2009年6月14日放送
舟越桂さん(彫刻家)
“近代彫刻の父”と呼ばれるオーギュスト・ロダン(1840-1917)。作品からは、圧倒的な生命力があふれだしている。それは一体どこからくるのか?最新の調査研究から秘密に迫る。
代表作「洗礼者ヨハネ」を解剖学の見地から計測、分析したところ、体の前でVの字に屈折している腕が異常に長く(のばすとヒザまである、人間ではありえない)、左足が右足より長く作られていたことが分かった。あえてデフォルメすることで、手や足が動いて見えるかのような表現を生み出していた。
さらに、ロダン作品「ガラテア」と、弟子で愛人だったカミーユ・クローデルの作品「束を背負った若い娘」を三次元デジタル映像化、徹底比較を試みた。ロダンがカミーユを真似たのではないかともいわれる二つである。全体のフォルムは、明らかにロダンがカミーユを写していたと考えられた。その一方で、足の表現は、ロダンにしか見られないものだった。弟子の作風をどん欲に取り込むことで、ロダンは大胆なエロスという新たな生命感に挑戦していた。
こうしたロダンの芸術は、30年以上にわたって作り続けられ未完成に終わった傑作「地獄の門」に結実する。そこには、苦悩の中で、いのちの力をふりしぼる人間の数々の姿がうごめいている。カミーユとの恋愛、裏切り。ロダン彫刻には、すべての経験を飲み込み、新たな創造を探求することだけを考えた執念が込められていることを、明らかにしていく。


『考える人』
(ロダン美術館)

『接吻』
(ロダン美術館)

『地獄の門』
(ロダン美術館)