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2017年10月22日 / 旅の紹介 第55回 特別展覧会「国宝」と京都国宝散策の旅

京都国立博物館では、特別展覧会「国宝」が開催中(11月26日まで)。今回の「出かけよう、日美旅」は、こちらの展覧会と組み合わせて京都で楽しむ国宝が見られるスポットを巡る旅にご案内します。

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国宝「雲中供養菩薩像」などが鑑賞できる宇治市・平等院内の平等院ミュージアム鳳翔館。 写真提供=平等院

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まずは特別展覧会「国宝」へ

2017年10月1日時点での国宝に指定されている美術工芸品の数は885件ですが、そのおよそ4分の1に相当する210件がこのたびの京都国立博物館 開館120周年記念 特別展覧会「国宝」で鑑賞できるとあって多くの来館者でにぎわっています。美術の教科書などで見たことのある美術工芸品の本物と出会える希少なチャンスです。

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会場となっている京都国立博物館平成知新館。ニューヨーク近代美術館新館なども手掛けた建築家・谷口吉生が設計した。

最初にお伝えしておきたいのは、10月3日から11月26日まで、8週間にわたる展覧会ではありますが、会期中いつも同じ作品に出会えるわけではないという点です。展示期間は大きくI〜IV期の4期に分かれており、それぞれで見られる作品が異なっています。期をまたいで見られるものもありますが、1期の間だけしか見られないという作品も少なくありません。

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国宝展展示風景より。I・II期の目玉は、雪舟。画面左に見える「四季山水図巻(山水長巻)毛利博物館蔵」はII期終了をまたず10/22までの展示なので、ご覧になりたい方はお急ぎを。

例えば、II期(I期は既に終了)でしか見られない作品には「阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)知恩院蔵」「六道絵 聖衆来迎寺蔵」「風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 建仁寺蔵」「曜変天目 龍光院蔵」「楓図壁貼付 長谷川等伯筆 智積院蔵」、そして何と言っても雪舟作の水墨画があります。

雪舟は本展の前期の目玉とも言え、番組でも紹介した「慧可断臂図(えかだんぴず) 斉年寺蔵」をはじめ、「秋冬山水図 東京国立博物館蔵」「天橋立図 京都国立博物館蔵」「四季山水図巻(山水長巻) 毛利博物館蔵」「破墨山水図 東京国立博物館蔵」などが一堂に会します。
 
※II期は10月17日〜10月29日ですが、作品の中にはそれより早く展示終了になるものもあります。雪舟の「四季山水図巻」「破墨山水図」「山水図」や「楓図壁貼付 長谷川等伯筆」など。あらかじめご確認ください。

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右「不動明王坐像 行快作」中央「大日如来坐像」。共に金剛寺蔵。

もちろん、III・IV期にも名品が目白押しです。「不動明王像(黄不動) 曼殊院蔵」「雪松図屏風 円山応挙筆 三井記念美術館蔵」「油滴天目 大阪市立東洋陶磁美術館蔵」(以上III〜IV期)、「観音猿鶴図 牧谿筆 大徳寺蔵」(III期)、「燕子花図屏風 尾形光琳筆 根津美術館蔵」(IV期)、「源氏物語絵巻 徳川美術館蔵」(III期とIV期で場面が変わります)など。

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京都国立博物館明治古都館はその建物自体が国の重要文化財。迎賓館なども手がけた片山東熊の設計。

なお京都国立博物館及び国宝展公式ウェブサイトから「出品一覧・展示替予定表」がダウンロードできますので、訪問前に予め展示中の作品を確認してください。

京都国立博物館の周りの国宝散策〜智積院

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東大路通を渡ったお隣り、智積院は国宝展に出展されている障壁画、長谷川等伯「楓図」長谷川久蔵「桜図」の所蔵元。

国宝は大別すると美術工芸品と建造物に分かれますが、都道府県別に見た場合、美術工芸品と建造物を合わせた総数でもっとも国宝が多いのは東京都で280件。ついで京都府233件。3位が奈良県で202件。しかし建造物だけで見ると奈良県が1位で64件、京都府が2位で51件、第3位は滋賀県22件と、かたや東京都はわずか2件と、圧倒的に関西に多いことがわかります。(いずれも2017年10月1日時点データに基づく)。

京都府は建造物、美術工芸品共に国宝が多いわけですが、実際、京都国立博物館の近所にもたくさんの国宝があります。まず博物館の向かい側にある三十三間堂は本堂と、堂内に安置されている千手観音坐像が国宝です。観音坐像はお寺が鎌倉時代に再建された際、運慶の息子の湛慶の手によってつくられたと言われています。また三十三間堂と言えば1000体の観音立像も有名、こちらは重要文化財。

同じく博物館から歩いてすぐのところにある、豊国神社。豊臣秀吉を祭る神社ですが、こちらの唐門も国宝。西本願寺、豊国神社、大徳寺の唐門は、国宝三唐門と呼ばれています。

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智積院の境内。長谷川等伯の国宝障壁画は奥に見える金堂の向かって左手前にある収蔵庫で保管・展示されている。 

そしてもう一件、やはり歩いて数分の距離に智積院(ちしゃくいん)があります。こちらは今回の国宝展にも出展されている長谷川等伯の障壁画が拝観できるお寺です。お寺が所蔵している長谷川等伯の「楓図」「松に秋草図」「松に黄蜀葵(とろろあおい)図」、息子の久蔵による「桜図」、いずれも国宝です。10月22日までは国宝展に「楓図」が出展中、楓図がお寺に戻ってきたら入れ違いに、「桜図」が国宝展に出展されますが、それ以外は通常通り拝観できます。

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智積院・金堂。

一連の国宝障壁画は智積院の敷地内にある収蔵庫にて見ることができます。手前に低い柵は設けてありますがガラスケース越しなどではなく、間近に見て堪能することができます。

さらに、10月2日から11月13日まで、普段は公開していない寺宝、長谷川等伯の最晩年の作品「十六羅漢図屏風」が特別展示中です。

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政権が徳川に移ってのち、智積院を再興した玄宥(げんゆう)僧正の像。

なお、智積院が今ある場所は、桃山時代には秀吉が3歳で早世した息子・棄丸(すてまる)の菩提を弔う目的で建立した祥雲禅寺(しょううんぜんじ)という別のお寺でした。もともと長谷川等伯一門の障壁画も秀吉の命で祥雲禅寺に描かれたものでした。政権が徳川になって、祥雲禅寺の建物が徳川から与えられ、秀吉による圧力から長く不遇を囲っていた智積院がこの地で再興することになりました。障壁画も智積院に引き継がれました。

その後智積院は度重なる火災にあっており、そのたびに障壁画は切り取られて外に運び出されたとのこと。そのせいで桜図や楓図もオリジナルよりも小さくなったと言われています。

さらに足を伸ばす〜宇治・平等院鳳凰堂

一日のコースとしてみれば国宝展とその近所の散策だけで十分満足ではありますが、参考まで少し足を伸ばしたプランもご紹介しておきます。 

京都で国宝建造物と言えば北野天満宮、清水寺、西本願寺、東福寺、南禅寺、銀閣寺、二条城、伏見稲荷大社……、枚挙にいとまがありません。 

中でも、すぐに思いつくのは10円玉の絵柄に描かれていることでもおなじみ、平等院鳳凰堂ではないでしょうか。というわけで、宇治市まで足を伸ばしてみました。京都駅からJRの快速で17分、そこから徒歩10分です。

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国宝建築・平等院鳳凰堂。2012年から2年かけて平成の大改修が行われ、創建当時に近い色に戻った。

表参道から平等院の境内に入るとすぐに鳳凰堂が見えてきますが、池の中島に建てられている様子はどこか夢かうつつかというような幻想的な景色を持っています。

学芸員の方に聞きましたが、鳳凰が翼を広げたようなイメージを表す、「翼廊」と呼ばれる左右に伸びた回廊は、実は真ん中の中堂とつながっていないそうです。また、翼廊内は人が立てるほどの高さもない。また隅楼と呼ばれる翼廊の先の楼閣には昇降用の階段もなく、それどころか床板もありません。中堂も参観するためのゆとりを持ったつくりというより、「阿弥陀如来専用のお家」とでも言うべきコンパクトなサイズです。実は訪れるのは今回が初めてだったのですが、想像していたのよりも全体的に少しこじんまりとしている印象を受けました。
あくまで池の向こうに見えたときに、どこかこの世のものではないような存在感に映ることを優先してデザインや大きさも考えられたのではないでしょうか。

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中堂。中央に鎮座する阿弥陀如来坐像が見える。 写真提供=平等院

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中堂内の阿弥陀如来坐像。その周りには雲中供養菩薩像が舞っているがごとくに壁に貼り付けられている。 写真提供=平等院

鳳凰堂の内部拝観は1回50名ずつ、20分間隔で入場する方式で行われています。
中堂内に安置されている阿弥陀如来坐像は平安時代の仏師・定朝(じょうちょう)による寄木造りの仏像。その神々しさに見ほれますが、同時に、天蓋の細かな細工の美しさも強く印象に残りました。

なお阿弥陀如来の周りを取り囲むようにして堂内の壁に「雲中供養菩薩像」が飾られています。これらも国宝ですが全体の内26体はレプリカに変えられており、実物は敷地内にある平等院ミュージアム鳳翔館で保存・展示がされています。

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平等院ミュージアム鳳翔館に展示されている雲中供養菩薩像。間近で見られるのが楽しい。 写真提供=平等院

お堂の中だと距離が遠いことや明るさの関係で彫刻のディテールが見えにくいのですが、ミュージアムだと一体一体、楽器を演奏していたり、踊っていたり歌っていたり、その豊かなポーズや表情をじっくり見ることができます。
なお、現在3体は京都国立博物館の国宝展に展示中です。

他にも京都駅から見える五重塔でおなじみ、東寺などもおすすめです。五重塔などの建造物に加え、講堂の仏像群全21体のうち16体も国宝。

もちろん京都以外でも、各都道府県で見に訪れたい魅惑の国宝は多くあります。みなさんもぜひ国宝散策、いろいろ楽しんでみてください。 

展覧会情報

現在、京都国立博物館・平成知新館では、京都国立博物館 開館120周年記念 特別展覧会「国宝」が開催中です。(11月26日まで)
I期/10月3日~10月15日(既に終了)、II期/10月17日~10月29日、III期/10月31日~11月12日、IV期/11月14日~11月26日
※ 一部の作品については、上記の期間以外で展示替えを行います。

インフォメーション

◎京都国立博物館
京都府京都市東山区茶屋町527
京都駅より市バス100号系統、206・208号系統で「博物館・三十三間堂前」下車すぐ
開館時間(「国宝」展期間中)/火~木・日 午前9時30分~午後6時、金・土 午前9時30分~午後8時(入館は閉館の30分前まで)
※11月26日以降の開館時間についてはウェブサイト等にてご確認ください。

◎智積院
京都府京都市東山区東大路通り七条下る 東瓦町964番地
京都駅より市バス100号系統、206・208号系統で「東山七条」下車、徒歩3分
(京都国立博物館より徒歩5分)
拝観時間 午前9時~午後4時

◎平等院
京都府宇治市宇治蓮華116
京都駅よりJR奈良線「宇治駅」下車、徒歩10分
または京阪電鉄宇治線「宇治駅」下車、徒歩10分
拝観時間/庭園:午前8時30分〜午後5時30分(午後5時15分受付終了)
平等院ミュージアム鳳翔館:午前9時〜午後5時(午後4時45分受付終了)
鳳凰堂内部:午前9時30分〜午後4時30分(受付は午前9時10分~午後4時10分)
午前9:30より拝観開始、以後20分毎に1回50名定員
※内部拝観希望者が多数の場合は最終受付以前に終了する場合もございます。