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2009年11月8日放送

夢と現(うつつ)をつなぐ色
絵巻「春日権現験記絵」

出演

若杉準治さん(京都国立博物館学芸部研究員)
宮いつきさん(多摩美術大学教授)

数万点に及ぶ皇室コレクションから選りすぐりの名品が一堂に会する「皇室の名宝」展。 そこで、700年前の人々の暮らしを生き生きと伝える、知られざる絵巻の傑作が公開される。 「春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)」。1309年、鎌倉時代末期に、春日大社に 奉納するために、宮廷絵師の高階隆兼(たかしなたかかね)によって描かれた全20巻の絵巻である。神がひき起こす不思議な出来事の数々が、ショートストーリー仕立ての57の物語で表されている。明治時代になって、皇室に献上された。
絵巻には、色鮮やかで驚くほど細密な描写が次々と出てくる。食事どきに飲み過ぎてしまった大工の酔った表情。深夜に灯明の油をねらうネズミのずるがしこそうな顔つき。犬から飛び跳ねる5匹のノミ。宮内庁の調査では、肉眼では見えない部分にまで、細かく色を使い分けていることが明らかになった。なぜ、そこまで色彩豊かに繊細に描かれたのか? 手がかりの一つは、夢の場面が多く登場することにある。ストーリーの主人公の男が眠っている、壁一枚へだてたところには、男の夢の中の出来事が、まるで実際に起きているかのように繰り広げられている。鎌倉時代の人々にとって、神仏のお告げである夢は、 現実と同じ重みを持っていた。色も細やかさも、夢に現実と同じリアリティを持たせる ための描写だったと考えられる。
最新の研究をふまえながら、この絵巻に込められた人々の思いを探る。

関連展覧会

「皇室の名宝」

東京国立博物館(上野) 11月12日~11月29日

写真

『春日権現験記絵』宮内庁三の丸尚蔵館蔵


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