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新潟 長岡 過去の水害の教訓生かす 早期の避難呼びかけ

新潟 シリーズ「水害に備える」②
  • 2023年05月29日

信濃川 梅雨を前に進む備え

5月25日、長岡市内の信濃川で河川事務所や市の職員などが合同で、洪水時にリスクの高い箇所の点検を行いました。

これは梅雨を前に毎年行われていて、職員たちは堤防が壊れるのを防ぐために使う道具などを確認しました。

国土交通省信濃川河川事務所 山邉満副所長
「備蓄しているものは、古くなったり劣化したり壊れたりしているものがないか確認することが重要です。大人でも膝まで水が来ると歩くことができなくなります。市からの避難に関する情報、高齢者等避難だったり避難指示だったり発令された場合は、ちゅうちょせずに命を守る行動、速やかな避難をお願いしたい」

水害の教訓生かす長岡市の試み

信濃川では4年前の10月、台風19号の大雨で水位が上昇し支流の水が逆流するバックウォーター現象が発生。市内で100棟以上の住宅が水につかる被害が出ました。

市は水かさが増したのが夜中だったことから避難の安全などを考えて浸水した地域やその周辺に避難勧告や指示を出さず、避難準備の情報を出したのは川が氾濫したあとでした。この教訓を生かそうと長岡市は、どうしたら速やかな避難を実現できるのか検討しました。

そして長岡市がよくとしから運用を始めたのが、信濃川で氾濫のおそれがある場合にいち早く知らせる市独自の「信濃川早期警戒情報」です。具体的には▼大手大橋付近の観測所で氾濫注意水位の到達や、さらなる水位の上昇が見込まれる場合や▼長野県など上流で著しい増水が見込まれる場合に、気象状況などを踏まえて発表します。

「高齢者等避難」や「避難指示」を出す前の段階で、浸水しない場所に車で避難したり同じ建物の上の階に避難する「垂直避難」をしたりするよう呼びかけています。

長岡市危機管理防災本部 入澤義和部長
「(台風19号のときは)上流の長野県のほうの水位が上昇した。その9時間後くらいに長岡市でも(観測史上)最高水位となった。時間軸に余裕があるので上流の水位の上昇と気象情報の予測のなかで早めに情報を出して安全に避難してもらう、その時間の中でいかに行動を起こしてもらうかが大事になってくる」

最大で19万人余り 避難も

長岡市のハザードマップです。中央を流れるのが信濃川で、JR長岡駅や市役所など市中心部は川に沿うように広がっています。信濃川の周辺の地域では5メートルから10メートル以上、長岡駅前の市街地でも3メートルから5メートルの浸水が想定されていて、かなりの範囲に広がっています。

市によりますと浸水が予想される地域の住民は最大で19万人余りと見込まれています。
このうち同じ建物の上の階に避難する「垂直避難」が可能なのは5万2000人にとどまります。
市が用意する避難所で受け入れ可能なのは9万8000人まででそのほかの4万8000人については浸水想定区域外に避難してほしいと考えています。

信濃川の上流にある長野県内で大雨が降ってから長岡市で水位が上昇するまで最大で11時間ほどあり、市では早期警戒情報を出すことで少しでも早く避難を始めてもらい、車の渋滞も避けられるのではないかと考えています。

また市の担当者は水が引くまで時間がかかることも想定し3日分くらいの水や食料を車に積んで避難できるよう準備してほしいと話していました。

課題は市民への周知 日頃からできる備えを

市が運用を始めた信濃川早期警戒情報ですが、市民の認知度の向上が課題になっています。市はこれまで住民参加型の避難訓練や自主防災会の代表などの研修会で警戒情報について説明していますが、まだ十分ではないとしています。

今後も引き続き、市政だよりやホームページを通じて周知を図る方針です。市民も大雨の際の避難場所や移動の経路についてハザードマップを見ながらいま一度確認するなど日頃から備えを進めてもらえたらと思います。

  • 豊田光司

    新潟放送局 記者

    豊田光司

    2017年入局。大阪局を経て2020年から新潟局に、2021年11月からは長岡支局で中越地方などの取材を担当。

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