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新発田市・女性殺害裁判 被告に無期懲役の判決

  • 2022年11月24日

新発田市で女性を相次いで襲ったとして無期懲役が確定している39歳の男の被告が、一連の事件とは別に20歳の女性を殺害した罪に問われた裁判で、今月18日、裁判所は無期懲役を言い渡しました。無期懲役の判決がすでに確定していた被告が別の殺人の罪に問われた異例の裁判。焦点は何だったのか、そしてかけがいのない娘を失った家族の思いは。                                 (新潟放送局 油布彩那、髙尾果林)

 

無期懲役を言い渡されたのは喜納尚吾 被告(39)です。
新潟県新発田市で女性4人を相次いで襲いこのうち1人を死亡させた罪や、逮捕後に裁判所から逃走した罪などで2018年に無期懲役の判決が確定していました。
その後一連の事件とは別に2014年に同じ新発田市内で当時20歳の会社員の女性が運転する車に乗り込み、わいせつ目的で連れ去って殺害したなどとして服役中に逮捕・起訴され、あらためて殺人などの罪に問われました。

これまでの裁判で、検察は「すでに確定した罪とあわせて二重に処罰を下すことはできないが、刑の重さを判断する際に考慮することは許される」と主張し「身勝手極まりない無差別的な犯行で、立ち直りは期待できない」として死刑を求刑しました。
一方、弁護士は検察が証拠としている女性の車から検出されたDNA型について、被告のものだと特定はできないとしたうえで「目撃者の記憶も曖昧だ」として無罪を主張していました。

11月18日、新潟地方裁判所の佐藤英彦裁判長は「被害者の車から検出されたDNA型は被害者と被告のものと言えるうえ、現場付近で被告を見たという目撃者の証言から、常識的に考えて被告が犯人と認められる」と指摘しました。
そのうえで「被害者に落ち度はなく、強い殺意に基づく犯行だったことは明らかで身勝手極まりない。被害者の恐怖や絶望は筆舌に尽くすことができず結果は重大だ」と述べました。
一方で「遺族の死刑を望む気持ちは厳粛に受け止めなければならないが、過去の同種事案のほとんどが無期懲役の判決となっていて、死刑を選択することはできない」として無期懲役を言い渡しました。

※「喜納被告とは」 喜納被告は2013年に新潟県内で4人の女性を襲い、このうち1人を死亡させたとして逮捕・起訴されたほか勾留の手続きの途中で新潟地方裁判所の窓から一時、逃げだして取り押さえられる事件も起こしました。これらの事件については新潟地方裁判所で無期懲役の判決が言い渡され、2018年に最高裁で確定しています。その後刑務所に服役していましたが、おととし(2020年)になって警察が2014年に起きた女性殺害事件に関わった疑いで改めて逮捕。殺人などの罪で起訴され、10月17日から再び裁判が開かれていました。


判決のポイントは

被害者が1人の殺人事件で死刑が言い渡された例は限られていて、今回の裁判では、刑の重さを判断する上ですでに無期懲役が確定している過去の事件のことをどこまで考慮するのかが焦点となっていました。
すでに確定した罪を再び処罰することは憲法で禁じられていますが、最高裁判所は「確定した事件を今回の犯行に至る重要な経緯などとして考慮することは許される」という考え方を示しています。

今回の裁判で検察は「過去に確定した罪を再度処罰することはできないが、刑の重さを判断する際に事情として考慮することは許される」と主張し、死刑を求刑していました。

判決は、今回の事件がすでに確定している事件から間もない時期に起こされた経緯を踏まえ「常習性が非常に高い」と指摘した一方「過去の同種事案で死刑が言い渡されたケースとは残虐性や犯行後の状況が異なり同列には論じられない」として、死刑は選択できないと結論づけました。


判決の日の廷内スケッチ

喜納被告の様子は

裁判では、終始落ち着いた様子だった喜納被告。証人尋問などを行ったこれまでの裁判でも、検察官や証人を見ることはほとんどなく、裁判に関する資料に目を落とし、ペンで線を引くような動作をしたときもありました。

亡くなった女性の母親の弁護士から、「母親は『被害者の無念を晴らすため、真実を知らなければならない』と話したが、どう思いますか」と問われた際も、「気持ちは分かりますが、犯人は自分じゃないので申し上げられることは何もありません」と落ち着いた声で答えていました。

そして、判決のあと、裁判長から「裁判所としては被告に強い非難の気持ちを持っている。ご遺族の気持ちを真摯に受け止めてもらいたい」と声をかけられたときには、黙ったまま小さく数回うなづいていました。
 

判決のあと、女性の母親が弁護士を通じてコメントを出しました。

「娘が突然いなくなってから8年半という長い月日が経ちました。私たち家族にとって、娘を失った悲しみ、辛さ、悔しさは何年経っても変わらず、暗い闇の中にいる様です。私は今でも娘がいつものように『ただいま~』と帰って来るのではと、ふと玄関を見つめてしまう事があります。こんなにも会いたいのになぜ会えないのか、なぜこのような仕打ちを受けるのか、未だに受け入れる事が出来ません」

「被告が自らの言葉で真実を語ることもなければ娘の死を重んじることもなく、ひたすら自分の保身だけを心配し最後まで否定し続けました。本当に許せないし悔しい気持ちでいっぱいです」

「娘の無念を思えば、判決の結果に納得できない気持ちもあります。検察庁には控訴することを検討していただきたいと思っています」

今後、この判決が確定すれば、2つの判決が併存することになりますが、被告はこれまでどおり、無期懲役の刑として刑務所に服役することになります。

 

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