卵 新潟は最安県?鳥インフルエンザで価格高騰・品薄影響
- 2023年03月17日
価格の変動が少なく「物価の優等生」とも言われる卵。国の統計では新潟は全国で最も卵が安いというデータがあります。しかしいま、県内を含め全国で鳥インフルエンザが相次ぐ中、価格が高騰し品薄になっています。県内の現状を取材しました。
(新潟放送局 野口恭平、野尻陽菜 記者)
新潟は全国で最も卵が安い!?
「新潟は200円で卵が買えるん?うちの方なんか安売りで250円よ!」
福島県に住む義母のことばです。最近は卵も値上がりしていて…と話していたところ驚かれてしまいました。
あまり気にしたことはありませんでしたが、他県との違いはどうなっているんだろうと思い調べてみることにしました。
参考にしたのは、総務省が生活上重要な支出となる商品の価格を調べている「小売物価統計調査」です。
47都道府県の県庁所在地で見てみました。
すると、新潟市ではいまの調査方法になった2018年1月以降、最新の2023年1月までほぼ毎月、卵の値段が全国で最も安いことが分かりました。(2020年7月、9月は2位)
例えば、こちらは23年1月のデータです(単位は10個入り1パックの値段・昇順)。
順位 |
地域 |
価格 |
順位 |
地域 |
価格 |
1位 |
新潟市 |
188 |
|
秋田市 |
252 |
2位 |
青森市 |
200 |
|
千葉市 |
252 |
3位 |
札幌市 |
209 |
|
横浜市 |
252 |
|
宇都宮市 |
222 |
|
長崎市 |
252 |
|
鹿児島市 |
235 |
|
徳島市 |
254 |
|
大分市 |
236 |
|
大津市 |
254 |
|
岐阜市 |
241 |
|
高松市 |
255 |
|
さいたま市 |
241 |
|
大阪市 |
255 |
|
熊本市 |
243 |
|
甲府市 |
255 |
|
水戸市 |
243 |
|
松江市 |
258 |
|
福島市 |
243 |
|
広島市 |
261 |
|
盛岡市 |
244 |
|
津市 |
262 |
|
奈良市 |
245 |
|
福井市 |
263 |
|
神戸市 |
246 |
|
松山市 |
265 |
|
宮崎市 |
246 |
|
名古屋市 |
268 |
|
前橋市 |
246 |
|
金沢市 |
269 |
|
東京・特別区部 |
246 |
|
富山市 |
270 |
|
山口市 |
247 |
|
佐賀市 |
272 |
|
岡山市 |
248 |
|
鳥取市 |
273 |
|
仙台市 |
248 |
|
和歌山市 |
275 |
|
山形市 |
249 |
|
静岡市 |
275 |
|
福岡市 |
249 |
|
高知市 |
288 |
|
長野市 |
249 |
47 |
那覇市 |
291 |
|
京都市 |
251 |
|
単純な全国平均の250円と比べると60円余り安くなっています。
どうして安い?
なぜ、新潟は卵が安いのか。スーパー各社に聞いていました。
まずあったのが「新潟は養鶏業者が多く、供給も十分なため安いのではないか」という指摘。
そこで、農林水産省の畜産統計を見てみました。
2022年のデータでは「採卵鶏」の生産者数が新潟県は48戸で全国15位、「養鶏羽数」は695.2万羽と全国8位。
確かに生産者数や飼育しているニワトリの数が比較的多そうですが、これだけが理由とは言い切れなさそうです。
スーパーの販売戦略にも注目してみました。
取材したどのスーパーからも「卵は消費者ニーズも高くチラシで特売情報を掲載しているが、他県以上に価格競争が激しいとは思わない」と言った声が聞かれました。
県によっては特売日に1パック無料で配るなど競争がより激しい地域もあるといいます。
一方、ある地元の大手スーパーの幹部からは、新潟の卵の価格が全国最安になった時期と「商品の値づけ戦略を見直し、特売重視からEDLP戦略(※)に切り替え始めた時期と重なる」という証言も得ました。
※Everyday Low Price(エブリディ・ロー・プライス)の略で、特売日を設けて値段を上げ下げするのではなく年間を通じて価格を低めで安定させる。
小売物価統計調査について総務省の説明はこのようになっています。
「各調査地区内で、調査品目ごとに販売数量又は従業者規模等の大きい店舗の順に、価格取集数に応じた店舗を調査店舗として選定している」
規模の大きな店舗の動向が地域の競争環境に影響を与え、卵が安くなっていったという可能性もありそうです。
鳥インフルエンザ相次ぐ 県内でも
一方、今シーズンは全国で鳥インフルエンザの発生が相次いでいます。
農林水産省のまとめでは、3月15日の時点で26道県で発生が確認され、処分対象のニワトリは1612万羽に上っています。
県内の養鶏場でも、これまでに鳥インフルエンザの発生が5件確認されていて、この中には採卵鶏の事業者も含まれています。
スーパーでは値上がり 一部で欠品も
“たまご最安県”の新潟でも影響が出ています。
長岡市にあるスーパー「安田屋」ではLサイズの卵、10個入りのパックを2022年は150円から190円ほどで販売していましたが、2023年3月中旬は100円以上引き上げ、290円ほどで販売しています。
取材した3月16日は卵の特売日だったため1パック248円で販売し、訪れた人たちが次々に買い求めていました。
鳥インフルエンザの感染が全国に拡大し、多くのニワトリが処分されたことなどから卵の価格が上昇していて、販売価格を引き上げざるを得ないということです。
買い物をしていた女性は「特売のチラシを見て来ました。品薄なのでしかたがないと思いますが、卵は日頃、よく食べるものなのでとても大変です」と話していました。
スーパーの山森瑞江店長は「独自のルートで商品は確保していますが、仕入れ値の上昇が止まらず利益はほとんど出ていません。日々の料理で必ず使う食品だと思うので欠品にならないよう何とか持ちこたえたい」と話していました。
「原信」を運営するアクシアルリテイリングのほか、県内のスーパー「ウオロク」、それに「チャレンジャー」にも取材しました。
それによると各店舗でも卵の購入を1人1パックに制限しているほか、日によっては欠品が出るなど影響が出ているということでした。
外食にも影響 看板メニューのオムライス値上げ検討
影響は外食にも広がっています。
「すかいらーくホールディングス」では運営している「ガスト」のパンケーキのほか「バーミヤン」の卵とあんかけをのせたチャーハンなどの販売を休止。
「日本マクドナルド」も「てりたま」シリーズのバーガーが店舗や時間帯によっては販売を休止している場合があると発表しました。
県内の飲食店も取材しました。
新潟市中央区にあるカフェレストラン「フラグレット」では、卵を3つ使っているというオムライスや半熟たまごをトッピングしたハンバーグが人気メニューになっています。
店では卵を毎月800個ほど使っていますが、仕入れ値は200個入りのひとケースが2022年3月は2400円だったのがことしは3500円と、1.5倍近くに値上がりしたということです。
材料費や電気代などのコストが上昇するなかでも、カフェならではの味をできるだけ手ごろな価格で楽しんでもらいたいと、オムライスなどの価格を1700円あまり(税込み)で維持してきました。
しかし鳥インフルエンザが全国に広がり卵の値上がりが続くなか、店では4月以降、メニューの値上げを検討しているということです。
吉田康二店長は「知り合いの菓子店からは『卵が手に入らない』という声も聞こえてくる。私たちも卵が手に入らなくなった場合を想定して、ほかのメニューを試作するなど対応を考えていきたい」と話していました。
影響はいつまで
こうした価格高騰はいつまで続くのか。
これについて県内のスーパーの間では「半年は今の状況が続く」とか「価格が落ち着くには1年近くかかるのではないか」など見方が分かれていました。
多くのニワトリを処分せざるを得なくなっている現状を考えると影響は長期化する可能性があり、家庭でもビジネスでも、もうしばらくの辛抱が必要になりそうです。