2009年7月5日放送
桜田晴義さん(画家)
井出洋一郎さん(府中市美術館館長)
何気ない草むら、石だらけの尾根、風雪にさらされたブナの幹。そこにひそむ自然の息吹を、全身全霊で感じとって絵にしたい一心で、山に登り続けた画家がいる。犬塚勉(いぬづかつとむ1949-1988)。奥多摩に住み、小学校や中学校の美術教師をつとめながら、学校の美術準備室をアトリエに作品を描き続けた。去年、没後20年を機に何度か展覧会が開かれて以来、静かな話題を呼んでいる。
その特徴は、写真と見まごうほどのリアリズム。しかし、あまりにも精ちな筆づかいで表現された細部からは、写実を突き破らんばかりの思いが伝わってくる。犬塚は、厳しいランニングを日課にし、自然食に切り替え、身も心も鍛え抜いた飾り気のない人間になって、ようやく草や木が描けると考えていた。自然と一体となったときに初めて感じられる命をとらえようと、何十回も登山や沢登りを繰り返して自らを突きつめた。そして1988年9月。「水が描けない、もう一度水を見てくる」と言い残して谷川岳で遭難、帰らぬ人となった。38歳だった。
高度経済成長、バブルの時代に、「おれは、一本のブナの木であり、一つの石である」と記した犬塚が、自然に込めたものとは何だったのか。残された制作ノートや妻・陽子さんの話などを手がかりに、その思いに迫る。
「犬塚勉展」
| 会場 | 会期 |
|---|---|
| せせらぎの里美術館(東京・奥多摩町) |
8月30日まで |
| 東御市梅野記念絵画館(長野県) | 10月17日〜11月15日 |

『暗く深き渓谷の入口
』 1988年

『ブナの森から
』 1988年

『梅雨の晴れ間』 1986年

『縦走路』 1985年