2009年9月6日放送
岡崎乾二郎さん(造形作家・評論家)
山下菊二(1919〜1986)は戦後の事件や差別などの社会問題を題材に、土俗的でシュールな作品を描いた戦後の日本美術を代表する画家だ。生誕90年の今年、アトリエの調査が行われ、従軍時の様子を描いた200枚以上のデッサンなど、貴重な資料が次々と発見された。
山下は、戦争に反対できぬまま上官の命令に服従し続けた「戦争従犯者」としての責任を、描くことを通して自らに問い続けた。そして1952年、山梨県でおきた地主と農民の争いを描いた代表作「あけぼの村物語」が生まれた。そこには多彩なイメージが混沌(こんとん)と響きあい、加害者や被害者などといった単純な構図を越えた重層的な世界が広がる。
生涯、山下が描き続けたのは戦争や事件そのものではなく、それを通して見えてくる日本人の姿であった。なぜ日本人は強く因習や世論にとらわれる性質なのか。なぜ世界から戦争や差別は無くならないのか。その問いが、山下の絵画のなかには渦巻いている。
生涯自問自答を繰り返しながら、人間存在を問い続けた山下菊二の世界を照射する。
谷口董美、山下菊二兄弟 故郷のイメージを描く
| 会場 | 会期 |
|---|---|
| 徳島県立近代美術館 | 9月5日から10月12日まで |

『あけぼの村物語』 1953年 日本画廊蔵

『わたしと鳥と音楽と (1)木偶人形芝居』
1974年 徳島県立近代美術館蔵