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2008年5月25日放送

この人が語る私の愛する写真家
辺見庸 私とマリオ・ジャコメッリ

出演

辺見庸さん(作家)

作家の辺見庸さんが、イタリアの写真家マリオ・ジャコメッリ(1925~2000)について語る。
ジャコメッリは、イタリアの小さな地方都市で一生を送ったアマチュアカメラマンだが、世界的に高い評価を受けており、このほど東京で開かれた写真展も各界に大きな衝撃をあたえた。作品のほとんどすべてがモノクローム。白と黒のコントラストを極端に強調したり、ピンぼけや手ぶれを生かしたり、ときには写真を重ね合わせたり。そんな独特の手法でつくりあげられた幻想的な光景には、ジャコメッリの深遠な内面世界が映しだされている。
辺見庸さんは、何年も前、旅先でふと眼にしたジャコメッリの作品をずっと忘れられずにいた。黒い古風な衣装を着た人々と、一人の少年が写っているその作品は、まるで異界のようなまがまがしさを感じさせて、辺見さんの体の奥に刺青のように染みついたという。 異界を感じさせながらも実在感に満ちたジャコメッリの写真。そこには、自然や、働く人々を撮ったものにさえ、死の香りが漂うと辺見さんは言う。2004年、病に倒れ、一時は生死の境をさまよった辺見さんは、その経験もふまえ、「人はいずれ死すべきである」というのが、ジャコメッリ終生のテーマだったと考える。そして、こう問いかける。「資本で束縛された現代社会において、なぜジャコメッリはこれほど自由な表現者でいられたのか」と。
この春の展覧会において、日本で初めて本格的に紹介され大きな話題を呼んだジャコメッリ。その作品群と向き合いながら、辺見さんの静かに深まっていく思索の言葉にじっくりと耳を傾けた。

写真

「スカンノ」(1957-1959)
©Giacomelli estates


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