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2008年3月2日放送

絶対唯一の表現者たち
アウトサイダーアートの世界

出演

田口ランディさん(作家)

今、世界的に注目を集めているアウトサイダーアートを特集する。
屋根のかわらの一枚一枚、線路のまくら木の一本一本、木の葉の一枚一枚までがち密に描かれた仮想の町の鳥観図。全身を1万本もの小さなトゲでびっしりと覆われている不思議な陶芸のいきもの。A4サイズの紙の全面を埋め尽くすのは、てん刻のように整った筆致で書かれた1ミリ四方にも満たない極微の漢字だ。どの作品も、思わず、「何だこれは?」「なぜここまで?」と見入ってしまわずにはいられない。作者は皆、正規の美術教育を受けたことがなく、知的障害や精神疾患などを抱える人びとだ。彼らの作品は、アウトサイダーアート、あるいはアール・ブリュット(生(なま)の芸術)と呼ばれる。その無垢な独創性や研ぎ澄まされた感性から、ヨーロッパでは、模倣とは無縁の「真の芸術」として注目されてきた。キーワードは、「孤独、秘密、沈黙」。誰にも知らせず、孤独のなか、自分で編み出した手法、自分が選んだ素材と題材で、密やかに作り続けられてきた。 既成の美意識、社会的評価に惑わされることなく、描きたいから描き、作りたいから作る。そこにあるのは、表現することへの人間の根源的な欲求である。知られざる新たな芸術“アウトサイダーアート”の深遠な世界に分け入る。