り込みで番組を制作する「泊まり」というシフトがあります。泊まり勤務で放送を終えたあとは帰るだけ。この日の勤務は「明け」といわれます。 ということで「泊明」というお名前は、おはよう日本にちなんで、「泊まり」と「明け」を組み合わせて作ったペンネームではないかと聞いてみると・・・

そう、よく言われます。ペンネームではないですかと。でも、これは「本名」です。 meeting3.jpgちなみに私は双子で、私と同じ顔をした男がもうひとりいるのです。彼は「泊聡(とまり・さとし)」です。デザイナーの仕事をしています。

 

tomarisan-e.jpgはじめて自分の似顔絵を描きました。自分の写真を見ながら描きましたが、どうでしょうか。自分では、自分のことを、こんなふうにイメージしています。 

 

○「おもしろかった」より「よくわかった」が嬉しい

「ここに注目!」をご覧になったかたから「よくわかった」「この問題が理解できた」と言っていただくときがいちばん嬉しいです。見た人に、こちらから「どうだった?」と聞いて、「うーん・・・」と言われてしまうこともあって、そんなときはガックリですね。 「イラストがおもしろかった」と言われるより、「よくわかった」と言われるほうがやっぱり嬉しいですね。イラストによって、楽しく、無理なく、よくわかってもらうために描いているので。

 

○もっとわかりやすく、おもしろい絵を描きたい

ニュースによく出てくる人の顔を描いているので、日々のニュースも自然と気になりますよね。あの人、あのときはああだったけど、こうなったのか・・・とか。ニュースの登場人物に愛着がわいてきます。また、いまは社会情勢とか風刺のような絵を描く人が少なくなっているので、自分の絵を、絵本の形でまとめられないかとも思っています。 up1.jpg一方で、いまの描き方のままでいいとも思っていないです。絵を見るかた、視聴者のかたが、どういうものを見たいのか。どうすれば、もっとこちらのねらいを伝えられるのか。よく考えています。 もともとデザインの仕事をしていたので、いまも新しい発想で何かに挑戦することが好きです。もっとわかりやすい絵を描きたい。しかも、おもしろい絵を描きたい。いまのスタイルではない描き方もどんどん取り入れたいですね。

 

みなさん、泊さんのお話、いかがでしたか? これからも「ここに注目!」にご注目ください!

投稿時間:22:10

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