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2017年12月 3日 / 旅の紹介 第59回 静岡へ ロダンを満喫する旅

12月3日放送「熱烈ダンギ!傑作ロダン」でも登場した静岡県立美術館は、ロダンを見たくなったらぜひ出かけていただきたい美術館です。今回の「出かけよう、日美旅」は静岡を旅しました。

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静岡県立美術館・ロダン館にて。「ロダン館デッサン会」が行われていた。

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日本国内でロダンを満喫できる場所として、静岡県立美術館のロダン館は格別です。「地獄の門」「考える人」「カレーの市民」といった代表作をはじめ32点のロダン作品を常時見ることができます。また「カレーの市民」は台座の上に6人がひと固まりで置かれているタイプではなく、1人1人がバラバラに、台座なしで地面から直接立っています。もともとロダンがのぞんだ設置の仕方がこの形だったと言われています。 

静岡県立美術館

そもそも静岡県立美術館にロダン館ができたきっかけは1989年に「カレーの市民」を購入したことでした。除幕式にはパリから国立ロダン美術館の当時の館長も列席しました。

また、その場には地元の特別支援学校に通う視覚障害の子どもたちも招かれました。もともと静岡県は「単なる展示に終わらず教育普及的なプログラムに力を注ぎたい」という意向を持っていて、その一環として目の不自由な子どもたちに「手で」触れて鑑賞してもらうという試みを行ったのでした。そのことに国立ロダン美術館館長が深い感銘を受け、友好関係がいっそう深まる中で静岡県立美術館はロダン作品の充実を図ることとなりました。そして1994年、ロダン館がオープンしたのです。

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天井からたっぷりの採光、室内なのに街を散策しているような気分にさせてくれる。

現在も教育普及プログラムへの取り組みには積極的で、訪れた日も定期的に開催している「ロダン館デッサン会」がちょうど行われていました。月に1回程度開催していますが、好評で毎回25~30名程度の参加があるそうです。東京や大阪など他県からはるばる参加される人もいるとか。

ロダン館に足を踏み入れると、空間全体が天井から差し込む柔らかな光に包まれているのを感じることができます。いくつもの小さな展示スペースが階段でゆるやかにつながり、またその間に段差もつけてあるので、ロダンの彫像とそれを見て歩く鑑賞者たちが、あたかもひとつの街のいろんな場所にたたずんでいる。離れて見ると、そんな街の風景のように見えてきます。
その中には考えている人や苦悩している人がいて、その横でデッサンをしている人がいて――、彫刻の人と実際の人とが同じ次元で存在しているみたいです。
「カレーの市民」もまさしくそこに生きているかのようです。

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デッサンする人に向かってポーズを取っているかのようにも見える「カレーの市民」のブロンズ像6体。

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あちこちでロダンをデッサン。この場所が絵画学校みたいに思えてくる。

また、目の不自由な人向けに「タッチツアー」のプログラムも継続的に行われています。あらかじめ申し込めば、研修を受けたボランティアがガイドする中、参加者たちは彫刻たちを手で触って鑑賞することが可能です。館内32点の彫刻の中から「全身を触れるもの」「安全に触ってもらえるもの」の視点で選ばれた13点の彫刻を体験することができます。

また段差を生かした設計のロダン館は、空間を移動する中で、いろんな高さや角度から彫刻を体験できる点も魅力なのですが、階段のみならずスロープでも自然につなげられているため、車椅子の人も同じように体験することが可能です。

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スロープの導線設計がしっかりされているので、車椅子の人も自由に散策することができる。

もうひとつ良いのはロダン館内はフラッシュをたかなければどこでも写真撮影ができる点です。
試しに「地獄の門」に肉薄して接写してみました。この作品は1880年、ロダンが40歳のときに国から依頼されたことがきっかけで制作開始されたのですが、あまりの思い入れの深さゆえに、結局1917年に77歳で亡くなるまで、ついに完成されることはありませんでした。それだけにディテールの作り込みがものすごく、いろんな人のいろんな表情やポーズが方々に隠れています。肉眼で一度見ただけではとても捉えきれないでしょうが、写真撮影すると「こんな人もいたの?」とか「こんな場面があるのか」といった新鮮な発見がいくつもできるのではないでしょうか。

室内に降り注ぐ光の心地よさもあるでしょうが、なんだかずっと居たくなる空間です。デッサン会のリピーターになる人がいるのもわかる気がしました。ぜひ、ここで過ごす時間自体を楽しんでいただけたらと思います。

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「地獄の門」をググッと接写。 

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さらに寄ってみる。それまで気づかなかった場面が見えてくる。

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もっと接写。表情とポーズひとつひとつが面白い。

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考える人にも寄ってみる。改めてロダン彫刻の迫力を体感。

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企画展示室では、ロダン没後100年に寄せて「彫刻を撮る:ロダン、ブランクーシの彫刻写真」展も開催中(12月17日まで)。

彫刻プロムナード

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丘の上にある美術館なので、外に出ると空が広い。エントランス前には、風で動くジョージ・リッキーの彫刻が設置されている。

静岡県立美術館は企画展示室も広いので、館内だけでも長い時間楽しむことができますが、エントランスを出ると気持ちのよい自然も広がっています。

公共交通で向かう方は行きか帰りのどちらかだけでも、「県立美術館」バス停ではなく、その1つ隣りの「プロムナード」バス停まで歩くことをおすすめします。この時期、赤黄色に染まった落ち葉に埋もれるようにして彫刻が続く遊歩道が大変気持ち良いからです。舟越保武や、静岡出身の掛井五郎などの12の彫刻が自然の中に溶け込んでいます。

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美術館がある丘から降りていく途中の遊歩道沿いに12の彫刻が。「彫刻のプロムナード」。

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こちらは静岡出身の美術家、掛井五郎の彫刻。

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下りた先には、広大な芝生広場が。ゴロンと寝転がるのも気持ちよさそう。向こうに見えるのは静岡県立大学。

日本平(富士山眺望スポット)

プロムナードを下りきると広大な芝生公園があるので、もう少し早い季節なら ここでお弁当か、おやつ(安倍川餅と静岡茶?)を楽しむのも良いかもしれません。その隣に静岡県立大学がありますが、その辺りからは東に向かって富士山もきれいに見えるスポットがあるそうです。

また、美術館に向かう車道の脇から「日本平ハイキングコース」へ入れるようになっています。ここから2時間程度歩いて山を登れば、日本平の山頂まで行けるようです。トレッキングシューズを履いて、山登りとロダンを両方楽しむというのもありかもしれません!?

今回は時間の関係もあり、車で日本平へ向かいました。清水港へと向かう日本平の斜面にはずっと茶畑が続いており、富士山と清水港と茶畑を入れた構図での写真を撮ることができます。ちなみに4月末から10月いっぱいまでは茶畑で一般の人でも茶摘みに参加できるそうです。

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日本平から清水港方面に下りる途中、雲がかかっていない、きれいな富士山を撮影。

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静岡茶をいただきながら、安倍川餅を楽しむ。 

芹沢銈介美術館

せっかくの静岡なので、ちょっと寄り道しましょう。静岡駅から車で10分、登呂遺跡に隣接している静岡市立芹沢銈介美術館へ。「型絵染」で日本の民藝運動をけん引した故・芹沢銈介(せりざわけいすけ)の作品と収集品を楽しむことができる専門美術館です。

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柳宗悦などと共に民藝運動の代表的存在だった染色家・芹沢銈介の美術館。

静岡市の出身である芹沢銈介が、晩年に600点のみずからの作品と、4500点に及ぶ収集品を市に寄贈したことからできました。ロダンが好きな人に静岡県立美術館は外せないように、芹沢銈介が好きな方も一度は来たい場所でしょう。取材したときには「のれん」の企画展が行われていましたが、12月からは、芹沢銈介が収集した世界の工芸品300点がまとめて展示される貴重な展覧会が開催される予定です。

日曜・祝日であれば、美術館のすぐ近くにある「芹沢銈介の家」も公開されており(東京・蒲田から移築)、室内に置かれた民芸品のコレクションと共に、生活の中の美意識を肌で感じることができます。 

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訪れた日は「のれん-芹沢銈介の原点-」展が開催中だった。(11月26日で終了)

ワークショップなども開催しているので、静岡県立美術館と合わせて、体験プログラムを旅の楽しみにするのも良いかもしれません。

ロダンをきっかけに静岡を訪れ、豊かな美の時間を満喫してください。秋冬は空気も澄んで富士山もひときわ綺麗です!

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「芹沢銈介の家」。日・祝に見学が可能。

インフォメーション

◎静岡県立美術館では、ロダン没後100年に寄せて「彫刻を撮る:ロダン、ブランクーシの彫刻写真」展が開催中です。12月17日まで。

◎静岡県立美術館ではさまざまな教育普及活動を行っています。「ロダン館デッサン会」「タッチツアー 〜彫刻を触って鑑賞するプログラム〜 (※視覚に障害のある方向け)」など。詳しくは美術館までお尋ねください。

静岡県立美術館
住所 静岡市駿河区谷田53-2 
開館時間 午前10時〜午後5時30分(入室は午後5時まで)
休館 月曜(祝日・振替休日の場合は開館し、翌日休館)
アクセス JR東海道線「草薙」駅から徒歩約25分またはバス約6分「県立美術館」バス停下車/静岡鉄道「県立美術館前」駅南口から徒歩15分またはバス約3分「県立美術館」バス停下車すぐ。

◎静岡市立芹沢銈介美術館では「芹沢銈介美の収集 —手仕事の世界地図—」が12月12日から2018年3月18日まで開催。期間中「芹沢さん家お二階拝見」など特別イベントも行われます。要予約(限定)、先着順。

静岡市立芹沢銈介美術館
住所 静岡市駿河区登呂5-10-5
開館時間 午前9時〜午後4時30分 
休館 月曜(祝日の場合は開館し、翌日休館)
アクセス JR「静岡」駅南口バスのりばから「登呂遺跡」行きバスに乗車、終点「登呂遺跡」にて下車、徒歩約4分。