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2017年6月11日 / 旅の紹介 第45回 奈良 天平時代・美仏の都へ 

「出かけよう、日美旅」スペシャル、今回は番組とブログが全面連動してお送りします。
ブログスタッフもロケに同行し、各スポットでの収録を終えたばかりのMCおふたりを直撃。興奮冷めやらぬ現場の熱も含め、改めてその魅力をお伝えします!
※なお、本文中に登場する仏像はいずれも通常は撮影不可です。特別に許可を得て撮影させていただきました。

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興福寺仮講堂にて開催中の「国宝特別公開2017 阿修羅-天平乾漆群像展」の様子。 

興福寺 阿修羅像ほか天平乾漆群像

井浦 新のコメント「今回のゲスト、仏像技法研究家の山崎隆之さんからお聞きした説に感動しました。お釈迦様(注1)が発する説法の声と、壇上中央に置かれた金鼓(注2)の打ち鳴らされる音を、ここにいる全員が『聴いている』状況なのではないか、という……。それを頭に置きながら対峙すると、阿修羅(あしゅら)も迦楼羅(かるら)ももうそのような様子にしか見えない。普段の宝物館での展示と比べても、今回の展示はより本来の宗教空間に近づけた配置になっているからこそ体感できることでもあるでしょう(注3)」 

注1 今回の特別展では仮講堂の本尊は阿弥陀如来だが、八部衆などが元々安置されていた西金堂の本尊は釈迦如来。
注2 金鼓(こんく)…仏堂で架に取り付けて打ち鳴らす銅製のカネ。写真は華原磬(かげんけい)〈国宝〉。
注3 正しくは阿修羅、迦楼羅など八部衆は後方、金剛力士が前方である。八部衆像を拝観しやすくするために、あえて位置を逆転させ展示している。

高橋アナウンサーのコメント「“音”という要素を示されたことで、お堂で仏様を拝んでいる私たちもまた耳をそばだてている心持ちになり、『一体感』を味わうことができました。この場所の一員となるからこそ感じられる特別な体験でした」 
※高橋アナウンサーの「高」は正しくははしご高。以下同様

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展示されている仏像群のうち、八部衆8体と現存する十大弟子のうちの6体は興福寺創建当時のもの。

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向かって右手には、八部衆のうち、沙羯羅(さから)、畢婆迦羅(ひばから)、乾闥婆(けんだっぱ)などが見える。

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興福寺仮講堂。かたわらでは、鹿たちがくつろいでいた。

聖林寺 十一面観音菩薩立像

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静けさに包まれた山寺・聖林寺。国宝・十一面観音菩薩(ぼさつ)立像が拝観できる。

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2メートルを超す十一面観音像。光背も入れると4メートル近くに。

井浦「『量感』がすごい! 長身ですらりとしていますが、横や斜めから見ると胸板の厚みなどがよくわかります。でも、それでいて細部もものすごく繊細。天平の仏像の中でも技術的な頂にあることがよくわかります」 

なお番組中では、この十一面観音像はかつて三輪山を拝する大神神社(おおみわじんじゃ)の神宮寺(付属寺院)「大御輪寺(だいごりんじ)」の本尊だったこと、明治はじめの「神仏分離」がきっかけで聖林寺に移されたことが紹介されましたが、なぜ聖林寺に預けられたかと言えば大御輪寺と聖林寺の住職が兄弟弟子関係だったから。そのとき十一面観音の脇侍・地蔵菩薩も一緒に預けられたのですが、こちらは現在法隆寺の大宝蔵院にあります。

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光背(こうはい)は失われたが、残欠を元に解析した研究者が、西陣織で正確に再現。今回特別に掛けてもらった。

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十一面観音立像をいつまでも眺める井浦さんと高橋さん。

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聖林寺の境内からの眺め。晴れているとはるか若草山まで見渡せるとのこと。

入江泰吉記念奈良市写真美術館

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設計は建築家・黒川紀章氏。

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美術館では8万点に上る故・入江泰吉のフィルムを所蔵・保管。プリントを定期的に掛け替え展示している。

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入江泰吉さんの代表的な写真集のひとつ『古色大和路』の写真が展示中。

井浦「今日一日奈良を旅してきたからこそ、その後に入江泰吉さんの写真と相対すると、奈良の美しさの本質とは何かがまた少しわかる気がします。そして入江さんの写真に切り取られた奈良は、どれも『柔らかい』。心にもすっと入ってくるような、誰のイメージの中にもある大和路や仏像の姿にここへ来ると出会える。しかしまた、それを撮るためにどれだけの時間が掛けられているのかという重みも感じます」

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入江泰吉は特に阿修羅像を気に入り、幾度となく撮影した。

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写真集『大和路』。

若草山 “この地だから生まれた美”を振り返る

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若草山の山頂より、奈良の街を一望。

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かすみがかかっているのがかえって奈良の古色な趣きに合っていた。

井浦「飛鳥時代に海外から入ってきて始まった日本の仏像づくりが、日本人独自の技術や感性でひとつの頂点に達した。目の前に1300年以上も昔の、天平時代の仏像がこうして立っていて、僕たちが出会えるのがどれだけ奇跡的なことなのか、映像や資料ではなく実際にここへ足を運んで対面することで伝わってきました」

高橋「いつも目の前のこと、“今”に追われていますが、奈良に来ると安らげるのは、ここにはもっと大きな時の流れがあるから。そして自分たちもその流れとつながっているという気持ちになれるからなのかもしれません」

東大寺 法華堂 不空羂索観音など

さて、ここからはブログ独自の取材による、その他の天平の美仏たちの紹介コーナーです。

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東大寺法華堂。ここは不空羂索観音はじめ、天平時代の見事な仏像が立ち並ぶ。

東大寺の中で最も古い歴史を持つのが大仏殿の東側の丘陵、「上院地区」です。そして上院地区の中にある法華堂が東大寺のお堂の中で一番古い建造物です。

そんな法華堂の内部は、天平時代の美の殿堂。
中でも、不空羂索(ふくうけんさく)観音立像(脱活乾漆像)は格別の美しさ。不空羂索観音立像の背後にある厨子(ずし)に収められている執金剛神立像は、この場所にあるけれど普段見られない秘仏。毎年12月16日にだけ拝観できます。 

東大寺戒壇堂 四天王像

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東大寺戒壇堂にある四天王像。こちらは持国天。

大仏殿の西にある戒壇堂。こちらでも天平美術の傑作が見られます。四天王像(塑像)です。四天王や十二神将像などは、動的で強弱に富む分、彫刻表現としてもとても豊じょうです。周囲からさまざまな角度で顔やポーズを眺めたくなります。

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仏教世界の四方を守護する存在。東西南北に、持国天、広目天、増長天、多聞天と配されている。写真は増長天。

東大寺ミュージアム 伝日光菩薩立像・伝月光菩薩立像など

2011年に開設された東大寺ミュージアムに並ぶ東大寺の寺宝。こちらで観られる天平時代の仏像には伝日光菩薩立像・伝月光菩薩立像、吉祥天立像、弁財天立像があります(いずれも塑像)。この4体、元は法華堂に置かれていたもの。

柔らかなカーブを描く天衣、複雑な笑みを浮かべた表情。伝日光菩薩立像・伝月光菩薩立像も天平時代を代表する美。ただ、日光・月光は薬師如来の脇侍ですが東大寺に薬師如来は創建この方ないとのことです。それなのになぜ日光月光があるのか? もともと別の菩薩の名を冠して不空羂索観音の脇にあったという説や、別のお寺から東大寺に移されたのではとする説などがあります。

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伝日光菩薩立像、伝月光菩薩立像。その間には三昧堂に安置されていた千手観音立像。こちらは平安初期の木造仏像。

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2011年にオープンした「東大寺ミュージアム」。南大門をくぐってすぐ左手にある。

新薬師寺 十二神将立像

「入江泰吉記念奈良市写真美術館」のすぐ横にある新薬師寺。747年、聖武天皇の疾病平癒を祈り光明皇后により創建されたお寺と言われています。もともとは巨大な境内でしたが、平安時代の天災によって主要なお堂が失われました。現在の本堂だけが奇跡的に残り、そちらに薬師如来とその守護である十二神将像が安置されています。

薬師如来は平安時代の作ですが、十二神将は、天平時代の仏像(塑像)で、日本に現存する十二神将像としては最も古いものです。   

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新薬師寺の十二神将立像。中央の薬師如来を囲むかたちで守護している。

12体それぞれが唯一無二の、ユニークなお顔とポーズをしていて見飽きません。眼の部分にはガラス球がはめられていて、それも生き生きとした表情を生み出している理由のひとつとなっています。 

また別室では、制作当初の十二神将像の彩色を再現したDVDを流しています。たとえば十二神将の中でも最も有名な伐折羅(ばざら)大将は、頭髪は真っ赤、顔や手は真っ青、衣服も赤青緑と、極彩色の装いで登場します。12体すべての彩色を再現した映像で、全員並ぶとさながらファッション・コレクションかと思う華やかさです。
経年によって色がはげ、塑像の地の白一色に見える現在の姿からすると驚きです。もっとも、よく見ると今でも部分的にはうっすら色が残っているのがわかるそうです。

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十二神将立像の中でも特に人気の高い伐折羅(ばざら)大将。最近まで500円普通切手の絵柄だった。

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十二神将の容姿とは対照的な、柔和な表情を浮かべる薬師如来坐像。

奈良で拝観できる天平時代の仏像には、他にも薬師寺の聖観音(しょうかんのん)立像や日光・月光菩薩立像、唐招提寺の盧舎那仏(るしゃなぶつ)坐像や十一面千手観音立像などがあります。また、今回東大寺は法華堂や戒壇堂の仏像を取り上げましたが、言うまでもなく大仏殿の盧遮那仏坐像も天平時代の代表的な仏像です。
どの仏像も見応え充分。天平の美仏巡りの旅、あなたもいかがでしょうか?  

住所や拝観情報

◎興福寺
奈良県奈良市登大路町48
近鉄奈良駅から徒歩5分、または奈良交通バス「県庁前」下車すぐ
拝観時間 午前9時〜午後5時 
仮講堂で開催中の「興福寺国宝特別公開2017 阿修羅 -天平乾漆群像展-」は前期6月18日まで。後期9月15日〜11月19日。

◎聖林寺
奈良県桜井市下692
近鉄・JR桜井駅から奈良交通・桜井市コミュニティバス「聖林寺前」下車すぐ
拝観時間 午前9時〜午後4時半 

◎入江泰吉記念奈良市写真美術館
奈良県奈良市高畑町600-1
JR奈良駅・近鉄奈良駅から市内循環バス「破石町(わりいしちょう)」下車徒歩10分、新薬師寺西側
開館時間 午前9時半〜午後5時(入館は閉館30分前まで) 休館日 月曜日(祝日を除く)、祝日の翌日
「入江泰吉『古色大和路』展」が7月17日まで開催中です。

◎東大寺
奈良県奈良市雑司町406-1
JR大和路線・近鉄奈良線「奈良駅」から市内循環バス「大仏殿春日大社前」下車徒歩5分、または近鉄奈良駅から徒歩約20分
拝観時間 (大仏殿、法華堂、戒壇堂)季節によって異なる(9月までは午前7時半〜午後5時半) 

◎東大寺ミュージアム
奈良県奈良市水門町100
市内循環バス「大仏殿春日大社前」下車徒歩5分
開館時間 午前9時半から大仏殿閉門時間まで(入館は30分前まで) 休館日 なし

◎新薬師寺
奈良県奈良市高畑町1352
JR奈良駅・近鉄奈良駅から市内循環バス「破石町」下車徒歩10分
拝観時間 午前9時〜午後5時

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