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2008年4月6日放送

神か女か
ウルビーノのヴィーナス

出演

養老孟司さん(解剖学者・東京大学名誉教授)

イタリア・ルネサンスのヌードの傑作『ウルビーノのヴィーナス』が日本で初公開されている。部屋の寝台の上にのびやかな体を横たえる、官能的なポーズ。肌の柔らかさや温かさまでもが感じられる、繊細な筆致。ヴェネツィアの巨匠・ティツィアーノ(1490ごろ~1576)の代表作である。しかし、近年、描かれているのは本当に女神なのかと問い直されている。もともとヴィーナスは、古代ギリシャ・ローマの愛と美の女神。当時、現実の女性の裸を表現するのはタブーとされていたため、「ミロのヴィーナス」をはじめ、芸術家たちは、女神のヌードを借りて、女性の肉体の美しさを追求した。ルネサンスの時代、ヴィーナスのヌードは、人々が理想とする美の象徴となった。ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」のように、自然の風景の中で繰り広げられる神話の場面に、神々や関連するモチーフに囲まれて描かれた。それが、『ウルビーノのヴィーナス』では、初めて現実的な部屋の中にヌードが表されている。しかも、絵の持ち主だったウルビーノ公は、手紙の中でこの作品を“裸の女”と記している。
ウルビーノのヴィーナスは、女神なのか、それとも現実の女性なのか? 絵画に込められたメッセージは何なのか? 1枚の名画に隠された謎を、最新の研究をもとに解き明かしていく。

関連展覧会

『ウルビーノのヴィーナス』

国立西洋美術館(東京・上野) 5月18日まで

写真

『ウルビーノのヴィーナス』
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
1538年 ウフィツィ美術館