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2010年5月30日放送 再放送:6月6日
【アンコール】2010年8月22日よる放送

現実は精巧に造られた夢である
画家・長谷川潾二郎

出演

小栗康平さん(映画監督)
土方明司さん(平塚市美術館館長代理)

その画家は一枚の絵を完成させるのにひたすら待った。
愛猫が美しい毛並みをみせて心地よさげに丸まる初秋の日々を。
土の色が美しく輝き、緑がもゆる春の日を。
愛猫はひげを描けぬまま6年後に死んでしまったし、土の色には10年以上を要することもあった。
こんな調子だからとにかく寡作。画家の名は、長谷川潾二郎(1904-88)。

潾二郎は生前、ほとんど注目されることがなかった。描いたのは、自宅兼アトリエのあった東京・荻窪近辺の風景と静物画ばかり。そのうえ画壇からも遠く離れ、マスコミに取り上げられることも少なかった。その制作態度は極めて独特で、実物を目の前にしなければ描かなかった。だが、そうして完成した絵からは静謐(せいひつ)さの中にも夢幻的な美しさが漂う。近年、猫の絵を中心に徐々にその名を知られるようになり、今年は画集の出版や初めての大回顧展が相次ぐ。猫の絵は今や猫を描いた日本絵画の最高傑作とまでいわれている。
潾二郎はなぜ見なければならなかったのか。なぜ何年も待たねばならなかったのか。これまで多くが謎に包まれてきた。ところが近年、潾二郎が半世紀以上にわたり書きつづった日記、手記、デッサンの存在が明らかになった。そこから浮かび上がってくるのは、潾二郎が日常に潜む至高の美を見出し、その感動を画面に定着させようと苦闘を重ねる姿である。まるで一編の詩を、推敲(すいこう)に推敲を重ねて完成させていくような辛抱強い作業の果てに、自ら破棄してしまった作品も多い。
「現実は精巧にできた夢である」という謎の言葉を書き記した潾二郎。ただひたすらに待ち、描いた画家の生活と作品世界を新発見資料、遺族・関係者の証言を交え綴っていく。

VTRにご出演いただいた美術評論家・針生一郎さんは、5月26日にお亡くなりになりました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

関連展覧会

平明・静謐・孤高-長谷川潾二郎(はせがわりんじろう)展

巡回 北海道立函館美術館 8月28日~10月17日
宮城県美術館 10月23日~12月23日

スタジオを彩ったお花はこちら

写真

『猫』宮城県美術館所蔵


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