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2021年11月 7日

コラム 正倉院展のお帰りに奈良の伝統産業の品を

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毎年、正倉院展の時期になると老舗の麻布工房・岡井麻布商店で店頭に並ぶ、その年の正倉院展に出品される宝物がプリントされたふきん。

日曜美術館HPでは毎週の放送内容に関連した情報をお届けしています。
11/7は「よみがえる 天平の息づかい〜第73回 正倉院展〜」でした。
正倉院展を見た後、お帰りに奈良の何を見ていきますか?
皇室が守り伝えた至高の宝物を堪能した次は、奈良の街で人々が技術を受け継いできた生活工芸品に触れ、土産にするのはいかがでしょう。

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10月30日から正倉院展(第73回)が始まった奈良国立博物館。今年は25年ぶりに出陳される「螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんのげんかん)」などが並んだ。

たとえば、奈良の伝統的な“麻織物”。奈良は古くより麻布の産地として全国的に知られてきました。麻を手で績(う)み、手織りをした布を晒してつくる「奈良晒(ならさらし)」は近世において奈良の特産品として名をはせました。江戸時代は奈良晒の生産の最盛期で「奈良の町の者はほとんどが奈良晒の仕事をしている」と言われたほど。その優れた品質から「麻の最上は南都にあり」とうたわれ、幕府が「南都改」という朱印を押してお墨付きを与えていました。

明治以降、最大の需要源であった武士の衰退、木綿の増産、第二次大戦後に大麻の栽培が規制されるようになったことなども関係して、奈良晒の生産は衰退していきました。けれども織物の技術は受け継がれ、今日、奈良の土産物屋で並ぶ“かや織”ふきんに活かされています。

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岡井麻布商店にて、正倉院宝物「浅紅地花葉文夾纈薄絹」の文様をアレンジして手織りの麻生地に型染めした巾着。

文久3年(1863年)創業、奈良晒の織元から出発して、今も手績み・手織りの麻布などを工房で生産している「岡井麻布商店」。こちらは正倉院展の時期になると正倉院の宝物をモチーフにしたかや織のふきんを並べます。毎年毎年、その年に出陳される正倉院展の宝物がプリントされたふきんが出るのが特徴です。 

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創業300年以上の歴史を持つ中川政七商店。カウンターの背面には奈良晒の技術を活かした手績み手織り麻が並ぶ。

「奈良晒」を取り扱ってきた中でも、ひときわ古い歴史を持つ企業といえば享保元年(1716年)創業の「中川政七商店」。今年4月に創業の地である奈良市元林院町(がんりいんちょう)にて新たな発信拠点をつくりましたが、多目的な施設で週末には「手績み手織り麻」の技術体験もすることができます。講師のレクチャーを受けながら大正時代の織機や道具に触れ、ものづくりを体験できる貴重な機会です。講師のレクチャーを受けながら大正時代の織り機や道具に触れ、ものづくりを体験できる貴重な機会です。実際に織り機を踏んで生地を織ったり、手績み(※)を体験させてもらうことができます(要事前予約)。もちろん、中川政七商店でも奈良晒の技術を現代に活かしたバッグや茶巾などが店先に並んでいます。

※手績み……麻皮を手で細く裂いて、より合わせて糸にしていく作業。

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中川政七商店の新拠点にて。長年「奈良晒」の麻布を保管する倉庫として使われてきた蔵で、機織り体験ができる。

悠久の美を奈良国立博物館の正倉院展で。そして帰りに、奈良のまちで引き継がれてきた地場の工芸にもぜひ触れてみてください。

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茶飯、柿の葉寿司、奈良漬など、これらも奈良ならではの味わい、美。